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2011/10/10

law:日本私法学会終わる

神戸大学で二日間にわたって開かれていた日本私法学会は、つつがなく終了した。
昨年開催校の苦労を味わっただけに、開催校スタッフの皆様には心よりご苦労様といいたい。

さて、最終日のシンポジウムは、民法系が2つ、商法系が1つというのがここ最近の例で、私は消費者契約法の10年を振り返るというシンポに出席した。

消費者契約法は、その生みの親の一人である落合先生がシンポでおっしゃっていたように、小さく産んで大きく育てるというやり方であり、妥協の産物にならざるを得ないということもあり、随所に改正すべき芽がある。今日のシンポでは、角田美穂子先生をはじめとする気鋭の若手と、松本恒雄先生をはじめとするベテランが、各方面から改正の方向性を指し示していた。
その資料はNBL958号に掲載されているし、私法という学会誌の次号には討論も含めて再現される。

その中で、京都大学の笠井先生が適格消費者団体による差止請求訴訟について、訴訟法的な検討を行なっていたのが、個人的に最も興味を惹かれた。

笠井先生のポイントは2つ。
一つは、請求の特定をどうするかということで、狭く考えれば既判力・執行力も狭くなってしまうし、さりとて認容判決が出ても債務者が何をすれば良いのかが分からないのでは請求としても特定されているとは言い難いという問題がある。

この点については、適格消費者団体の実務でも困難に直面している。特に、平均的損害を越える損害賠償予約条項の差止などでは、実際に使われている条項の使用を差し止めるというのが最も固いが、それだと条項を少し変えれば差止の効力を免れるという問題がある。極端な場合、改悪しても差し止め判決の効力は受けない。
さりとて、特定の金額を出して、それ以上の損害賠償予約条項を使用するなという形を取れば、その金額の根拠が問題となる。一般にある条項が平均的損害を越えるほどに高すぎるということは言えても、ではどれほどの平均的損害が発生するのかを示せといわれれば、それは困難なことが多い。
平均的損害を越えることは消費者側に証明責任があるとしても、その損害算定の資料は事業者の側から出してもらわなければならないのである。

もう一点は、確定判決等がもつ効力の他団体への拡張の根拠と、特に新事由による再提訴可能性の意味についてで、鑑定判決等の他団体への効力は既判力になぞらえて考えていくべきとの考えが示された。

また、新事由として再提訴が可能になる場合は、NBLにも既に載っているが、ある団体の差止訴訟判決が確定した後、他の消費者による個別提訴などで差止訴訟判決とは別個の結論が出されて確定したような場合には、新事由として扱おうというのである。
その前提として、差止訴訟判決は将来給付の訴えと同様に将来効があり、従って将来にわたって差止の効力を認めることが不当となるような事由が発生した場合は、従来の既判力理論よりも踏み込んで再提訴可能な新事由と解釈しようというのである。

非常に興味深い。

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コメント

町村先生。ご挨拶ができずにすみませんでした。適格団体のする差止め請求には、多くの課題がありますね。そもそも、請求の特定との関係でいえば、どの条項を差し止めるのかという問題も残っています。差止め請求を提起すると、事業者はすぐに契約条項を変えて、すでにその条項は使っていないとの抗弁を主張してきます。考えてみると、適格消費者団体は、消費生活センター等から情報を得る以外に、具体的な情報を得る手段はないわけで、そのあたりの法整備も不可欠だと思います。
それにしても、「小さく産んで大きく育てる」べき消費者契約法で、そのために議論すべき点は相当程度に明らかになったようにも思いました。ただ、「交渉力」格差の具体的な内容などについて類型化して考えることは、一歩間違うと消契法の趣旨が没却されかねないなぁとも思いました。ここでも実務感覚が必要な気がしています。
北海道から先生、ご苦労様でした。

投稿: 坂東俊矢 | 2011/10/11 09:18

会場が広すぎて、色々な方に不義理をしたと思います。

契約条項を変えてしまうということは、それ不当条項の削減につながるのであれば結構なことで、後はもう使いませんということが約束されるかどうかと、提訴の手間暇および訴訟費用をどうしてくれるかということですね。

提訴の訴訟費用については、民訴62条を積極適用して、仮に請求棄却になっても勝訴当事者が負担するようにすべきでしょう。なにしろ事前に訴訟での請求を予告することが義務付けられているのですから、突然訴えを提起されたわけではありません。

もう使いませんという約束が認められるかどうかについては、そういう条項に違約金条項を付けた和解をデフォルトで行うということでしょう。もう使わないという意思が明確に示せるのであれば、和解にも応じるはず。
和解に応じないで、もう不当条項は使いませんという意思が明確に示すことをしないのであれば、使用するおそれがあるとして請求認容判決が出せるはずです。

まあこんなふうに理屈通りに行けば苦労はないと長野先生に怒られそうですが、少なくとも制度的はそういう手当となっています。

投稿: 町村 | 2011/10/11 11:56

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