forensic:電子メール破棄は検査妨害
日本でも、自らに不利な内容の電子データを破棄すると違法としてサンクションが課せられる場面が明らかになった。
金融庁や捜査関係者らによると、09年6月~今年3月、金融庁が同行のリスク管理状況などを調べるため検査に入った際、役員らがサーバーに保管されていた電子メールを意図的に削除した疑いが持たれている。削除されたメールには、商工ローン大手「SFCG」(旧商工ファンド、破産手続き中)から債権を買い取った際、出資法が定める上限金利29.2%を上回る45.7%の金利を手数料として受け取っていたことを示す内容などが記載されていたという。捜査2課は、こうした違法な取引を隠ぺいするため、元役員らがメールを削除した疑いがあるとみている。
同行の西野達也社長は11日午後、報道陣に「検査妨害はあってはならないことだが、メールの削除に関与したのは役員を含む数人。木村前会長はかかわっていない」と説明した。
さてアメリカでは、民事訴訟について、電子データのディスカバリルールが整備され、実務上も豊富な事例がある。この点については、下記の書籍を参照されたい。
この本の中で、現在東大情報学環の助教をしておられる松前恵環さんが、企業コンプライアンスとe-discovery、そしてデジタル・フォレンジックの関係について論じている。
関係者は是非、その論文の教訓を読み取っておくべきである。
デジタル情報は改ざんが容易だとよく言われるが、悪事の隠蔽は必ずしも可能でない。情報自体を削除しても、削除した痕跡は残るし、情報自体もバックアップされていたりサーバに残っていたり、はたまた削除操作をしてもインデックス情報が消えているだけで残っていたりする。
とりあえず自分の目の前から消えれば存在しなくなったと思いこむのは、小学生か、幼稚な中学生レベルなのである。
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コメント
本件で削除した方は、いろいろな意味で「残念」なタイプだとは思います。が、前からアメリカのディスカバリルールについて釈然としない気がしてはいます。確かにこの段階で話がまとまり、トライアルまで行かない事が多いそうですが、日本でも通常は「示談交渉破綻→訴訟」か余程最初からこじれている場合「弁護士会照会→訴訟」なので、言葉・役割が違うことは理解した上で、日本の慣習?もそれなりに役には立っているとは思います。それより、最近、裁判官がちょこちょこ意見を言って当事者に準備書面や証拠で裁判官の疑問を解消しようとしていおり、結果、訴訟上の和解に繋がっていると思います。旧法時代ですが、私が担当していた事件(東京地裁)で裁判官が意見を言ったら「高名な弁護士」がいきなり「忌避の申立て」をしたのを見て、「裁判官より格が高い弁護士」って本当にいるんだとびっくりしました。あ、依頼人は置いてかれてましたが(世間的にも有名な事件でかなり複雑ではありました)。
投稿: はる | 2010/06/12 21:47