jurist:検察官適格審査会
前田検事のような事件があると、さすがにこの制度は機能するのかと思わざるをえない。
法務省HPより
主管省庁及び庶務担当部局課
法務省大臣官房人事課
電話番号
03-3580-4111
根拠法令
検察庁法第23条
所掌事務
1 検察官が心身の故障,職務上の非能率その他の事由に因りその職務を執るに適しないかどうかを審査し,その議決を法務大臣に通知する。
2 審査会は次の場合,検察官の適格性について審査を行う。
(1)すべての検察官について3年ごとに定時審査を行う場合
(2)法務大臣の請求により各検察官について随時審査を行う場合
(3)職権で各検察官について随時審査を行う場合(注)
委員
〈定数〉11人
国会議員6人(衆議院議員4人,参議院議員2人),最高裁判事1人,日本弁護士連合会会長,日本学士院会員1人,学識経験者2人
〈任期〉2年
現在の委員は、以下のとおり。
松尾浩也(会長)
宇都宮健児(会長代理)
(衆議院議員)
高山智司
吉田泉
山花郁夫
平沢勝栄
(参議院議員)
白眞勲
脇雅史
(最高裁判事)
堀籠幸男
(学識経験者)
井上正仁
原田明夫
この組織は年に1回ないし2回程度開かれている。
一番最近に開かれたのは、平成22年2月で、その時にも13人の検察官について一般から不適格との申立てがあったが、門前払いすることを決めている。
類似の組織として裁判官弾劾裁判所というのがあるが、この弾劾裁判を開始するかどうかは一応別組織である裁判官訴追委員会が判断することになっているのに対し、検察官適格審査会は自ら取り上げるかどうかを決定する仕組みである。
今回のような逮捕されてしまう検察官が現れたときに、この組織に適格審査を申し立てる人が出てくるのではないかと思ったら、もう既にいた。
大阪市の文筆業者、前特捜部長らの罷免求める 検察官適格審査会申し立て
郵便不正事件で大阪地検特捜部の捜査手法が問題になったことを受けて、大阪市淀川区の文筆業、高野和郎さん(73)が22日、捜査を指揮した大坪弘道・前特捜部長や主任検事だった前田恒彦容疑者ら検察官4人の罷免を求め、検察官適格審査会に審査を申し立てる。
この機関についての評価は、社民党前衆議院議員の保坂展人さんが書いているブログ・エントリが参考になる。
これによれば、まず事務局が法務省に置かれているので、会議を開くかどうかと開く準備をするのは法務官僚ということになる。一般の審査申立てを取り上げるかどうかを決めるのは法務大臣官房人事課だそうで、チェックされる人の人事を決める組織がチェックするかどうかを決めているわけである。
またこの組織の年間予算は、ななんと16万円。私の某機関から貰っている年間旅費より安い。委員が11人いるので、一人当たりは1万5千円にも満たない。年1回会議を開いて、会議資料をコピーし、謝金1万円と交通費を支払ったら終わりという予算規模であり、つまりはそれしかしないということである。
実際、50年間で不適格認定となったのは行方不明となった副検事1人だけという体たらくであり、検察官から言わせれば、これこそ検察官全員の適格性を示しているということだろうが、前田検事とその上司達が目の前のニュースに取り上げられている現在、ちゃんちゃらおかしいのである。
これに比べれば、裁判官弾劾裁判所の方がよほど機能していると評価できよう。
上記の委員名簿を見るに、立派な見識があるような言動を普段している人がたくさん含まれているのだが、この人達の動向もまた興味深い。
普段事務局に任せきりにしている委員たちとか、充て職で就任した委員たちとか、自分がその委員になっていることすら認識しているかどうか怪しいもので、自ら何か行動しようとしてもどうすればよいのかさえ分からないという状況なのかもしれない。
それでも、こんな事件が起これば、何かしなければと思わないものであろうか?
この機関の出来ることは、前田検事一人がおかしかったという構図作りのお先棒に使われることくらいかもしれないが、検事総長、次長検事及び検事長についても、今回の事件に対する対応を素材として、「職権で各検察官について随時審査を行う」権能を発揮して、「職務上の非能率その他の事由に因りその職務を執るに適しない」かどうかを審査すべきではないか?
また、静観しかしない法務大臣も、「法務大臣の請求により各検察官について随時審査を行う」との規定を活用しようとは思わないものであろうか?
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