arret:死刑判決の破棄差し戻し
報道によれば、原審死刑判決を最高裁が覆したのは21年ぶりとのことである。
最高裁は、状況証拠のみによる有罪の認定には、「被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない(あるいは,少なくとも説明が極めて困難である)事実関係が含まれていることを要する」とした。
また、報道されている煙草の吸殻については、そもそも被告人が被害者宅を訪れたことが事件以前もないと主張しているのだが、被告人の吸った吸殻は被害者とその夫が被告人宅から携帯灰皿を持ち帰った際に、その中に入っていものという可能性が指摘されている。
その他、吸殻の採取された状況とか灰皿の他の吸殻の鑑定とか、捜査は尽くされていなかったようである。
さらに、犯行時刻に被告人が携帯電話の電源を切っていたことから怪しいとされているのだが、他方で事件は突発的な犯行だともされており、突発的な犯行なのになぜ事前に携帯電話の電源を切るというような行動をしていたのかの説明もない。
かくして、破棄差し戻しとなった。
なお、この判決には、なんと裁判官全員の少数意見が付けられている。
反対意見を述べたのは堀籠裁判官で、藤田、田原、近藤の各裁判官は補足意見、そして那須裁判官は意見を付けている。
堀籠裁判官は、特に裁判員裁判が実現された今日、従来のような「合理的な疑いをいれない程度の立証」の意味が変わってこざるを得ないとしている。
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