平成22年新司法試験問題
法務省サイトで発表された。
民事系の論文をざっと読んだ限りでいうと、民訴については一見氏名冒用の非弁代理行為と追認拒絶の可否を問う問題が一つと、消極的一部確認(2000万円の債務は1500万円を超えては存在しない)の訴えが全部認容された場合における、基準時前の弁済が遮断されるかどうかという問題で、さらに判例理論と異なる法律構成を二つ提示して、その利害得失を問うという問題が一つであった。もう一つ小問あったが、それは省略。
前者は、民訴でも少なくとも私の授業では訴訟代理のところで好んで取り上げるテーマだし、弁護士倫理とも関連するので、法科大学院生的には取っつきやすいものと思われる。氏名冒用だけど表示説に立つから訴訟行為の効力はEに及ぶというだけにとどまるような答案では、ヒアリング等でさんざんやっつけられることになるであろう。非弁を代理人に選任した場合、通常は絶対無効だということになるのだが、それでは本件のような場合にかえって非弁代理人を選任してきた当事者に有利に働いてしまいかねない。そのあたりをどう考えるかが問われる。
少々舌足らずの部分を補うならば、代理構成を取るにせよ、あるいは形式的に見て氏名冒用者の訴訟追行とするにせよ、その訴訟行為の効力をEが否定するのは本問の場合筋が悪い。資格なき代理人にせよ冒用者にせよ、その者の訴訟追行を認め、むしろ積極的に依頼してきたEは、その追認を拒絶できないと解すべきではなかろうか。
他方、後者は、判例通説暗記型学習をしてきた受験生にはつらい問題であったろう。それでも、よくよく見れば、一部請求否定説的な構成と、請求の放棄を擬制するという構成なので、その辺を手がかりにして、訴訟物が全体になることを前提にするなら既判力も全体に及ぶと解するのが筋だとか、請求の放棄の場合に基準時はいつになるのかとか、その他もあるかもしれないが、論ずべきポイントと利害得失をひねり出すことはできそうだ。
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コメント
意外と、基本的な問題という印象でした。でも、受験生は、微妙な気分に浸るのが民事系問題のクオリティー?らしいですね。今日聞いた、受験生の感想によれば、今年もそう思ったそうです。。なお、問題作成者と私の私的な関係から、良問か否か、どうしてこうなってしまったかは言えません(某東京の私立大学事件になるとやばいので。私は受験生ではないですが・・・、一応)。後日発表の採点で気がついた事では「基本的なことが理解されてない」と言うのでしょうが・・・。が、仕事でしか関係ない東京の弁護士が考査委員になっていたのはちょっとびっくりしました。「あの先生怖いんだよな~。採点も怖いのかな~」と思ってしまいました。
投稿: はる | 2010/05/18 02:43
いつも興味深く拝見させていただいております。
民訴の2問目については、請求の放棄擬制構成の場合、遮断効の基準時が、本問のような消極的一部請求の場合には第一回口頭弁論期日だと考えることもできそうなことから、その立場を取ると弁済が基準時後の新事由になりうる、という事実設定になっていました。
今回は見慣れない問題・トリッキーな難問が多かったようにも思いましたが、どの科目も総じて正面から力を問うてくる良問だったというのが、私を含め周りの受験生の最大公約数的感想です。
投稿: 受験生T | 2010/05/18 23:17
>どの科目も総じて正面から力を問うてくる良問だったというのが、私を含め周りの受験生の最大公約数的感想です。
このようにポジティブに思えるということは、良い結果が待っていそうですね。
投稿: 町村 | 2010/05/19 09:11