twitter情報:日弁連コンピュータ委員会の終焉?
つい先日、シンポジウムを開催したばかりの日弁連コンピュータ委員会だが、Twitterでは解散する(させられる?)という情報が飛び交っている。
先日のシンポジウムでも、昨年秋の段階で次回シンポが取りやめになるという話があり、経費削減のため中止と聞かされた後に資料代を参加費からまかなうことで開催にこぎ着けたという曲折があった。
一連の経過について私は中の人ではないので正確には知らない。憶測するに、日弁連は会費が高いという会員からの突き上げもあってリストラを進めるべく、とりあえず何の役にも立たないオタクの集まりのように見える委員会を廃止することにした、という感じだ。
コンピュータやネットワークの利用というのが弁護士の日常業務に必要であることは論を待たないと思う。コンピュータやネットワークを法実務に利用することは、確かに停滞しているが、法実務が取り扱う経済取引も日常生活も犯罪も、情報化が進む一方であり、例えばコンピュータ犯罪に対応するために警察が捜査能力を高めることを余儀なくされているのと同様に、弁護士もコンピュータを用いた取引や犯罪に対応するためのリテラシーを高めることはますます必要とされている。
コンピュータ委員会の活動がそのような弁護士全体の情報リテラシーを高める方向に寄与していなかったということであれば、そのような活動を委員会に求めることが必要なのであって、委員会は不要と言うことになるのが不思議な話である。
それに、クラウドコンピューティングの仕組みを分かりやすく解説して発生するであろう法律問題をいくつか取り上げるという先日のシンポジウムのような活動は、現実社会で先行する情報化に対して法律家の対応能力を高めることに確実に寄与していると評価できる。上記のような弁護士全体の情報リテラシーを高めるのに寄与する活動が行われていないという評価自体、不当なように思われる。
私個人としては、コンピュータ委員会とそのシンポジウムが無くなることで、どちらかというと毎年のお約束仕事が一つ減ることでお正月が安らかに過ごせそうな気もするのだが、地道な努力を積み重ねてきた友人達の仕事が評価されないでリストラされてしまうという成り行きには、残念な思いを禁じ得ないのだ。
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コメント
町村先生
コンピュータ委員会の件、ご紹介いただきありがうとございます。
日本自体のなかで、ハイテクを活用し、新規産業をおこすべきとか、技術はすぐれていても、法的なリスク対応が具体化しないので新規産業がおきないといわれている現状で、コンピュータ委員会の近時の活動が評価されずに、消滅させられるのは、きわめて残念です。
ISPの法的役割(2009)では、すでに、ブロッキングを取り上げ、とある情報漏洩事件対応(2010)では、具体的にどうトラブルをシュートしていったかというケーススタディをとりあげました。また、今年のクラウドも、先生に紹介していただいたとおりです。
確かに、日弁連の執行部の路線とは、異なる(ので、執行部には理解不能)ことは理解できます(私も執行部の考えは全く理解できない)が、日本社会のために何が必要なのかというプライオリティを考えたときに、まったく理解だできない話です。
投稿: 高橋郁夫 | 2011/03/08 17:48
日弁連の仕組みはよく知りませんが、コンピュータ委員会といった組織を置いておく目的が何なのか?よっては、廃止という選択肢はあるだろうと思います。
例えば、自動車運転委員会なんてものはたぶん無いでしょうから、以前とちょっと目先の変わっていたことが、時代が進んで一般化したから、わざわざとりあげる対象ではない、という見方ですね。
その一方で、コンピュータが社会的に問題を起こし、法律整備が必要であるといったことを考えると、「コンピュータ問題委員会」といったものは必要でしょうね。
投稿: 酔うぞ | 2011/03/08 18:01
コンピュータ委員会は、法律家にとってコンピュータの使い方を検討するというところから始まって、コンピュータに起因する様々な法現象を検討する方向に発展していましたからねぇ。
酔うぞさんがおっしゃるコンピュータ問題委員会そのものでもあったわけです。
シンポの内容を紙媒体にまとめていったら、また違ったかも。
投稿: 町村 | 2011/03/08 18:12
県立学校とか福祉事務所といった、出先機関では報告書などをネット経由で本部に集中することは何年も前からやっていますが、幸か不幸か例えば学校では先生全員にPCを配付しなかった。
