law:ウィルス作成・供用罪などについて
研究会で、刑法の先生から今回の刑法改正についてご講義を受けた。
久しぶりに南山大学で担当していた情報法の講義ノートをハードディスクの片隅から引っ張り出したが、概ね当時のままの規定であり、唯一変わっていたのは「正当な理由がないのに」という要件が国会審議の過程で付け加わっていたことだった。
しかし、これは立法担当者の説明によれば、意味のない文言だという。
さて、研究会でいくつか具体的な質問があった。
--- もう無くなってしまったが、カレログを、持ち主に無断でインストールした場合、ウイルス供用罪になるか?
--- なる。利用者の意に反する動作をさせるし、利用者が知らないまま行動ログが外部に送信されるのは不正と評価できる。
--- メールソフトなどで、送信したメールを一定期間経過すると消去するプログラムがあるが、これはウイルスと評価できるか?
--- メールに事故消去するプログラムを仕込んであって、受領者が認識できないのであれば、やはりそのようなメールを送り付けることはウイルス供用罪に当たる可能性がある。
--- エロサイトなどで、ワンクリックすると契約成立が告げられ、請求書の画面が開き、パソコンを再起動してもなお請求書が消えないようになったという訴えが消費者から寄せられることがあるが、これはウィルスに該当するか?
--- 意に沿わない動作をさせるプログラムで不正なものという点では、該当する。
--- 満喫などでキーロガーを仕込み、利用者に利用させる行為は、ウィルスに該当するか?
--- 該当する可能性は大いにある。
個別の事例についてはもちろん仮定の話なので、実際の事件が起こらないと分からない部分を残しているが、結構幅広い適用が想像される。
この場合に鍵となる概念は「不正に」ということであろうか。
法務省サイトの説明によれば、この「不正に」とは社会的に許容しうるものであるか否かという観点から判断されるとある。例えばエイプリルフールのジョークアプリなどは、社会的に許容される例に挙げられるが、密かにプライベート情報を盗み出すソフトなどは、社会的に許容されないこととなる。
いずれにしても、6年前からずっと提案されていた法案が、反対の多い共謀罪を削除してサイバー犯罪条約関係に絞って提案されて成案に至ったということなのに、まるで菅政権が地震のどさくさに紛れてネット監視法を作ったみたいに言われるという不幸な出生経過であった。
あえて言うなら、このようなトンデモ陰謀論を振り回す人があぶり出されたという意味では、よかったのかもしれないが。
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