news:ストライキにロックアウトで対抗
ストライキ、つまり争議行為を労働組合がするのに対して、経営側がロックアウトで対抗するということはよくあることなのだが、最近ではストライキ自体が珍しいので、ロックアウトも珍しい。
その一種がカンタス航空で行われている。
オーストラリアの航空最大手カンタス航空は29日、国内線と国際線すべての運航を直ちに停止すると発表した。労組のストに対抗し、組合員を施設から閉め出す異例の強硬措置に踏み切る。労使対立のエスカレートにより、豪州の空の足に深刻な打撃を与えることも懸念されており、同国政府も介入に動き始めた。
このロックアウトが派手派手しく行われていたのが、アメリカのプロスポーツ界。特にアイスホッケーやバスケットボールでは選手側のストライキに長期の試合中止で対抗している。
NBAについては、今年の開幕から2週間の中止が決定ということで、この11月からの試合が行われない。
日本では、最高裁判例で使用者の争議権も認められる余地があること、ロックアウトがそれに当たること、ただし、正当な争議権行使としてロックアウト期間中の賃金カットを主張するには以下の要件を満たす事が必要であることを判示している。
個々の具体的な労働争議における労使間の交渉態度、経過、組合側の争議行為の態様、それによつて使用者側の受ける打撃の程度等に関する具体的諸事情に照らし、衡平の見地から見て労働者側の争議行為に対する対抗防衛手段として相当と認められるかどうかによつてこれを決すべく、このような相当性を認めうる場合には、使用者は、正当な争議行為をしたものとして、右ロツクアウト期間中における対象労働者に対する個別的労働契約上の賃金支払義務をまぬかれる
カンタス航空が実施するロックアウトで象徴的に現れているように、争議行為で企業活動が止まれば困るのは従業員だけでなく、取引先も甚大な被害を受ける。カンタスの場合は利用者が予約していた旅程をキャンセルすることになるので、これについては免責されるはずもなく、カンタス航空は大きな損害を覚悟している。
肉を切らせて骨を断つぞ、というわけである。
そして利用者の個人的利益にとどまらず、日本で言えばJALやANAが全面休止するような事態であるから、社会不安にすらつながりうる。政府が問題解決に乗り出すことを促す効果も大であろう。
日本だったら、労働関係調整法という国鉄のストが頻発していた時代に活躍していた旧仮名遣いの法律があり、以下のような条文の出番となるだろう。
第三十五条の二 内閣総理大臣は、事件が公益事業に関するものであるため、又はその規模が大きいため若しくは特別の性質の事業に関するものであるために、争議行為により当該業務が停止されるときは国民経済の運行を著しく阻害し、又は国民の日常生活を著しく危くする虞があると認める事件について、その虞が現実に存するときに限り、緊急調整の決定をすることができる。
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コメント
NBAやNFLのlockoutはストライキへの対抗策ではないのでは?
ただ、No work no payの原則の有無でロックアウトの意味合いは大きく異なるように感じました。
投稿: 故元助手 | 2011/10/31 15:48
アレ、違ったんですか?
なんとなく記憶に頼って書いたんで、間違いだったかな?
投稿: 町村 | 2011/10/31 18:00
NBAの場合はCBA(Collective Bargaining Agreement)という各チームが個別の選手と結ぶ個別の契約に対して制約を課す労使協定的なもの(サラリーキャップとか契約年数の上限とかが定めてある)の期限が切れたため、リーグ側というかオーナー側がロックアウトを取りました。
よくわかりませんが、おそらく、CBAが期限切れした場合は、契約自由の原則が支配することになって(今の状況と比べると)圧倒的に選手(選手会)に有利になりますから、選手側はストライキなど望まないでしょう。
日本のブルーカラーを前提にできたと言われるステロタイプな労使関係の考え方(労働法は従業員を守るために契約自由を修正した)と比べると違いがあまりに大きく、非常に面白いです。
投稿: 故元助手A.T. | 2011/11/02 11:06
追伸ですが、NBAのロックアウトでは反トラスト法違反か否かが問題になっているみたいですね。これを労働法でなく独禁法で問題になっているという角度からみるか、そもそもアメリカの反トラスト法の守備範囲が日本の独禁法と異なって広いという角度から見るか、いろんな見方で検討できそうです。
投稿: 故元助手A.T. | 2011/11/03 16:55