その結果、一部のPCの使える人に紙に書いた報告書などを入力させる、という暴挙がまかり通っていました。
学校に至っては、校内AN工事を情報担当の先生に任せていたりする。
情報担当ならぬ、校内PCメンテナンス担当者だったりします。
さすがにこんな状態をずっと続けるわけにもいかず、「PCを使うか退職するか」と選択をせまる例も出てきました。
何が言いたいのか?と言うと、「紙でも良い」とかやっていると、ありとあらゆる方法でPC化を先送りするのが、人の常だということです。
インターネットの歴史上でも、かなりの強制力を発揮しないと、定着しないものは沢山あって、今も、PC技術で出来ることと実社会により有効な情報提供の手法については、試行錯誤せざるを得ないのです。
ところが、学校にPCは配ったけど、メンテナンスは考えない、人手が掛かるのに人の手配はしない。
といった事を一方でやりつつ、メールが通じないからファックスで、とかやっていると「百年河清を待つ」になってしまいます。
ここらヘンを押し切れるかとどうかが、次の時代に生き残れるかどうかの分かれ目なんですけどね。
投稿: 酔うぞ | 2011/03/08 18:50
つぶすべき委員会は他にあるのにね。
なにも会員はもとより外部からの評価も高いところをつぶすことはない。どういう感性なんでしょう。
金払ってもあんだけ聞きに来るんですよ。みな。
一方では、落語家呼んだり、宣伝したり、無料にしたって、客が来ないシンポジウムがあるというのに。
同じテーマで他がやれば200人は集まりますよ。
要するにやってる奴がいまいちだということ。
集客力なし、中身なし、それなのに存続。集客力あり、内容が良くて外部評価も高いのにおとりつぶし。
判断基準を示して合理的に理由を説明していただきたいものですね。
投稿: 鈴木正朝 | 2011/03/08 22:59
鈴木先生
ありがとうございます。
執行部は、誰も、シンポジウムに来たことがないだろうし、「twitterでインタラクティブなシンポジウム」とかいったって、???な人ばっかりなのでしょう。
もう、「ベンゴシ」は、現代社会との関連性を欠いてしまいましたね。スモウの世界と同じかもしれません。
ゼロワン地域とかいっている間に現代の技術社会に対応できない司法コミュニティができたような気がします。(昔からではありますが、社会として耐えられないくらいにギャップが拡大したような気が)
投稿: 高橋郁夫 | 2011/03/09 08:30
う~ん・・・・
うまい例えがみつからないのですが、IT化が円滑に進んでいくと思っていたわたしは、ドラム缶とでも言いますか、円筒状のものを転がしていくような印象で考えてました。
ところが、学校などを見ていると、抵抗している先生を無視して、全教員にPC配付、事務処理はネットのみ、といった強制が始まりつつあります。
ドラム缶を転がしても、たまにちょっと戻ったりするわけで、それだから力を掛けて押し続けないと転がらない、とイメージしていたのですが、反対する人たちの強力さ加減は、「押しても動かない」でした。
ところが、現実は一気に進むところがあります。
これって、サイコロのような角があるものを転がしていることになりますよね。
無理に押しても、動かないけど時期が来れば、バタンと転がる、といったところが今の日本にはあるかもしれません。
投稿: 酔うぞ | 2011/03/09 14:55
紙から、コンピュータへということが、学校の事務では、円滑に進まなかった。
円滑ではないが、進んでいて、円滑に行かない理由は、紙がいいという強い抵抗があるということでしょうか。
これは、着実に紙からコンピュータという流れは、円滑ではないが、進んでいるということなのでしょうね。
確かに時代は、紙からコンピュータという流れになっているが、その中で、紙の文化の支持者の抵抗は、極めて強いものがあることも認識し、その点もよく考えなければいけないのですね。
投稿: 鈴木 誠 | 2011/03/10 07:21
でもって実は、コンピュータ委員会は、緊急時の通信網確保の役割も果たします。
これは、アマチュア無線家が緊急時に通信隊になるのと同様のものです。残念なことにそのような緊急のミッションが今回発動されてしまいました。
今回、そのような隠れミッションを体験された若い先生方は、今後も何かあったときは、率先して、通信部隊の役割を果たしてくれるかと思います。頼もしいことです。
(なので絶対につぶしてはなりませぬ)
投稿: 高橋郁夫 | 2011/03/16 09:54