event:司法修習生に対する給費制維持を訴える
日弁連主催の市民集会が予定されている。
市民集会「司法修習生に対する給費制存続を!-明日の「権利の守り手」を育てるために-」
日時 2010年5月18日18時より
場所 東京弁護士会館2階 クレオ
申し込み不要、無料
主な出演者
山口 二郎氏(北海道大学教授)
宇都宮 健児(日本弁護士連合会会長)
笹森 清氏(中央労福協会長)
湯浅 誠氏(反貧困ネットワーク) ほか
この問題に、一般市民の賛同を得て国民的な運動に拡大するには、弁護士がいかに公共的な存在で、市民のために不可欠な権利利益の守り手かということを納得させることが必要だ。
もともと弁護士は、その活動から報酬を得て事務所経営を維持しなければならず、営利的な行動原理を無視することができない。そのことと公共的な存在であることとがアンビバレントな関係になっている。
そしてともすれば、弁護士業の営利的な面が市民の弁護士イメージに大きく影響していることも否めない。これは現代日本だけの特殊事情ではなく、アメリカはもちろんイギリスでも、弁護士の風刺画ではたいてい依頼人の生き血を吸って肥え太る弁護士というイメージである。
最近の日本では、例の過払い金回収業務に不当な報酬を得ているとの報道や、楽な業務で報酬が見込まれる過払い金請求には熱心だが、多数債権者との粘り強い交渉を必要とする債務整理と生活再建が求められると「地元弁護士にお願いしろ」といって手を引いてしまう都市の弁護士たちの問題などが、イメージ悪化に拍車をかけている。
これらは行き過ぎた事例であったり、デフォルメされたイメージだったりするが、そうしたイメージを払拭しつつ、正当な、場合によっては高度な技能に基づくサービスに適うだけの高額な報酬を得て業務を行うことの理解を一般市民に求めることは、難しい仕事だと言わざるをえない。
ちなみに、北海道大学法科大学院長は、北海学園大学法務研究科長、札弁会長と連名で、司法修習生への給費制存続を求める声明を出している。その中に引用されている衆参両院附帯決議を、ここでも引用しておこう。
「給費制の廃止及び貸与制の導入によって、統一・公平・平等という司法修習の理念が損なわれることのないよう、また、経済的事情から法曹への道を断念する事態を招くことのないよう、法曹養成制度全体の財政支援の在り方も含め、関係機関と十分な協議を行うこと。」
| 固定リンク
「学問・資格」カテゴリの記事
- ChatGPTでレポートは書けるか? 民訴一行問題でやってみた。(2023.01.23)
- 日本評論社が、Kindle本の半額セールを1月19日まで実施中(2023.01.07)
- Book:博論日記(2022.09.01)
- Book:文系研究者になる(2022.08.31)
- Book:リベラルアーツの法学(2022.04.24)
コメント
下記は私が朝日新聞の「声」に投稿した文章です。字数が600字に制限されていますので詳しくはかけませんでしたが、同じように学費がかかるのになぜ弁護士だけ税金で学費を補助せねばならないのかぜんぜん理解できません。
例として医師の場合を挙げましたが、文・理の分野の研究者を目指す人でも研究者になるまでには司法修習生と同様な金がかかるし、また同様に職業を通じて社会公益に尽くすという意味では弁護士と甲乙つけがたいでしょう。
投稿文
>11月からの廃止が決定している司法修習生給費制の見直しを民主党が検討しているそうだ。廃止法案は6年前に民主党も賛成して成立した。それを状況が変わった訳でもないのに、弁護士らの根拠皆無の反対を認めて見直すと言うのは筋が通らない。
給費制がなくなっても入学金授業料は無料、月に20万以上の無利子奨学金を全員が得られる等、修習生は非常に恵まれている。普通の学生は高額な入学金授業料を払い、奨学金も有利子が普通で数万円ほど。
司法修習に多額の費用がかかると弁護士会は主張しているが、例えば医師の養成には、特に私立医大、司法修習とは比較にならない莫大な金がかかるが全て自己負担、奨学金は前記の通りだ。
弁護士は公益の為の存在と自称しているが、そういう者はごく少数で大部分は私利の追求が主目的。客が多くて儲かる大都会に弁護士集中の一方で無弁護士県があることがその証拠。医師は人間にとって不可欠の職業だが、医師を含めた他の職業とも違って弁護士などは元々無用のものであり、弁護士養成だけに多額の税金を支出するのは不公平で納得できない。
給費制を望むなら、欧米のように殆ど全ての教育の無料化を実現してからにすべきだ。OECD国中で教育費の公的負担が最低である日本で、入学金や授業料が無料である事が非常な恩典である事を国民に感謝こそすれ給費制復活を運動するなどとんでもない事である。<
ともかく弁護士達は自分を何様と思っているのだろう。
投稿: 井上信三 | 2010/09/19 00:42
井上信三さん、コメントを有り難うございます。
ご意見が朝日新聞に載ると良いですね。
ただ、私は弁護士の公益性を認めているので、その点を認めないご意見には賛成することができません。
投稿: 町村 | 2010/09/19 08:46
私が弁護士の公益性を認めていないと決め付けていらっしゃいますが、私の文章をまともに読んで理解されたのですか。弁護士の「公益性」はちゃんと認めていますがね。
そういうでたらめな感想を書くとは、わずか600字足らずの私の文章もをまともに読んでいない事が明らかです。そういうことでよく他人の批判ができますね。
投稿: 井上信三 | 2010/09/19 19:40
ずいぶん攻撃的な書き方ですが、「弁護士は公益の為の存在と自称しているが」で始まる一文を読むと、とても公益性を認めているようには読めません。
井上信三さんは弁護士がどういう点で公益性があると認められるのでしょう?
