« nuk:談合・やらせ体質から抜け出せない九電 | トップページ | politique:自民党って本当に面白い。マジなの? »

2011/10/25

arret:デート商法+換金商法でも信販会社はセーフ

消費者問題は消費者信用業者が入ることにより、悪質事業者との契約被害も救済が困難になる。そのことを如実に示した例だ。

最判平成23年10月25日PDF判決全文

事案は、販売会社Zの女性販売員が電話をかけて呼び出したXに、女性販売員が長時間話しかけ、手を握るなどの思わせぶりな態度で勧誘を続け、その後に仲間が数人やってきてXを取り囲み、威圧的な態度で購入を迫るなどしたため、Xは帰宅を言い出せずに契約に応じたというものである。

その契約というのは指輪等157万円相当で、個品割賦購入あっせん業者であるAとのクレジット申込書も販売会社のもとで書かされた。

しかし指輪等はわずかに10万円相当のものであった。

上記の取引は平成15年3月に行われ、5月に商品が引き渡されて、その月から2年ほど、XはAにクレジット代金を支払い続けた。支払総額は106万円で、残債務は112万円ほど残っている。

Zについては、平成14年頃から各地の消費者センターに相談が寄せられていたが、Zと加盟店契約を結んでいたAは、平成15年4月に消費者からの支払停止通告を受けていたのみで、Zの取引について消費者センターなどから苦情等を受けていなかった。
そして平成16年にYがAからの事業譲渡を受けた。

その後、平成17年10月に至ってXはYに支払停止を通告して支払いを止めた。
そして本件契約は消費者契約法違反で取消して既払い金の不当利得返還を求め、加盟店管理義務を怠った違法を理由に不法行為だとして弁護士費用を賠償請求した。これに対してYは、未払金の支払い請求の反訴を提起している。

原審は、未払金支払い請求反訴を棄却し、不当利得返還の本訴を認容、不法行為に基づく損害賠償は請求棄却とした。
理由は、消費者契約法違反は時効消滅していてYもこれを援用したが、公序良俗違反で無効だとし、その抗弁は割賦購入あっせん業者にも対抗できるとした。

しかし最高裁は、以下のように判示して、原則として個品割賦購入あっせん業者に対抗できないとした。

個品割賦購入あっせんにおいて,購入者と販売業者との間の売買契約が公序良俗に反し無効とされる場合であっても,販売業者とあっせん業者との関係,販売業者の立替払契約締結手続への関与の内容及び程度,販売業者の公序良俗に反する行為についてのあっせん業者の認識の有無及び程度等に照らし,販売業者による公序良俗に反する行為の結果をあっせん業者に帰せしめ,売買契約と一体的に立替払契約についてもその効力を否定することを信義則上相当とする特段の事情があるときでない限り,売買契約と別個の契約である購入者とあっせん業者との間の立替払契約が無効となる余地はないと解するのが相当である。

かくして、公序良俗違反となる取引に巻き込まれて損害を受けたことを認定しつつも、払ったお金はかえってこないということになった。
もちろん、消費者は販売業者Zに対して不当利得返還請求権を有する。しかし本件でも、また他の多くの例でも、この期に及んでなお支払い能力を有する悪質事業者は少なく、本件Zは廃業状態だというので、権利があるといっても絵に描いた餅である。
他方でこれと同様のことは本件Y、つまり信販会社などにもいえる。抗弁を対抗されても、Yとしては自らの加盟店であるZに、不当利得返還ないし損害賠償を請求することができるだろう。しかし本件Zのように無資力となっていれば、事実上権利行使はできない。

要するに、悪徳事業者の無資力リスクを、信販会社などの金融業者ではなくて消費者が負うという構造になっているのである。
この利益状況について、やはり釈然としないものを感じる。販売業者との加盟店契約を締結し、その業者の割賦販売を容易にする事業を行なっている信販会社などは、加盟店契約に際して販売業者の資力を調査しようと思えばできる。上記のような、公序良俗に反するような取引行為をしないように加盟店管理を徹底することが理想とはいえ、それは限界があるかもしれない。しかし公序良俗に反するような利取引行為をして消費者との間にトラブルとなった場合、そのツケを負うべき販売業者が無資力でツケを払えないような事態が来ないように、一種の与信管理をすることはできるはずで、むしろ金融業たる信販会社の得意技でもある。
このようにリスク回避の手段を持つ信販会社がリスクを負わないで、リスク回避の手段を持たない消費者にリスクを負わせれば、そのリスク回避のインセンティブが失われ、結果として公序良俗に反するような取引をやり放題で問題化すればドロンしてしまうような、悪質事業者が野放しになるのだ。

こういう構造であって望ましくないということは、きっと経済学者も賛同してくれると思うのだが、いかがか?

|

« nuk:談合・やらせ体質から抜け出せない九電 | トップページ | politique:自民党って本当に面白い。マジなの? »

裁判例」カテゴリの記事

コメント

こういう判決を載せるときは、第3小法廷まで銘記した方が良い気がします。

投稿: ToshimitsuDan | 2011/10/25 21:00

信販について勉強を始めようとしています。
とてもありがたい情報です。
消費者法ニュースはとっていますが、ほとんど読んでいません。
分かりやすい入門書があれば教えて下さい。
司法書士です。

投稿: 大久保周司 | 2011/10/26 08:46

先生と同じような理由で紀要に評釈書いたんですけどね...
受け入れられず残念です。
そういえば高裁は目的における契約の失効みたいな法律構成取ってましたけど
あれはどうなってしまったんでしょうか...

投稿: 故元助手A.T. | 2011/10/28 06:15

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/31412/53082298

この記事へのトラックバック一覧です: arret:デート商法+換金商法でも信販会社はセーフ:

» 悪徳業者を野放しにし消費者被害回復を困難にする不当判決 [ろーやーずくらぶ]
 最高裁第三小法廷(那須弘平裁判長)は、25日、デート商法で不当に高額な宝石を売りつけられたとして、不当利得として既払分割金の返還を信販会社に求めた事案で、請求を認容した原審名古屋高裁平成21年2月19日判決(判時2047号122頁)を破棄し、請求を棄却する不当判決を言い渡しました。...... [続きを読む]

受信: 2011/10/30 19:07

« nuk:談合・やらせ体質から抜け出せない九電 | トップページ | politique:自民党って本当に面白い。マジなの? »