liquidation:東電の賠償義務を他の電力会社も分担するのは当然
読売online:他の電力会社にも負担させる福島原発の賠償原案
米スリーマイル島の原発事故の賠償制度を参考に、東電以外の電力各社も加わった「共済制度」の仕組みを創設する。各社には保有する原発1基あたり300億~500億円の負担を求める案を軸に検討する。東電の負担額は2兆~3・8兆円とし、電力各社の支払い上限を超える部分は政府が全面支援する。賠償制度の実現に向け、政府は特別立法の制定も視野に入れる。政府と東電は近く賠償案の本格検討に入る。原案では東電は同社の毎年の利益から1000億~2000億円を15年間払うほか、保有する原発17基分の負担金5100億~8500億円程度を支払う。東電以外の電力各社も国内に37基の原発を保有しており、基数に応じて負担金を拠出する。電力9社の合計は1・1兆~1・8兆円程度となる。
この解決策は、原則として支持できる方向だ。
前の「principle:原発事故の賠償責任は受益者負担」エントリでは、今回の事故による賠償責任が原発のコストの現実化に他ならないので、原則として受益者負担、すなわち電気料金値上げにより賄うべきだとして、次のように付け加えた。
国がやることはもう一つ、原発事故はまれにしか起こらない以上、原発を保有している国内各電力会社が万一の事故の際の賠償責任を分担するように、原賠法を改正することである。電力会社は地域独占なのだから真の意味で競争関係には立っておらず、そもそもが無過失責任なのだから、賠償責任の危険分散は電力会社間でも行うことで、より一層無駄の少ない引き当て制度となることだろう。
もともと、原賠法には保険制度が組み込まれている。無過失責任立法なのだし、危険を分散しておかないと被害者救済も覚束無いのが原発事故だから、原発によってメリットを受ける電力会社が万一の自己に備えた賠償金引当金を共同積立するのは当然である。上記記事にある共済制度は、その原賠法の採用する保険制度の延長線上にすぎない。
従来制度でカバーできない損害が生じてしまったということは、自民党時代の日本政府が見通しを誤り、事故の可能性を見ないようにしてきたツケであるから、その点を反省して、新規立法による損害の分担の積み上げを積極的に推進すべきであろう。
さらに言えば、金融機関破綻処理も、預金保険制度による同業者の損失分担の仕組みがある。珍しいことではない。
なお、東電の株主、債権者、そして経営者も応分の負担を負うべきことも忘れてはならない。東電の事業自体はなくすわけには行かないので、東電自身か別会社か、とにかく事業を承継できるようにしなければならないが、今まで原発は安いエネルギーだとのマヤカシにすがって利益を得てきた連中は、いまこそその利益のツケを払う必要がある。といって株主は有限責任だから、その法理に従って出資分だけ負担すれば良い。つまり100%減資だ。債権者は気の毒な感じもするが、無担保の債権者は貸し倒れもやむを得ないだろう。経営者の責任を追及するのは、世間的には最も望まれることだが、明らかな不正や怠慢がなければ法的には難しい。
ともあれ、少なくとも株主責任と債権者の責任を現実化するには、倒産処理手続を介するしかない。
共済制度創設による損害賠償の分担は、そのようにして東電自身が賠償することができなかった損害部分についての、原発利益享受ファミリーによる応分の負担なのである。
後もう一点、前エントリでも触れたが、共済制度を作るのであれば、その支出の目的は事故の賠償だけでなく、後始末、すなわち廃炉費用や使用済み核燃料処理費用も含めるべきだ。これらも放っておけばいずれ税金による処理にならざるを得ない。その前に、原発のコストとして現実化させておけば、少しでも国民負担は減るし、原発は安いなどというマヤカシが少しは解消される。
ただしいくら積み上げても本当に必要な費用は不明なのだが。
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コメント
次の問題は、今後おそらく1円にもならない一方で
経費だけは数千億単位でかかる福島原発の後処理の費用
分担ですね。原発の真のコストを明確にするためにも
早急にスキームを明らかにしてほしいものです。
でも、未だそれ以前の状況なんでしょうね……
投稿: 西谷慎一郎 | 2011/04/13 18:56