投稿: 町村 | 2010/09/19 20:00
>「弁護士は公益の為の存在と自称しているが」で始まる一文を読むと、とても公益性を認めているようには読めません。<
新聞投稿文の12行目に「弁護士は公益の為の存在と自称しているが、そういう者はごく少数で」と私は書きましたが、それは弁護士の「公益性を認めている」から書いたものです。それでも「公益性を認めているようには読めません」おっしゃるのであれば、何おか言わんやであります。
>井上信三さんは弁護士がどういう点で公益性があると認められるのでしょう?<
弁護士が自称しているとおりであります。証拠として日本弁護士連合会と滋賀県弁護士会のHPに発表されている文章を引用します。
日本弁護士連合会の発表文抜粋
(略)弁護士は、(略)単に私利や感情を満足させるのではなく、 『権利を守り正義を実現し』 なければなりません。 法律家は 『「権利の守り手』 です。給費制によって、すべての法律家の資格は国民の負担において与えられたもの、となります。『法律家の仕事の公共性・公益性ゆえに』 国民が法律家を育てるのであり、給費制は法律家に対し 『公共心と使命感』 を求める制度でもあります。
滋賀県弁護士会
田口勝之会長は「弁護士がお金にならない 『公益活動』から遠ざかり、社会の矛盾や問題を解消する場がなくなる恐れがある。弁護士は国民の権利の守り手。略
同じく日本弁護士連合会の発表文抜粋
2004年の裁判所法「改正」に際し、衆参法務委員会附帯決議は、「経済的事情から法曹への道を断念する事態を招くことのないよう」関係機関が十分に協議をすることを求めていました。多くの修習生が多額の借金を負担していること、法律家を目指す人が減少していることなど、当時は予想していなかったことが、現実に起こってきています。
給費制は現在廃止されてませんから、修習生は年に300万以上の「給料」をもらっています。それでも
>多くの修習生が多額の借金を負担していること、
というのは全く理解できない事です。弁護士の主張は「給費制度が廃止されると借金が生ずる」だったはず。それが、年に300万円以上もの給料をもらっているのに「多くの修習生が多額の借金を負担している」というならば、300万円もの給費を受けていながら、なおかつ莫大な借金を背負っているというなら、借金を背負い込む理由は「給費制度が廃止される」という弁護士およびそれの関係者らの主張は全くのウソ、デタラメということになります。
>法律家を目指す人が減少していることなど、当時は予想していなかったことが、現実に起こってきています。<
本当ですかね。
>「弁護士は公益の為の存在と自称しているが」で始まる一文を読むと、とても公益性を認めているようには読めません。<
新聞投稿文の12行目に「弁護士は公益の為の存在と自称しているが、そういう者はごく少数で」と私は書きましたが、それは弁護士の「公益性を認めている」から書いたものです。それでも「公益性を認めているようには読めません」おっしゃるのであれば、何おか言わんやであります。
>井上信三さんは弁護士がどういう点で公益性があると認められるのでしょう?<
弁護士が自称しているとおりであります。証拠として日本弁護士連合会と滋賀県弁護士会のHPに発表されている文章を引用します。
日本弁護士連合会の発表文抜粋
(略)弁護士は、(略)単に私利や感情を満足させるのではなく、 『権利を守り正義を実現し』 なければなりません。 法律家は 『「権利の守り手』 です。給費制によって、すべての法律家の資格は国民の負担において与えられたもの、となります。『法律家の仕事の公共性・公益性ゆえに』 国民が法律家を育てるのであり、給費制は法律家に対し 『公共心と使命感』 を求める制度でもあります。
滋賀県弁護士会
田口勝之会長は「弁護士がお金にならない 『公益活動』から遠ざかり、社会の矛盾や問題を解消する場がなくなる恐れがある。弁護士は国民の権利の守り手。略
同じく日本弁護士連合会の発表文抜粋
2004年の裁判所法「改正」に際し、衆参法務委員会附帯決議は、「経済的事情から法曹への道を断念する事態を招くことのないよう」関係機関が十分に協議をすることを求めていました。多くの修習生が多額の借金を負担していること、法律家を目指す人が減少していることなど、当時は予想していなかったことが、現実に起こってきています。
給費制は現在廃止されていないはずですから、修習生は年に300万以上の「給料」をもらっているはずですが、それでも
