France人など欧米人に日本の民事訴訟を説明するには
フランスの先生に日本での講演を頼んだところ、その準備に日本法のことも知りたいというので、急遽日本の民事訴訟の概略や資料を探すことになった。
以下はその備忘録だ。
まず、日本の法律の英訳だが、これは名古屋大学が作って日本政府に採用された「日本法令外国語訳データベースシステム」というサイトがある。
これには幸いなことに民事訴訟法も載っている。
http://www.japaneselawtranslation.go.jp/law/detail/?id=1940&vm=04&re=01&new=1
ちゃんとリンク用URLが書いてあったが、URLバーからコピーすると漢字の「民事訴訟法」が入っていて、外国人にメールで知らせるには不適である。リンク用URLをコピーしないといけない。
法律だけあってもよく分からないだろうし、そもそもが裁判所制度も違うとなると、その全体から説明する資料が欲しい。
そこでいくつかググッて探してみた。
http://www.fr.emb-japan.go.jp/infos_japon/pdf/NDJ_printemps_2010.pdf
これは、在仏日本大使館が日本紹介ニュースを発行しているもので、この中に日本の裁判制度が開設されている。仏文なので、特にフランス人向けには良いのだが、民事訴訟の紹介には全く適さない。なんと、「日本の民事訴訟はフランス法と大して違いません。原告が訴えを起こして、裁判所がその適法性と理由の有無を公開の対審手続によって判断します。」とあるだけだった。
これでは全く役に立たないので、最高裁サイトの英文民事裁判制度解説を紹介する。
http://www.courts.go.jp/english/proceedings/civil_suit.html
これはおそらく紙媒体で出しているものと同じであろう。しかも最近の司法制度改革や迅速化法による改革動向も簡単ながら触れられており、詳しくかつ最新のものだ。
一般的にはこれで決まりだ。
しかし、惜しいことに、理論的な説明が全くない。例えば処分権主義とか弁論主義とか、当事者主義とか職権主義とか、そういった基本概念については全く触れられていないので、フランスの研究者に講演の参考になるように提供する情報としては不十分であった。
仕方が無いので、自分で書くことにして、今朝から今まで、ワード3頁の仏語作文に時間を取られてしまった。
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コメント
成果物の公開を期待したいところです。
投稿: 小倉秀夫 | 2011/12/27 14:04
林屋礼二「明治期民事裁判の近代化」東北大学出版会2006年だとフランスとの関連について3カ所書かれています。445頁以下のフランス民事訴訟法とドイツ民事訴訟法からの影響 で明治民訴法下でフランス式の口頭主義がすたれていった過程をまとめられています。
投稿: 岡本 哲 | 2011/12/30 03:15