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2011/10/03

minso:民事執行・民事保全・倒産処理の理念

私の勤務校の法学部では、民事訴訟法II(4単位)として民事執行法、民事保全法、倒産処理法を一括して取り扱う。

民事法のいわば最深部に当たるこれらの内容までも履修する学生は、それほど多くはなく、隔年開講ということにしている。

今日がその第1回の授業で、主に民事手続法の理念を説明した。

学生たちが手続法の勉強を面白くないと感じる一番の理由は、平板な手続の仕組みを学んでも、それが当事者の生活とか利益とかにどう影響するかが全く分からないというところにあるのではないか。確かに、実務的には重要な書類の書き方とかを学部生に教えても、まあ意味はない。

しかし手続法は手続法で、人々の生活や利益を左右することがある。手続の組み立て方で、正当な権利が実現できたり出来なかったりする。まあ大体手続が行われる以前に権利義務があるかないかを決めつけてしまえば、存在する権利を実現する平板な期間に過ぎなくなるのだが、権利義務があるかないかはまさにその手続を通じて決まってくるのだ。

今日は、カバチタレの一節を引用し、競売手続を通じてマイホームを落札した人が次々現れる占有者に金を取られるという場面で、実体法的にはどうなのかを考えてもらった。マイホームと思って家を買っても、そこに正当な賃借人がいれば、買った人は住むことができない。しかし賃借権のない単なる不法占拠者なら、あるいは賃借人でも対抗力がないのであれば(借家の場合は考えにくいが)、買った人はその占有者を追い出すことができる。
でも追い出すにも手続がいる。追い出すのに訴訟をすれば時間がかかるから、特別の簡易な手続きが用意されていると、そんな話をして、適正と迅速とが重要な理念だと説明した。

しかし、適正と迅速は、多くの場合トレードオフの関係にもあるので厄介だ。

もう一つ、過酷執行の禁止も重要な理念だ。たとえ実体法が認める権利であっても、それを強制的に実現することが過酷な結果をもたらすならば、手続的に制約が生じる。
たとえ人肉を借金のかたに取り上げるという契約が実体法上有効でも、その執行方法で防ぐ。
借金を払わない債務者であっても、生活必需品とか商売道具までは取り上げられない。給料だって全部は取られない。被災者の義援金も同様に、借金があるからといって強制的に取り上げられないようになっている。

あと公平は、多種多様な関係者が集まってくる倒産事件において、最も重要かつ微妙な問題となる。JALの倒産事件では、債権者や株主、国(納税者)の犠牲のもと、関係自治体や関係企業、提携航空会社などの利益を守った格好だ。従業員だって、年金は多少減ったかもしれないが、守られた方だ。

こういう理念、それも複雑に絡み合った利害を調整していくプロセス、それが手続法なのである。

ということで明後日からは民事保全の話をするのだが、題材としてはやはりプリンスホテル対日教組事件は落とせないところだろう。

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