nuclear:10条通報とは何?
原発が気になって仕事が手に着かないので、関連情報を調べてみた。
よくテレビで言っている10条通報というのだが、原子力災害対策特別措置法に規定されているものである。
この法律自体は、平成11年に制定された新しいものだが、それもそのはずで、例のJCO事故をきっかけにして制定されたものだ。
JCO事故というのを知らない人は、核物質をバケツで扱っていて事故になった東海村のケースというと思い出すだろうか。臨界事故ということで、日本の原発史上最悪といわれていたが、今回最悪の汚名を返上することになろう。
この法律の10条は以下のような規定だ。
(原子力防災管理者の通報義務等)
第十条 原子力防災管理者は、原子力事業所の区域の境界付近において政令で定める基準以上の放射線量が政令で定めるところにより検出されたことその他の政令で定める事象の発生について通報を受け、又は自ら発見したときは、直ちに、主務省令及び原子力事業者防災業務計画の定めるところにより、その旨を主務大臣、所在都道府県知事、所在市町村長及び関係隣接都道府県知事(事業所外運搬に係る事象の発生の場合にあっては、主務大臣並びに当該事象が発生した場所を管轄する都道府県知事及び市町村長)に通報しなければならない。この場合において、所在都道府県知事及び関係隣接都道府県知事は、関係周辺市町村長にその旨を通報するものとする。
2 前項前段の規定により通報を受けた都道府県知事又は市町村長は、政令で定めるところにより、主務大臣に対し、その事態の把握のため専門的知識を有する職員の派遣を要請することができる。この場合において、主務大臣は、適任と認める職員を派遣しなければならない。
この規定にある「政令で定める基準」とは、同法施行令4条に、以下のように規定されている。
第四条 法第十条第一項 の政令で定める基準は、一時間当たり五マイクロシーベルトの放射線量とする。 2 法第十条第一項 の規定による放射線量の検出は、法第十一条第一項 の規定により設置された放射線測定設備の一又は二以上について、それぞれ単位時間(二分以内のものに限る。)ごとのガンマ線の放射線量を測定し一時間当たりの数値に換算して得た数値が、前項の放射線量以上のものとなっているかどうかを点検することにより行うものとする。ただし(以下略)
さて、この10条通報を受けた主務大臣は、それがさらに異常な水準に該当すると判断すれば、原子力緊急事態宣言を出し、「避難のための立退き又は屋内への退避の勧告又は指示を行うべきこと」の指示を行う。
この指示は市町村長および都道府県知事に対してなされ、災害対策基本法に基づく勧告・指示を首長が実施するのである。
なお、この法律20条には自衛隊の部隊派遣を要請する条文もある。
4 原子力災害対策本部長は、当該原子力災害対策本部の緊急事態応急対策実施区域における緊急事態応急対策を的確かつ迅速に実施するため、自衛隊の支援を求める必要があると認めるときは、防衛大臣に対し、自衛隊法 (昭和二十九年法律第百六十五号)第八条 に規定する部隊等の派遣を要請することができる。
今回、不幸にしてこの法律の仕組みが現実に発動される事態となってしまった。が、ともかくJCO事故の教訓が活かされているとの評価はできるだろう。
参考文献:原子力災害対策特別措置法解説
参考サイト:大阪府の解説
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