>多くの修習生が多額の借金を負担していること、
というのは全く理解できない事です。弁護士の主張は「給費制度が廃止されると借金が生ずる」だったはず。それが、年に300万円以上もの給料をもらっているのに「多くの修習生が多額の借金を負担している」というならば、借金を背負い込む理由は「給費制度が廃止された」ためではなくて、他の理由によるものでしょう。
>法律家を目指す人が減少していることなど、当時は予想していなかったことが、現実に起こってきています。<
本当ですかね。
出願者・受験者数
06年験の出願者数 2137人、1日目受験者数は2091人
07年は出願者数5401人、受験者数4607人、
08年は出願者数7842人、受験者数6261人、
09年は出願者数9564人、受験者数7392人
10年は 受験者数8163人
で、10年の受験者数は06年の4倍であり、減少しているなどという事は大嘘である。なぜ、弁護士連合会ともあろうものがこういう見え透いたウソというか、全くのデタラメをいけしゃあしゃあと吐いているのだろう。
だから、「弁護士は公益の為の存在と自称している」が、「実態は私利を主目的としている」と弁護士や司法関係者以外の人殻見られても仕方ないでしょう。
投稿: 井上信三 | 2010/09/20 23:13
↑のコメントの42~69行は1~28行と重複していました。
投稿: 井上信三 | 2010/09/20 23:25
井上信三さんはいくつか誤解されているようです。
後ろから行くと、弁護士になろうとする人は、今年までは法科大学院に行かなければならず、法科大学院に入学するには全員適性試験を受けなければなりません。この適性試験の志願者数は、平成15年から平成22年まで一貫して減っています。
http://www.dnc.ac.jp/modules/law_school/content0016.html
こちらのページのデータでもご覧になってください。
借金の件も、給費制が貸与制になれば、その分は借金が増えることになるでしょう。既に借金を背負い込む原因があるからといって、貸与制によれば借金が増えることが間違いとなるわけがありません。
そして弁護士の公益性についても、認めているとおっしゃいますが、それは極少数の者がになっているに過ぎず、大多数の弁護士は私利の追求を主な活動目的にしていると考えていらっしゃるんですよね。それとも「主」目的が私利追求だといってるだけで、大多数の弁護士は公益活動を多少なりともしていると認められているのでしょうか?
いずれにしても、井上信三さんが「公益性のある活動を弁護士達がしている」と認められるのであれば、その養成を国費で行うことに理があるということになるでしょう。
投稿: 町村 | 2010/09/21 00:17
>「公益性のある活動を弁護士達がしている」と認められるのであれば、その養成を国費で行うことに理があるということになるでしょう。<
当然であります。しかし、「公益性のある活動」は弁護士 のみ がしているものでないことは明々白々。医師であれ、研究者であれ、教師その他およそ法に反する性質を有する職業以外は全て 「公益性がある」 という事が全ての人に暗黙裡に認められている事実であります。
そうであるならば、同じく「公益性のある活動」をしているのに、弁護士を除く他の全ての職業人の養成には税金を給費せず、弁護士の養成のみに給費するという合理的かつ明白な理由は存在しない事になります。
だから、私は、「給費制を望むなら、欧米のように殆ど全ての教育の無料化を実現してからにすべきだ。」と主張したわけですが、この主張は誤っているのでしょうか。ている
弁護士養成に税金で給費すべきであるという弁護士の主張は、少なくとも現時点においては、弁護士のひとりよがり、傲慢さを示している事になります。
ちなみに、ネット上のある調査では司法修習生への給費制度廃止に賛成の意見が62%に上っていました。
投稿: 井上信三 | 2010/09/21 09:15
井上信三さんが指摘されるように、すべての職業には公益性があります。
また医者の業務内容は高度に公益的ですし、教師も同様ですね。
たまたま医者の養成過程では、2年間の研修医の期間中、その研修施設に補助金が出て、研修医の給与の一部を税金で負担しています。教師についてはそのような制度がありませんが、これは研修制度がないためで、教員採用試験に通って採用された新卒教師がオンザジョブトレーニングで一人前になっていくわけです。その間はもちろん有給ですね。
