Bankruptcy:武富士の更生計画案
会社更生手続中の武富士は、7月15日に更生計画案を裁判所に提出した。
そのポイントは、新会社と旧会社とに分割し、更生債権は旧会社に残し、優良貸出債権を新会社に移して、新会社の方を将来に向かって残すというものである。
ちょうど水俣病原因企業であるチッソが最近行った方式に類似しているが、要するに過払い金返還請求権を中心とする負債をなるべく切り捨てて、その負担のない新会社を活かそうというものだ。
過払い金返還請求権は、担保権も優先権もない一般債権となる。その債権者数は91万人に達するという大規模さで、更生計画確定後1年以内に実施予定の第1回弁済では3.3%、その後に第2回弁済を実施予定だが、第2回まであわせた弁済率は明らかでない。
今後は、更生計画の認可要件が備わっているかどうかを裁判所が審理し、備わっていると認めたときは関係人集会に付議する決定をする(会更189条)。
関係人集会は、実際に関係人が集まる場合もあれば、書面投票による場合もある。
関係人集会で計画案が可決された場合は、裁判所が再度認可要件の具備を確認し、認可する(会更199条)。
認可されれば、その認可決定の時から更生計画の効力が生じる。この効力により、すべての更生債権は更生計画の定めの通りに変更され、つまり計画で認められた弁済を超える部分は消滅する。
さて、既にこの計画に対しては反対の声が上がっている。
しんぶん赤旗より
武富士の責任を追及する全国会議(代表・新里宏二弁護士)は同日、武富士更生管財人の更生計画案には同意できないとして記者会見を行いました。
同会議事務局長の及川智志弁護士は「武富士のような悪質な業者を生き残らせるべきではない」とのべ、破産を求める声明を発表。同計画案に同意できない理由として、▽弁済の原資となる武富士の資産を安い価格で売却する▽武富士を更生させる社会的意義がない▽第2回弁済も信用できないことなどを挙げています。
肝心の新会社スポンサーへの売却価格が約283億円と推測され、これが更生債権の弁済原資となるわけだが、「武富士の営業貸付金残高は500億円を超えており、なぜこれを4割引き以下という廉価で売却しなければならないのか、管財人からは納得のゆく説明はされていない。」という。
この声明によれば、既に7月22日に上記の関係人集会への付議決定が裁判所からなされ、投票期間は10月24日までとされているようだ。更生債権の額により、過半数の同意が得られなければ、更生計画案は否決され、やがては武富士破産ということになる。
これからその同意取り付けが問題となるが、91万人もの更生債権者からどうやって債権額2分の1以上の同意を取り付けるのか、全体の過半数を少数大口債権者が占めていて根回しも出来ているという状況ではないのではないかと思われるので、先行きには注目である。
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