article:両用ツール開発と法的責任
高橋郁夫「情報セキュリティツールに関する両用ツールの開発等の行為と法的規制について」InfoCom Review50号17頁以下
ご存じIT弁護士の論文で、情報セキュリティのために作られたソフトが悪用される可能性がある場合に、その開発と提供は不法アクセスなどの犯罪行為の幇助となりうるかという問題が扱われている。
著者によれば、Winny開発者控訴審判決は、違法行為に用いることを推奨して提供した場合のみ幇助が成立するとしていて、これは全く現実離れした基準だと批判され、英国法での現実的な基準を紹介している。
とりわけ、英国当局の対応が、事前にガイドラインを公にして萎縮効果を生じないように気をつけつつ規範を明確にしようとしている点は注目できる。
我が国では、刑事規制に関して、このような行政的な基準作りを行う機関が存在しない。コンピュータ犯罪について、コンピュータ技術開発振興を所管する官庁がガイドライン等を明らかにするなどの態勢作りが必要であろう。
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コメント
先回りはないでしょうね。
なんか大々的な事件になってから、ガイドラインが出て来る。
投稿: 酔うぞ | 2010/04/05 11:24
ご紹介いただいていたのですね。ありがとうございます。
最高裁の判決もでました。バランスとしては、私の論文のおとしどころと同じような感じになるでしょうか。
事実認定としては、私は、?感もありますが。私のなかでの一番の論点は、むしろ、作者の意図の認定方法でのソフトウエアフォレンジックの導入という事件になっています。
投稿: 高橋郁夫 | 2011/12/21 07:16
Winnyの件を離れて世の中を見渡してみると、合法違法の判断が迷う所でビジネスを成立させるために、様々なガイドラインが提示されるようになってきていますね。
身近な所では、発信者情報開示ガイドラインとか。
このあたりは三権分立の新たな問題として興味深いです。立法権と行政権との衝突のみならず、司法権と行政権との役割分担の再調整という意味でも。
ソフトローという切り口もあるし、色々な角度から結構注目されているのかもしれません。
投稿: 町村 | 2011/12/21 09:56
私はガイドライン大好きです。判決は、まっていられないし、結果も予測できないのに比較して、使いやすいです。ITをベースとしたリアルなところに、法律が追いついていかないということなのでしょう。
あと、私的には、日本的ロビイイングという見方もできるかと思っています。ロビイストとしては、本当にやすい報酬で動いているよなあと思います。
ガイドラインをどのような基礎資料から、どこまできちんとつくっていくか、という問題がありますね。どこまで、こまかいところを考えて作っていくのか、それが、将来おきる問題をうまく処理できるのか。シンクタンクでリーガルのリソースがないところが作っていたりするのでいいのか>法律家という論点もありそうです。
投稿: 高橋郁夫 | 2011/12/21 23:24