研究者については、公益的かどうか疑問の声もあるかもしれませんが、公益的だとして、その養成過程に貸与奨学金しかないように見えます。しかし学術振興会がドクターコースおよびポストドクターコースの学生に特別研究員という有給+研究費付きの待遇を用意しています。特別研究員になるには競争が激しいですが、一応、有望な研究者の卵に有給で勉強をさせる制度です。
弁護士(というか法曹)だけが有給の教育過程を用意されているわけではないのです。
それでも、他の職業はみんな自己負担ではないかという問題はあります。
それらの職業と弁護士(というか法曹)との間で、公益性には質的に違いがあると私は考えるのです。
典型的なのは刑事弁護です。刑事裁判は、犯罪を捜査する人、訴追して公判で弾劾する人と、被告人が無実だったり有罪でもそれなりの事情があることを代弁する人との両方の主張に、裁判所が判断を示す制度ですから、訴追する側と弁護する側の両方は同等の公益性を有しています。
しかもその公益性は、社会の治安維持と冤罪防止の両方を実現するという公益性で、私的利益が同時に公益につながるというレベルの公益性とは質的に異なると思うわけです。
その一翼を担う検察官は、当然公務員で税金により維持されるわけですが、反対側の弁護人も、被告人が希望すれば税金により手当されます。それくらい公益性があるわけです。
だから、その担い手を養成する過程も、税金を投入して維持する特別の理由があるのではないかと、私は考えています。
弁護士の公益性は刑事弁護にとどまらず、民事法律実務でも公法の領域でも存在しますが、長くなりすぎるので省略します。
ただ、弁護士職に他の職業とは質的に異なる公益性があるからといって、司法研修の有給制を維持すべきだということに当然なるわけではありませんね。
税金の使い道の優先度として、例えば国選弁護の報酬にもっとつぎ込むべきだとか、あるいは一般の教育課程である高校・大学を無料化する方を優先すべきだとか、そこは正に政治的な議論の対象です。
でも、弁護士職の養成過程があまりに経済的に高いものになると、法曹志願者の減少がますます進むでしょうし、そうなれば、村木元局長のように罪に陥れられたときに頼るべき存在が頼りなくなるのではないかと危惧されます。
法曹養成過程が高価なものになっている最大の元凶が法科大学院制度ではないかという非難が聞こえてきそうですが、その点は、来年から始まる予備試験の運用次第で解決されるでしょう。
投稿: 町村 | 2010/09/21 10:07
給費制とは直接関連ないかもしれませんが、気になりましたので、
>法曹養成過程が高価なものになっている最大の元凶が法科大学院制度ではないかという非難が聞こえてきそうですが
しかも、その「最大の元凶が法科大学院制度」で養成費が高価なものとなっている最大の元凶が、法科大学院の(現職弁護士が多数兼任しているらしい)教授の高額給与ではないかという意見が、現職弁護士から挙がっているようです。
投稿: 井上信三 | 2010/09/21 12:42
ロースクールで高額給与をもらっているのは、ご指摘の「現職弁護士が多数兼任」している実務家教員の一部ですね。2003年当時、某有力校の実務家教員用給与表を見たら、年俸2000万円とかいうのが最上級にありましたから。
しかしそれ以外の教員は、兼任の実務家教員も専任の研究者教員も、高額とはとてもいえないでしょう。むしろ兼任の実務家教員の皆さんなどは非常勤講師と同程度の謝礼しかもらわないで、ほとんどボランティアだねといってます。
法科大学院の授業料が高くなるのは、第一に少人数教育のために学生15人で1人の専任教員を必要とすることで、教員側から見れば給与は安くても、授業料に占める人件費の割合は高くなります。
第2に自習室を各学生に割り当てたり法廷教室を作ったりと設備投資がかさんだことも原因です。
そして最近の定員割れ状況で、人気のない法科大学院の経営は破綻寸前ですよ。
投稿: 町村 | 2010/09/21 15:34
>井上信三さん、コメントを有り難うございます。
ご意見が朝日新聞に載ると良いですね。
9月27日付けの朝刊に掲載されました。
内容がかなり修正されていますが、私が承認して声欄の担当者が作文したものです。
ところで、「給費制の廃止」の廃止はどうなるのでしょうか。法施行まで後2週間余りですが。
このままなし崩し(と言うのはおかしなものですが)に実施されて、目出たし目出たしとなればよいのですがね。
投稿: 井上信三 | 2010/10/17 11:44