bankruptcy:破産手続で異議、さて何の手続か?
奈良県大和郡山市の医療法人雄山会「山本病院」の診療報酬詐取事件をめぐり、不正請求分約1億1300万円の返還を求めている大阪市が、市の債権を認めないとする雄山会の破産管財人の決定に対して、近く奈良地裁に異議を申し立てる方針を固めたことが6日、関係者への取材で分かった。棄却された場合、訴訟に踏み切ることも検討している。 同会への債権を継続して主張している近畿の20自治体のうち、異議申し立ての方針を固めたのは、大阪市が初めてとみられる。最も請求額が多い同市の決定が他の自治体の動向に影響を与える可能性もある。
要するに、債権届出を管財人に認めないとされたため、査定を申し立てることにしたということだ。
破産債権の確定については、旧法ではいきなり債権確定訴訟を提起することになっていたが、現行破産法は以下のような査定手続を設けた。
(破産債権査定決定) 第百二十五条 破産債権の調査において、破産債権の額又は優先的破産債権、劣後的破産債権若しくは約定劣後破産債権であるかどうかの別(略)について破産管財人が認めず、又は届出をした破産債権者が異議を述べた場合には、当該破産債権(略)を有する破産債権者は、その額等の確定のために、当該破産管財人及び当該異議を述べた届出をした破産債権者(略)の全員を相手方として、裁判所に、その額等についての査定の申立て(略)をすることができる。(以下略)
査定というよりは異議といった方が分かりやすいのはよいが、この債権確定に関連して異議といえば、別の債権者が届け出た債権について他の債権者が認めないという場合があるので、紛らわしい。不服申立とでもいうのが適当だろう。
上記記事にもあるが、査定の裁判は決定手続なので、それで認められなかったら、正式裁判を申し立てることができる。それが、次の査定異議訴訟。
(破産債権査定申立てについての決定に対する異議の訴え) 第百二十六条 破産債権査定申立てについての決定に不服がある者は、その送達を受けた日から一月の不変期間内に、異議の訴え(以下「破産債権査定異議の訴え」という。)を提起することができる。 (以下略)
こちらも異議の訴えというので、上記記事で管財人の決定に不服を申し立てることを「異議」といってしまうと、もう何が何だか。
(追記)上記債権届け出に関する大阪市側の主張は、以下の記事に基づいているようだ。
読売online:140人に不要な心臓手術…奈良・山本病院
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