arret:文書提出命令新判例:綱紀委と自己専用文書
弁護士会の懲戒処分に相当するかどうかを判断する綱紀委員会というのがあるが、その議事録が自己専用文書に該当するとの判断である。
弁護士会と所属弁護士とが、懲戒処分の当否をめぐってあらそう取消訴訟が基本事件で、戒告処分となった弁護士はその懲戒処分が不当な目的でなされたことを立証するため、綱紀委員会の議事録と議案書の提出を求めた。
最高裁は、以下のように述べて、自己専用文書に該当するとした。
「本件議事録のうち審議の内容である「重要な発言の要旨」に当たる部分は,相手方の綱紀委員会内部における意思形成過程に関する情報が記載されているものであり,その記載内容に照らして,これが開示されると,綱紀委員会における 自由な意見の表明に支障を来し,その自由な意思形成が阻害されるおそれがあることは明らかである。綱紀委員会の審議の内容と密接な関連を有する本件議案書についても,これと別異に解すべき理由はない。」
この判断、最高裁が銀行の貸出稟議書に関して出した最決平成11年11月12日と全く同様の判断枠組みで、自己専用であることを認めたもので、真新しいのは弁護士会綱紀委員会の議事録について、内部規則を参照しながら上記のように判断したという点のみである。
ただまあ、個人的な経験から言うと、自由な意思形成が阻害されるほどに赤裸々な意見が記載される性質の議事録だとは思わないのだが。逐語調書ではないはずである。
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