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2011/10/06

minso:民事保全のチカラ

昨日の民訴IIでは、民事保全のチカラが強力なのか無力なのかという話をした。

一見すると、民事保全は短期間で単独裁判官が決定を下し、決定の告知とともに執行力も発生するので、強力極まりない、あるいは乱暴極まりない制度のように見える。

しかし、法とか司法とかを全く尊重する気のない人たちにとっては、絵に描いた餅は所詮食べられないのだ。

その典型例が、グランドプリンスホテル新高輪と日教組の事件だ。

事件の経過は周知のことだが、判決文で認定された事実から引用してみよう。(一部改変している所がある)

日教組は、昭和26年・・・以後、毎年全国各地で教研全国集会を連続して開催していたが、平成20年2月2日ないし4日にその主催する本件教研集会を東京都内で開催するため、被告プリンスホテルとの間で、平成19年3月から10月にかけて、同被告が経営するグランドプリンスホテル新高輪(以下「ホテル新高輪」という。)の宴会場「飛天」(以下「飛天」という。)及びグランドプリンスホテル高輪(以下「ホテル高輪」という)の宴会場「プリンスルーム」(以下「プリンスルーム」という。)の各使用契約を締結し、かつ両ホテルの客室合計190室につき平成20年1月31日から各4泊分の宿泊契約を締結した。  しかし、被告プリンスホテルやその代表取締役である被告Wらが、平成19年11月12日付け書面をもって、教研全国集会に反対する右翼団体の街宣活動等による他の顧客及び近隣等への迷惑等を理由として、これらの契約を解約した旨を主張してその使用を拒否するに至った。  このため、原告日教組は、東京地方裁判所に対し、同年12月4日、平成20年2月2日に予定していた教研全国集会全体集会(教研全国集会の参加者すべてが参加)のため、同月1日(搬入・設営の目的)及び2日(記念式典の目的)の両日につき飛天の使用とともに、同月1日に予定していた前夜祭のためのプリンスルームの使用をそれぞれ求めて仮処分命令を申立て、同月26日、同裁判所から同申立てどおりの決定を得たところ、同被告からの保全異議申立てがあったものの、同裁判所により平成20年1月16日に同決定を認可する旨の決定が出され、更に同被告による東京高等裁判所に対する保全抗告がなされたが、同月30日、同裁判所から同抗告を棄却する決定がなされて、上記仮処分命令の決定が確定した。  にもかかわらず、被告プリンスホテルは、引き続き原告日教組に対して上記各会場使用を拒否したため、原告日教組は、上記予定していた本件教研集会の前夜祭及び全体集会を開催することができず、また、本件教研集会に参加する予定であった原告日教組を構成する単位組合の組合員らは、上記宿泊をすることもできなかった。

この授業をするにあたって、同ホテルのサイトに行ってみたが、国民生活センターのすぐそばにある建物だった。

で、この経過に明らかなように、大規模な集会を実施するために施設を借りて、直前に契約を履行しないと決められてしまえば、テコでも動かず、仮処分でもどうにもならないのである。
結局、損害は後日賠償で、ということになる。仮に金では解決にならない損害が生じるような場合なら、法はとにかく無力だということだ。

さりとて、法的手段が実際に強力すぎてもまた使いにくいものとなる。効果が大きければ大きいほど、確実な根拠に基づいて万一の誤りが無いようにしなければならず、勢い時間がかかるし手間がかかる。緊急時の処分というのは、万一間違っていても金で償えば足りるという限度ででないと、なかなか出せない。
財産上の争いなどは、こうした考え方に基づいて処理できるが、人格権に関わるものとか、政治的な問題、身体生命に関わる問題などは、微妙である。居住権の問題も同様だ。

民事保全手続は、こうした緊急の処分が必要な場合に、どれだけ迅速ないし慎重な手続をふむのか、そして事後的な救済ないし是正措置をどう用意するのか、という観点で興味深いモデルを提供しているのだ。

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