law:売り惜しみ買い占め防止法
東北大震災で色々と学ぶことが多いが、法律に限っても知らないことが多いのを再認識させられる。
人気の枝野長官が記者会見でぽろっと述べた、買い占めに対する法的措置、その根拠法は次のような法律の模様だ。
生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律(昭和四十八年七月六日法律第四十八号)
この法律は、生活関連物資の価格の異常な値上がりがあり、その売り惜しみや買い占めが行われるおそれがあるときは、その物資を政令で指定して調査対象にし、指定された特定物資を大量に在庫している生産者や販売者にその放出を命じるものである。
放出というのは、特定の売り渡し先に売れと命じるわけで、民事の売買契約を締結しろというわけだから、その売り主・買い主の契約締結が必要だ。当事者間の協議が整わないときは、首相が裁定により内容を決める。
そして裁定に不満があるときは、一方当事者が他方当事者に訴えを提起して、売り渡し金額の増減を求めることができるというのだが、これは形式的形成訴訟ということになろう。
民訴の教科書では父を定める訴え、共有物分割訴訟、境界・筆界確定訴訟の三つが形式的形成訴訟として知られているが、これに続く形式的形成訴訟だ。
金額の増減なら、非訟事件として立法する方が筋だと思うが、この法律の特性上訴訟手続によらないと違憲のおそれがあると考えたのかもしれない。
なんとも統制経済的な法律で、昭和47年というとオイルショック直後の混乱期だが、忘れ去られた法律というわけではない。あの、武力事態に対する国民保護法でも、129条に、この法律の発動が規定されているのだ。
自衛隊はおろか米軍にも出動をお願いしようという現時点では、武力攻撃をうける事態に匹敵するような危機的状況でもあるわけで、官僚たちの脳裏にこの法律が真っ先に浮かぶのは当然のことかもしれない。
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コメント
いつもブログを拝読しております。
本件ですが、災害救助法第23条の2の適用でもよいのではないかと考えたのですが、いかがでしょうか。
いずれにせよ、法的措置など必要ないことを祈るばかりです。
投稿: Yasuyuki Katsube | 2011/03/21 03:15
「救助に必要な物資の生産、集荷、販売、配給、保管若しくは輸送を業とする者に対して、その取り扱う物資の保管を命じ、又は救助に必要な物資を収用することができる。」という規定ですね。
参考になります。
投稿: 町村 | 2011/03/21 10:33