arret:公序良俗違反・新判例
建築請負契約が、違法建築を目的とするもので公序良俗に反するため無効とされた事例である。
事案は単純で、賃貸マンションを建設しようとしたが、建築基準通りに立てたのでは部屋数が少なく採算が取れないというので、部屋数を多くしようと注文者と請負人が画策し、建築確認用の図面と本当に建てる裏図面とを用意し、建築確認用図面で確認済証を受けた。
そして裏図面に基づく建築をしたところ、区役所にバレて、基準に沿った建物にするよう指示された。また周辺住民からの苦情にも対応を迫られ、これまた追加工事が必要になった。
そこで、注文者と請負人が合意して、追加工事を行った。
ところが、元々の違法建築工事代金だけでも1億1245万5000円の約定で、追加工事を入れればもっと膨らむのに、注文者は請負代金のうち7000万円程度しか支払わなかった。そこで不足分を支払えという訴えを請負人が提起し、これに注文者は損害賠償請求の反訴を提起したというのである。
もともとが結託して違法建築をしようという企みであって、そのような建築請負契約は極めて反社会性の強いものである。ましてや裏図面まで作るという悪質さだ。
ということで、元々の契約は、一審から最高裁まで、一貫して公序良俗に反し無効と判示されている。
これに対して、役所の指摘を受けて行った追加工事や周辺住民からの苦情に対応して行った追加工事は、これまた注文者と請負人が合意の上で行ったものであり、違法な建築を目的とするものでもないし、こちらの方まで公序良俗に反するとは評価できない。しかし一審・原審は無効としていたので、その部分は破棄差戻しとなったのである。
一読して極めて常識的な判断と言うことができるが、最高裁裁判官たちを驚かせた違法建築の手口は、しかし噂ではよく聞く話でもある。実際のところ、どれくらいこうした悪事がはびこっているのだろうか?
| 固定リンク
「裁判例」カテゴリの記事
- arret:民訴教材・直接主義違反の破毀差戻例(2025.07.12)
- Jugement:不法行為加害者である未成年者の母親の監督責任を認めない一方、被害者の兄に民法711条による請求を認めた事例(2025.04.21)
- UK最高裁によるトランスジェンダーと平等権(2025.04.17)
- Jugement:新型コロナの軽症者収容のためホテル借り上げを具体的に依頼しながら契約しなかった地方自治体に契約締結上の過失責任が認められた事例(2025.02.17)
- jugement:福岡小学校教諭の公務災害死について市の安全配慮義務違反が認められなかった事例(2025.02.07)


コメント