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2010/12/02

arret:時機に後れた攻撃防御方法として却下された事例

知財高判平成22年11月30日PDF判決全文

一審の弁論準備手続中に追加された主張が、時機に後れた攻撃防御方法とされたようである。

控訴審では、もちろん控訴審での提出が適法かどうかを判断するのだが、一審においての判断が正当かどうかを念のため判断している。

事案は、原告住友重機械工業と被告JFE、日立造船等が、合弁会社プランテックを設立したが、詳細は不明ながら経営権をめぐって争いとなったようで、原告が競業避止義務を負わないことなどの確認を求めて提訴し、これに被告らが反訴を提起した。

弁論準備手続が第10回まで行われたところで、受命裁判官が次回期日から和解協議に入ることにし、またそれまでで主張立証が足りていることを両当事者とともに確認した。ちなみに原告は第8回弁準にて陳述した準備書面で主張立証は尽くしたと述べている。
ところが、第10回期日後に原告が提出した準備書面で新たな主張がなされ、受命裁判官はこれを和解協議が続いている間は陳述させないが、後に補充主張立証の機会を与えるといったらしい。

そして和解協議は続いたが、第16回弁論準備期日で「当事者双方に対し,主張立証の補充があれば,平成21年11月10日までに提出すること」を命じた。

弁論準備手続はこれで終結し、第2回口頭弁論期日が開かれたところで原告は未陳述の準備書面を陳述して新たな主張をしたというもののようである。

裁判所は、新主張を、訴訟を完結させるものとして時機に後れた攻撃防御方法に当たると判断した。

控訴審の本判決も、時機に後れた攻撃防御方法に当たるとした判断を是としたが、その理由は、既に第10回弁論準備期日までで主張立証は尽くされていることが共通認識になっていたことから、その後に提出された新主張は時機に後れているというにある。
受命裁判官が「当事者双方に対し,主張立証の補充があれば,平成21年11月10日までに提出すること」を命じたのは,第10回弁論準備手続期日までに提出されなかった新たな主張やそれに関する証拠が提出されることを許容する趣旨ではないと解すべきだという。それではどんな趣旨なのかと疑問が残る。
そして、新主張には吟味して反論をさせる必要があるから、第2回口頭弁論期日では終わらず、訴訟の完結は遅延するとも述べている。

この事件では、口頭弁論における証拠調べを全くしないで、書証のみで判断を下せる事案だったので、弁準後の口頭弁論期日で直ちに結審していた。この場合なら、確かに新主張は完結を遅らせることは間違いない。

しかし、この判断枠組みなら、いわゆる詰問権が成立するような場合は、ほとんど、時機に後れた攻撃防御方法ということになりそうである。そしてそれは世に言われる実務のあり方とは異なり、実質的に弁論準備手続終結の効果として失権効を認めるのに近づくことになる。

さらに注目は、弁論準備手続終結前に提出した新主張なのに、それでも時機に後れた攻撃防御方法という評価をしてしまうということである。確かに157条は弁論準備手続に準用されているので、弁論準備手続の中での時機に後れた攻撃防御方法ということが考えられないわけではない。しかしその判断基準は、建前としては集中審理を可能にするために主張立証を提出し整理する場であって、攻撃防御方法の提出という手続保障の中心的な機会なのだから、故意またはそれに近い引き延ばし意図を持って終結を遅くする主張の出し方を排除するのに限られるべきではないか。少なくとも和解協議に入ったから、それ以後の新主張は許さないとは解すべきでないし、和解協議に入る前の段階での両当事者・裁判官の意識が主張立証を尽くしたというものだったとしても、その後の事情変化で追加主張をすることは広く認められるべきだろう。そうでないと、本来は弁論準備手続終結後でも許されるという建前の新主張が、弁論準備手続終結前に失権させられることとなり、相当ではない。

ということで、具体的事実関係が今ひとつ明確でないため事案にあった批評ではないかもしれないが、判決文から現れている事実関係からすれば、問題のある判決だといわざるを得ない。

cf. 一審判決:東京地判平成22年3月24日(判決全文PDF)
その紹介ブログ企業法務戦士の雑感「あっと驚く判決」このブログを読むと、事実関係は分かりやすくなる。

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