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2010/10/08

lawyer:突然ですが、弁護士を辞めます

私の話ではない。私はそもそも弁護士ではないので誤解なきよう。

一日一冊弁護士の読書日誌プログの作者の話である。

突然ですが,弁護士を辞めることにしました。   ・・・理由ですか? もちろん,この業界のお先が「真っ暗」だからですよ。案件は減るわ,合格者はバカスカ増えるわ,執行部はアフォだわ,司法書士は幅をきかせるわで,もう業界全体が沈みかけの船みたいな状態です。こんな船からは一刻も早く逃げ出さなければならない,そう思ったからです。優秀で嗅覚の鋭い方は,もうとっくに逃げてますよ。

ということなのだが、弁護士はある意味でヤメることができない。法曹資格は放棄することができないから、法律家の代名詞としての弁護士の資格はなくなるわけではない。
これに対して職業としての弁護士は、弁護士会に登録しないと行うことができないので、その意味でヤメることができる。

弁護士業界は、この方の書かれているようにお先真っ暗なのかどうかだが、これは弁護士職が何を目的としているかによって異なるし、その人によっても異なる。
弁護士になることは、法曹資格がある限り、そして懲戒歴などで登録拒絶されるような事情がない限り、可能である。その意味で「職に就く」ことが困難ということはない。
しかし、今新人弁護士の多くが直面しているように、既存の法律事務所に雇われて給与をもらうという意味での就職は、かなり困難があるようだ。また、安定した給与を約束されている場合を除き、弁護士業は顧客の法律事務を処理することで報酬をもらうので、その仕事があるかどうかが問題となる。仕事がなければ、この方の書かれているような「お先真っ暗」ということになる。

従って、当然のことだが、独立自営企業としてやっていくのが供給過剰の状況下ではお先真っ暗というのと同様の状況が、弁護士界にもいえるわけである。

では兼業農家ならぬ兼業弁護士になればよいではないかと、テレビでも芸者弁護士とか色々出てくるではないかと、そんな気もする。
しかし、弁護士として登録することは、趣味ないし片手間ないし副業としてやるにはキツイものがあるのも事実だ。弁護士会の会費は相当に高い。豊崎先生のブログには次のように書かれている。

実際、弁護士会費ってかなり高いんですね。私のように登録10年を超した会員であると、日弁連通常会費 14,000円、同特別会費 5,600円、東弁会費 18,500円の月額合計38,100円で、ちょっとした学費並みです。
これに対し、登録2年目までの新人は、従来、東弁会費のみ9,500円に減免されており、合計が29,100円でしたが、今回の改正により、東弁会費が5,000円まで軽減され合計が24,600円となりました。

月額38100円×12ヶ月で、年45万円の負担である。
つい先日も、大阪弁護士会で75歳の行方不明の弁護士さんが、会費滞納で退会命令を受けたばかりである。→ニュース参照

また、弁護士にはプロボノ活動が事実上義務として課され、研修が義務として課され、公益的な役割が強く期待されている。首都圏や関西では弁護士の数が多いので、一人一人にかかる公的活動の負担はあまりたいしたことはないかもしれないが、一つの県で弁護士が20〜30人程度しかいなければ、無料法律相談や扶助にかかる事件、起訴前弁護や公判の国選弁護などの刑事弁護、その他、弁護士会務が一人一人に重くのしかかる。
こういったコストを負担しつつ、弁護士業に必要な事務所を構えて人を雇って業務を遂行しようと思えば、その金銭的なコストを払った上でなお生活が立ちいくような報酬を得なければならない。それだけの仕事はない、というのが上記弁護士の結論であろう。

しかしながら、他方で弁護士に期待されるリーガルサービスは、法律扶助にせよ無料法律相談にせよ、刑事弁護にせよ、司法過疎と呼ばれる田舎はもちろんのこと、都市型公益事務所の必要が叫ばれている都会でも、必要はますますある。企業社会におけるリーガルサービスの必要も、潜在的にはある。

この需給ギャップというかミスマッチをどう解決していくかについて、政治は無策と行ってもよい。司法制度改革は一つの処方箋だったはずだが、法曹人口拡大だけではミスマッチを解消するに至らず、司法支援センター(法テラス)も未だ不十分である。
医療関係者の不足に対して診療報酬や薬価基準などで対処し、あるいは引退した医療関係者の復帰を容易にするなどの努力が行われているが、とりあえず診療報酬に相当する国選弁護の報酬や法律扶助の報酬などを引き上げることが望まれる。
それだけでは足りないだろうが、その他の対策は実現が難しい。法テラスを量的質的に激増させることは、弁護士の独立性と緊張関係に立つ可能性もある。

企業コンプライアンスは本質的に法務であり、法律家のより一層の関与が必要な場面だが、そしてこの部分は立ち遅れているところだが、直接的に法律家の関与を義務付けるのも難しいであろう。
例えば、内部統制関連で、法律家による法務監査を義務付けたりといったことは、ただでさえ経営が厳しい中小企業層に負担を強いることになるだけで、かなり実現困難ではないだろうか。

結局、時間をかけて、法律家による法務の領域を拡大していくしかないように思われる。従って当面は、お先真っ暗な状況に追い込まれる弁護士もある程度は出てくるのも仕方がないかもしれない。

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