Sonyのクラスアクション回避条項?
ソニーは例のセキュリティ侵害攻撃により被った個人情報流出被害に懲りて、ユーザーからの集団訴訟提起を防止する条項を約款に導入し、ゲームログイン時に同意するよう求めると伝えられている。
これらによると、少しはっきりしない所があるものの、要するに仲裁条項を定めたということのようだ。
Gamers will now have to try to resolve any legal issues with an arbitrator picked by Sony, before being able to file a lawsuit.The new clauses, dubbed "Binding Individual Arbitration," state that "any Dispute Resolution Proceedings, whether in arbitration or court, will be conducted only on an individual basis and not in a class or representative action or as a named or unnamed member in a class, consolidated, representative or private attorney general action".
この個人仲裁拘束条項とでもいうべき条項に同意すれば、クラスアクションのような集団訴訟には参加することが出来ず、個人としてのみ訴えることができるという。そして個人として訴える場合、ソニーが指名した仲裁人による仲裁を試みることが義務付けられるという。
ここで奇妙なのは、普通は「仲裁 Arbitration」というと仲裁人の裁定に従わざるを得なくなる手続を指すのだが、上記の記事を読む限り、訴訟提起前に仲裁を試みることを義務付けているというので、仲裁手続を経ても解決に至らない場合に訴訟提起ができるという仕組みのように読み取れる。つまり非拘束的仲裁 non-binding arbitration clauseのようである。これは仲裁というのではミスリーディングであって、調停にむしろ近い。
この条項にはさらに、BBCの記事によれば、オプトアウトの可能性が付されている。
Those that want to opt out will have to send a letter to Sony's Los Angeles headquarters in the US.
Once they do, the subscribers will be able to keep their right to file a class action lawsuit without any need for arbitration.
このようにオプトアウトすれば、といっても書面を送るということのようだが、仲裁条項には拘束されなくなるというのだ。しかし、このようにすれば仲裁条項に同意することなく「ログインできる」とは必ずしも書かれていない。仲裁条項に拘束されない代わりにログイン出来ないというのであれば、仲裁条項からのオプトアウトではなくSPNからのオプトアウトであり、それでは全く意味が無い。
合理的に考えるならば、仲裁条項からオプトアウトしてもゲームはログインして続けることが出来るということのはずだが、そうだとすると、上記のような仲裁条項によって集団訴訟に参加するのを防止しようという意図は貫徹されなくなる。
このように見ると、どうもCNET Japanの紹介記事から受ける印象とは異なり、仲裁を強制してクラスアクションへの参加を阻むという一方的な条項というよりは、一応は非拘束仲裁による解決を試みるという程度のものなのかもしれない。
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