jugement:グヌーテラ利用者の発信者情報開示請求認容
グヌーテラというP2Pファイル共有ソフトにより著作権侵害行為をした者について、レコード会社等がアクセスプロバイダであるNTTコミュニケーションズに対して、発信者情報の開示を求めた事例である。
事実関係は多少は面白い。
原告はワーナーミュージックジャパンほかの全8社で、被告はNTTコミュニケーションズ、使われたP2Pファイル共有ソフトは昔からあるグヌーテラであり、懐かしい響きすら感じる。
送信可能化権侵害が発見されたのは、株式会社クロスワープが提供するP2Pファインダーというサービスで、まずは浜崎あゆみなどの実演家の名前で検索し、P2Pファイル交換ソフト網にアップロードされている音楽データをダウンロードし、その発信元のIPアドレス等を抑える。
このiPアドレスが正しいかどうかは、ダミーの試験ファイルをグヌーテラにアップし、その保有元のIPアドレスを調査して正確性を確かめる方法によった。
その上で、発信者情報開示請求権があるかどうかが争われたのだが、被告側は発信者情報開示請求権の各要件のうち自分が開示関係役務提供者であることのみ認め、その他は「否認ないし争う」というのみの答弁をしている。少なくとも事実摘示に否認の理由は書かれていない。否認と争うがどう違うのかは謎だが、ともかく争ったということでしかない。
争われれば、仕方なく事実認定をして判決を書くということで、本判決が書かれた。
もういい加減、請求を認諾してもよさそうなものだし、和解に応じてもよさそうなものだと思うが、訴訟で抵抗しないと通信の秘密侵害に当たるぞという総務省の逐条解説の恫喝がなお有効なのかもしれない。
そういうわけで、特に争点らしい争点はないのに、認容判決となった。
奇妙なのは、訴訟費用の定めである。全面的原告勝訴判決なのだが、なぜか、以下のように定められている。
訴訟費用は,原告株式会社EMIミュージック・ジャパンに生じた費用の5分の2と被告に生じた費用の25分の2を原告株式会社EMIミュージック・ジャパンの負担とし,原告エイベックス・エンタテインメント株式会社に生じた費用の4分の1と被告に生じた費用の25分の1を原告エイベックス・エンタテインメント株式会社の負担とし,原告らに生じたその余の費用と被告に生じたその余の費用を被告の負担とする。
この微妙に訴訟費用の分担を命じられたEMIとエイベックスには、何があったのだろう?
期日に無断で欠席して一回伸びたとか、あるいは無理な損害賠償請求をしていて取り下げたとか、そんなことがあったのだろうか?
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