bankruptcy:武富士の更生難航
読売online:武富士、更生計画白紙も…支援企業変更の可能性
会社更生手続き中の消費者金融・武富士が、韓国の消費者金融A&Pファイナンシャルの傘下で再生を図る更生計画が白紙になる可能性が出てきた。
会社更生手続は、「窮境にある株式会社について、更生計画の策定及びその遂行に関する手続を定めること等により、債権者、株主その他の利害関係人の利害を適切に調整し、もって当該株式会社の事業の維持更生を図ることを目的」としている。
どんな会社であってもこの事業の維持更生のために債権者などの利害関係人に泣いてもらって、会社を立て直す必要があるかというと、そうではない。企業の事業活動が社会的に有益であり、かつ場合によっては不可欠だからこそ、借金棒引きによっても会社を救うのである。
さて、武富士については、さまざまな利害関係人が武富士の更生により利益を受けることになっている。従業員とか、過払い金返還請求権を有する元の顧客とかが思い浮かぶ。
しかし、これらの人たちは本当に武富士の維持更生で利益を受けるのか?
過払い金返還債権者は、上記の記事によると約91万人おり、返還される見込みは当初計画通りだと3.3%だが、破産すれば1・9%に下がると試算されているそうだ。
そのように言われると更生が必要なようにも思えるのだが、更生されても3.3%しか返ってこないのだ。
従業員については、こんな記事がある。
WSJ:武富士、社員の8割退職へ=想定上回る1300人
会社更生手続き中の消費者金融・武富士で、今年3月末の在籍社員の8割に当たる1300人程度が退職することが30日、分かった。武富士の事業を引き継ぐ韓国の同業大手A&Pファイナンシャルは、人員削減の規模を1000人程度にする予定だったが、退職希望者が続出し、想定を上回ったという。会社の先行きに不透明感が強いことなどが背景とみられる。
大体倒産会社なのだから、雇用は保障されない。リストラの嵐であるし、残ったとしても、労働条件は良くなることは考えられないだろう。
それでも、国内企業として必要な存在ならともかく、韓国の消費者金融会社が日本に進出する拠点となるのであれば、国内の従業員の立場は推して知るべしという感じがある。
そのように考えると、債権者に泣いてもらって、担保権者の権利まで制約して、会社を立て直す価値があるのかということを再度考えてみる必要がある。
ちなみに、会社更生法は、更生計画の認可要件として、「更生計画の内容が公正かつ衡平であること」および「更生計画が遂行可能であること」を要求している。そして、認可された更生計画が、結局遂行されないとなれば、以下の条文が適用になる。
第二百四十一条 更生計画認可の決定があった後に更生計画が遂行される見込みがないことが明らかになったときは、裁判所は、管財人の申立てにより又は職権で、更生手続廃止の決定をしなければならない。 第二百五十二条 破産手続開始前の株式会社について第二百三十四条第一号から第四号までに掲げる事由のいずれかが生じた場合において、裁判所は、当該株式会社に破産手続開始の原因となる事実があると認めるときは、職権で、破産法 に従い、破産手続開始の決定をすることができる。ただし、当該株式会社について既に開始された再生手続がある場合は、この限りでない。
つまり、このまま武富士について更生計画の遂行見込みがないと判断される事態に至れば、裁判所は職権で破産手続を開始することができるのである。
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