Arret:建築瑕疵と居住利益
建て替えが必要なほどの欠陥建物を建てた建設会社が、購入者に対して、建て替えが始めるまで居住したことから購入者にも利益があったので、立替費用の賠償からその住んでいたことの利益分をまけろと主張した。
最高裁はどう判断しただろうか?
最高裁は、宮川裁判長の法廷で、この居住者の利益との損益相殺は認められないとした。
建物が倒壊の恐れが具体的にあるなどの場合には、居住したことをもって損益相殺の対象とすべきでないというわけだが、それ以上の理由は記されていない。
この点の本音の理由は、宮川裁判長の補足意見に表れている。
建築瑕疵の存在が明らかとなるのは時間がかかり、建築会社が争えばなお長期化し、その間、購入者は欠陥建物に居住せざるを得ないのだから、そのやむを得ず住んだことを利益があったとすれば、不誠実な建築会社がごね得するのを許すことになるという。
| 固定リンク
「法律・裁判」カテゴリの記事
- Arret:欧州人権裁判所がフランスに対し、破毀院判事3名の利益相反で公正な裁判を受ける権利を侵害したと有責判決(2024.01.17)
- 民事裁判IT化:“ウェブ上でやり取り” 民事裁判デジタル化への取り組み公開(2023.11.09)
- BOOK:弁論の世紀〜古代ギリシアのもう一つの戦場(2023.02.11)
- court:裁判官弾劾裁判の傍聴(2023.02.10)
- Book:平成司法制度改革の研究:理論なき改革はいかに挫折したのか(2023.02.02)
コメント