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2010/12/28

あなたはWikiLeaksの機密文書公開に賛成ですか?

まずはアンケートに答えてみてほしい。

このアンケートの元ネタはZDNet Japan:WikiLeaks事件をどう考えるか--世界の読者に一斉調査であり、そこでの結果は両質問とも四分の三が「はい」となっている。

matimulogの読者的にどうなのかは上記の通りだが、日本の世論調査をもしやったとすれば8割方が反対になるのではないかと想像している。
WikiLeaksはまだ他人事というか、対岸の火事的な見方をされているが、日本の警察から流出した公安情報については圧倒的多数が反対であり、特に公的なメディアで漏洩結果のネット公開や書籍公開を肯定する意見はほとんど聞かれない。
匿名での意見表明や、ネットのヘビーユーザーの中には、WikiLeaks・公安情報漏洩マンセーという意見も目立つのだが、一般の世論調査をやってみれば、そんなことはないだろうと思う。

公安情報漏洩については、情報提供者となった個人のプライバシーが冒されるという観点が強調され、それ自体は確かに反論の余地のない問題点なのだが、その多くは日本に住む外国人であり、それも警察的にはテロリストと接点がありそうだということで調査対象にされている人々である。
普段、在日本外国人が日本社会のガンだとでもいいそうな連中に限ってネットの情報漏洩ケシカランと叫ぶのだが、そんな連中が在日本外国人のプライバシー保護を重要視しているとはとても思えず、要するに建前として使っているだけであろう。

それに、公安情報漏洩のおかげで、警察が在日本外国人をテロリストと接点の有りそうな存在とみなして調査してきたということも明らかになったわけだが、そのことの問題性も俎上に乗せる必要がある。在日本外国人が、外国人(それも中東・アラブ系)というだけで調査対象とされ、しかも漏洩されればプライバシーが大きく傷つけられる情報まで集められているという事実は、うすうすは認識されても、今回の公安情報漏洩のおかげでハッキリしたことである。
こうした調査の方法は、治安維持に有効であることは多分認められるが、それと引き換えに調査対象者のプライバシーは(漏洩しないとしても)侵害されており、しかもその対象者の絞り込みは差別と評価すべきカテゴリー付けに基づいている。
このことは議論の余地がある問題だと思うが、日本では、治安維持のための措置が最優先されて当然という雰囲気がある。そのような雰囲気の中では、WIkiLeaksの問題もこれを評価する意見など出せないであろう。

もう一点、否応なく調査対象者とされている人々とは異なり、積極的に警察に内通し、場合によっては報償費をもらって情報提供している人々も漏洩した中に含まれている。これらの人々は、要するにスパイであり、密告者であり、密告される人達にとっては警察の犬とでも言われる人々である。
コミュニティの中にスパイがいれば、嫌われるのは当然であり、そのことはナチス崩壊後のヨーロッパでも東ドイツ崩壊後のドイツでも、裏切り者狩りが繰り返されてきた。
ところが、日本では、こうした警察権力への密告者に対する評価は一般に低くない。情報を渡す相手が警察ではなくて一般社会だったりマスコミだったりすると、これはもう裏切り者扱いされて陰に陽に苛められるのだが、警察のスパイは必ずしもそのような扱いを受けない可能性がある。

早稲田大学がある集会の参加者名簿を任意で警察に提出し、そのことがプライバシー侵害だとして訴訟になったことがあった。この事件は最終的に最高裁でプライバシー侵害が認められたという点で、画期的なのだが、世間の評価は必ずしも最高裁と同じではない。通信の秘密とか特別の事情がない限り、警察の治安維持を目的とする情報収集に任意で協力するのは善良な国民の当然の態度だと、思っている人が大多数であろう。

要するに、コミュニティの和こそは最重要課題だが、そのコミュニティも上位のコミュニティたる日本社会の秩序には負けるということである。

もちろん、世間の反応は色々な要素が絡んで一様ではない。尖閣ビデオの漏洩事件では、ビデオの素材たる漁船抵抗事件の扱いをめぐる民主党政権のやり方に極めて低い評価があったので、マスコミ的にも一般社会的にも漏洩者が悪者とするより漏洩を秘密侵害だという政権(特に官房長官)に対する批判が大きくなった。
そのような特殊事情がなければ、お上の秘密を暴露することは無条件で悪と、そのように考えるのが基本的な態度である。

そんな日本社会では、WikiLeaksの機密文書公開に脊髄反射的にケシカランという外務大臣がごく自然に存在し、ネットのヘビーユーザーに限られない世論調査をやってみれば、ZDNetの調査結果とは全く異なる結果が生まれるのではないかと、そう思うのである。

なお、上記のZDNet世論調査では単なる賛否にとどまらず、アクセス制限への賛否やホスティング制限への賛否も問われており、その内訳はすこぶる興味深い内容となっている。是非、直接参照してほしい。

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