jugement:美術鑑定書に絵画の縮小コピーを付けるのは著作権侵害
本日の日経新聞朝刊に、三宅さんが詳しい解説記事を載せていた。
その中には、下記のようなコメントも載っている。
素晴らしい時代となったもので、新聞記事の切り抜きも実に楽になった。
それはともかく、この判決で認められた賠償金額は6万円。差し止めは原告が求めていないからか、認容されていない。
この結果だけから考えてみるなら、結果は妥当かなという感じもする。
著作権法は、複製権を著作権者の許諾にのみかからしめていて、許諾がなければ例外規定に引っかけざるを得ないのだが、民法の相隣関係にある以下のような規定を土台として、著作権法にも償金付き法定許諾のような制度を導入するべきだと考える。
民法第二百九条 土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。ただし、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない。
2 前項の場合において、隣人が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。
現行の著作権法には、そのような法定の利用権規定が不足しているので、特にこの事件のように利用を求める側と著作権者側とに別の紛争があるような場合には、合意に至らず、正当な使用でも認められず、結局著作物の利用が妨げられる結果となる。
あと、著作権法の例外規定は限定解釈するものという見解が強いようだが、立法が欠けている部分で他の明文規定の趣旨が共通するものに関しては、類推適用をすることに妨げはない。これは著作権法であっても何法であっても同じことである。
そういうわけで、この判決の結論には賛成するが、法律構成として複製権侵害とするのは差し止めの問題にも広がる以上妥当でない。カタログ等の例外規定を類推適用し、許諾なき利用を認めつつ、不当利得ないしは不法行為による一定の額の金銭支払いを命じるというような解釈論が望ましい。
| 固定リンク
「法律・裁判」カテゴリの記事
- Arret:欧州人権裁判所がフランスに対し、破毀院判事3名の利益相反で公正な裁判を受ける権利を侵害したと有責判決(2024.01.17)
- 民事裁判IT化:“ウェブ上でやり取り” 民事裁判デジタル化への取り組み公開(2023.11.09)
- BOOK:弁論の世紀〜古代ギリシアのもう一つの戦場(2023.02.11)
- court:裁判官弾劾裁判の傍聴(2023.02.10)
- Book:平成司法制度改革の研究:理論なき改革はいかに挫折したのか(2023.02.02)
コメント