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2010/06/19

mayor:専決処分?

毎日jp:阿久根市長:専決処分を“乱発” 議員報酬日当制など専決

そんな馬鹿なというニュースで、これが出来るなら名古屋の河村市長も市議報酬半減の条例を「専決」すれば良さそうだが、そうはいかない。

地方自治法には、以下のような規定がある。


第百七十九条  普通地方公共団体の議会が成立しないとき、第百十三条ただし書の場合においてなお会議を開くことができないとき、普通地方公共団体の長において議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき、又は議会において議決すべき事件を議決しないときは、当該普通地方公共団体の長は、その議決すべき事件を処分することができる。
 2  議会の決定すべき事件に関しては、前項の例による。
 3  前二項の規定による処置については、普通地方公共団体の長は、次の会議においてこれを議会に報告し、その承認を求めなければならない。

第百八十条  普通地方公共団体の議会の権限に属する軽易な事項で、その議決により特に指定したものは、普通地方公共団体の長において、これを専決処分にすることができる。  2  前項の規定により専決処分をしたときは、普通地方公共団体の長は、これを議会に報告しなければならない。

記事で触れられている「専決処分」という言葉は180条にしか出てこないので、同条の適用による「処分」という理解を市長と毎日新聞はしているものと思われるが、同条の要件は「軽易な事項」であることと「その議決により特に指定したもの」であり、あらかじめ議会が指定した事項に限られている。
阿久根市長が市議の報酬についての条例を議会が市長の専決に委ねる議決をしているとは思えないので、180条の「専決処分」は適用されない。

すると、179条の「処分」ということになる。記事でも「地方自治法は緊急を要する際に、首長の専決処分を認めている」とあるので、これは179条の「議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき」に該当するとして行われた処分を指すのであろう。

その場合、同条3項による議会の承認が必要となり、もし承認が得られないのであれば、法律に規定はないが、処分の効力は維持できないであろうから、改めて議決によるのか当然に失効するのかはよく分からないが、ともかく市長の思惑は通せないことになる。
ただし、議会側が毅然としてNOと言うことが出来ず、ごちゃごちゃ文句は言うが正面切って反対の議決が出来ないのであれば、話は別である。市長として議会が腰砕けになることを見込んでいるというのであれば、それはそれで正常な政治的プロセスの一環ということになりそうだ。

いずれにしても、こういう市長が出てきても困らないように、法律はきちんと作られており、後はそれを使うかどうかが、阿久根市民と市議たちに委ねられているのである。

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コメント

記事からでしか判断できませんけど、市長が「専決処分」というなら、争わない限り専決処分になるんですかね?
また、179条の処分だとしても、この勝負市長の勝ちだと思います。
①議会が反対の議決をできないのであれば、そのまま処分として適用される。
②議会が反対すると、市長としては「ほら、やっぱり議員は自らの保身しか考えてない」と主張することができ、市民を味方にできる可能性が高まる。
市長が降板しない限り、市長優位の状況は変わらないんでしょうね。

投稿: 603 | 2010/06/19 18:19

権力の源泉は、一応、阿久根市民の意思にあるのであれば、衆愚と言われようとなんと言われようと議会が負けるのは仕方がないですね。
ただし、こういうときこそ少数者の権利を守れるのが司法であり、賃金を払ってもらえない部長さんは強制執行、刑事告発などの手段を尽くすことができるでしょう。
また、専決?処分の無効を理由に議員報酬の支給を求める訴えを議員さんが起こすということもありうるし。

そうした手段を尽くさないで文句だけ言っているのであれば、市長の行為は結局正当だと認めると解釈されても仕方ない。

投稿: 町村 | 2010/06/19 18:56

法律はきちんとつくられている。と述べられていますが、私は日本の法律は相当抜けていると思います。法律の主旨に反した場合には、効力を失う、とか、行為者は罰金いくらに処する、とかまで明文化されていて、きちんと作成されている。といわれるのではないでしょうか。オーストラリアで契約をしたことがありますが、この条文に反した場合は契約が無効になるとか、之により損害を受けた場合はいくら支払うとか具体的な数字まで相手の弁護士と協議して契約分を作成しました。また、結婚する時に、離婚をする場合を想定してその場合には財産の処分の仕方まで詳細具体的に契約文書を作成して結婚した。と言う知人もいました。それらを見てくると日本の契約及び法律文はいかようにも解釈できる文書だと思います。故に役人の勝手な解釈がまかり通ることになっているのだと思います。典型的なのは憲法第9条による、自衛隊の存在でしょう。

投稿: bakudream | 2010/06/19 20:03

法律がすべてを見通すことが出来ないのは、日本だけじゃありませんから。
というか日本の法律は基本的なところも解釈論もみんな海外からの輸入品です。
お説のオーストラリアは別系統ですし、確かに日本の契約より細かいという特長があると思いますが、それは法律の問題ではなく契約締結慣行の問題で、要するに契約当事者が選んだことですから。

投稿: 町村 | 2010/06/19 20:19

 首長と議会が対立することはままあって、それを解決するために、「解散」と「不信任」という仕組みがあるんですが、何度、議員選挙しようが、首長選挙をやろうが、議会と首長が一致しないことはある。選挙方式が違うのだから、結果が一致しないことは珍しくもない。
 これをなくすには、大統領制を止めて、議院内閣制にするしかないでしょうね。

投稿: 井上 晃宏 | 2010/06/19 20:44

結果が一致しないのも、現在の東京都のように良く働くことはありますし、暴走気味の知事に議会が抵抗する大阪府というのもなかなか面白い現象です。河村市長も、ある意味しかり。チェック&バランスの想定内でしょう。
阿久根市長のケースは、少し極端すぎますが。

投稿: 町村 | 2010/06/19 22:36

当該市長氏は、「抵抗勢力である議会は招集しない。市政は専決処分で行う。」という主旨の事を、公に堂々と仰って居られるようですから、市長氏としては最初から議会の事後承認を求める(得る)意図は無いのではないでしょうか?
それが適法か否かという話では無くて、市長氏本人の主観としてですよ、勿論。

投稿: 秘匿希望。 | 2010/06/20 09:40

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