« 札響のStabat Mater | トップページ | 北大CoSTEPが「もっとわかる放射能・放射線」を電子書籍公開 »

2011/04/23

arrets:関西興銀事件上告審判決

最判平成23年4月23日(平成21(受)131号 PDF判決全文)

信用協同組合が自らの経営破綻の危険を説明すべき義務に違反して出資の勧誘をしたことを理由とする出資者の信用協同組合に対する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効が,遅くとも同種の集団訴訟が提起された時点から進行するとされた事例

最判平成23年4月23日(平成20(受)1940号 PDF判決全文)

契約の一方当事者は,契約締結に先立ち,信義則上の説明義務に違反して,契約締結の可否に関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合であっても,相手方が契約締結により被った損害につき債務不履行責任を負わない

信用組合関西興銀をめぐる一種の倒産詐欺事件である。
事案はほぼ共通している。
 信用協同組合関西興銀(Y)の勧誘に応じてYに数百万円を出資したが,Yの経営が破綻して持分の払戻しを受けられなくなったXが,Yは,上記の勧誘に当たり,Yが実質的な債務超過の状態にあり経営が破綻するおそれがあることをXに説明すべき義務に違反したなどと主張して,Yに対し,出資金相当額の返還ないし賠償を求めた事案である。

 主位的請求と予備的請求の構成が、最高裁の判決文からは若干両事件で異なり、131事件では以下のようにまとめられている。

主位的に,不法行為による損害賠償請求権又は出資契約の詐欺取消し若しくは錯誤無効を理由とする不当利得返還請求権
予備的に,出資契約上の債務不履行による損害賠償請求権

1940事件では、以下のようにまとめられている。
主位的に,不法行為による損害賠償請求権
予備的に,出資契約上の債務不履行による損害賠償請求権又は出資契約の詐欺取消し若しくは錯誤無効を理由とする不当利得返還請求権

つまり、出資契約の詐欺取り消しまたは錯誤無効を理由とする不当利得返還請求権が131事件では主位的請求に選択的併合とされており、1940事件では予備的請求に選択的併合となっているようである。

それはともかく、131事件では原審が主位的請求に関して消滅時効の完成を認めないで請求を認容したのに対して、最高裁は消滅時効が完成しているとして請求棄却の破棄自判し、予備的請求に関して審理せよと差し戻した。
1940事件では、原審(または原々審)が主位的請求に関して消滅時効の完成を認め、予備的請求として契約の債務不履行責任を認めたのに対し、最高裁は契約締結上の詐欺的な勧誘ないし説明義務違反は契約上の債務不履行とはならないとして、請求棄却の破棄自判をしたというものである。

いずれも、関西興銀に騙された出資者が敗訴した。

不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効は、損害及び加害者を知ってから3年というものだが、いつ、不法行為となることを知ったのかという点をめぐり、原審は先行する集団訴訟で別件刑事裁判の記録の写しが書証として提出されたときから相当後に説明義務違反を知ったと言えると判断した。これに対して最高裁は、遅くとも集団訴訟提訴があった年の暮れには説明義務違反による不法行為が成り立つことを知ったといえるとした。

また主位的請求の不法行為構成が原審または1審で却けられていた1940事件では、以下のような判示を最高裁がしている。

契約の一方当事者が,当該契約の締結に先立ち,信義則上の説明義務に違反して,当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合には,上記一方当事者は,相手方が当該契約を締結したことにより被った損害につき,不法行為による賠償責任を負うことがあるのは格別,当該契約上の債務の不履行による賠償責任を負うことはないというべきである。
 なぜなら,上記のように,一方当事者が信義則上の説明義務に違反したために,相手方が本来であれば締結しなかったはずの契約を締結するに至り,損害を被った場合には,後に締結された契約は,上記説明義務の違反によって生じた結果と位置付けられるのであって,上記説明義務をもって上記契約に基づいて生じた義務であるということは,それを契約上の本来的な債務というか付随義務というかにかかわらず,一種の背理であるといわざるを得ないからである。契約締結の準備段階においても,信義則が当事者間の法律関係を規律し,信義則上の義務が発生するからといって,その義務が当然にその後に締結された契約に基づくものであるということにならないことはいうまでもない。

今回は、主位的請求の不法行為構成が時効の壁に阻まれるが故に、「債務不履行」構成をとって、原審もそれに乗ったものと見られるが、契約締結過程における説明義務違反は、それ自体が不法行為の自由となることはあっても、説明義務違反により締結された契約の履行に関する瑕疵とは言い難い。
筋としては、時効の援用が信義則に反するという可能性がありそうだが、それはおそらく131事件の中で入れられなかったのかもしれない。

救済はなかなか難しい事件である。

|

« 札響のStabat Mater | トップページ | 北大CoSTEPが「もっとわかる放射能・放射線」を電子書籍公開 »

法律・裁判」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/31412/51474541

この記事へのトラックバック一覧です: arrets:関西興銀事件上告審判決:

« 札響のStabat Mater | トップページ | 北大CoSTEPが「もっとわかる放射能・放射線」を電子書籍公開 »