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2010/03/09

saga:電子申請の失敗

asahi.com:県警の電子申請、利用者ゼロで廃止に 税金4億円消える

事業仕分けの地方版というわけではないだろうが、2年間利用者ゼロの電子申請システムについて、来年度の予算要求を見送ったということである。

警情報管理課によると、電子申請システムは、システム開発など04年度から2年間の準備期間を経て、06年4月から運用を開始した。申請対象は、道路使用許可申請や銃砲の発見届、質屋の営業許可証の紛失届など20種類。県警のホームページ上から手続き出来たが、2年間の運用で利用者は「ゼロ」。08年4月からは「休止」の状態だった。20種類の窓口での手続きは、08年の1年間でも計約1万4千件の申請などがある。

 2年間のシステム開発などに約1億6500万円、利用者のなかった2年間の運用費は約1億6400万円。「休止」中の08年度も約6400万円の経費がかかった。運用期間中は主にサーバーや端末のリース代などに経費がかかり、今年度は約5200万円の予算を確保していた。

来年度の無駄遣いを早期に防止したといって胸を張って発表したら、開発費の税金が無駄だったと言われてしまったという構図だが、大新聞にこういう反応をされては、やはり一旦始めた公共事業はどんなに無駄でも止められないということになる。
批判的に分析するにしても、単に開発費が無駄だったなどという短絡的な発想ではなく、もう一歩踏み込む必要があろう。

例えば、
・そもそもこの佐賀県警のシステムは、電子申請になじむものだったのかどうか?
 記事では「インターネット経由で道路使用許可の申請など20種類の各種届け出が出来る佐賀県警の電子申請システム」とあるが、これらは電子申請ができることにより便利になるのか? また申請が必要になる度に電子申請のやり方を思い出さなければならない程度に、たまにしか使わないものではなかったか?
 オンラインバンキングなど頻繁に使うものでは、手順を覚えてしまうので、一々マニュアルをひっくり返したりしない。
 しかし年に1回あるかないかの申請なら、一から使い方を覚えるより紙で出しに足を運んだ方が早いのである。

・過剰にセキュアなシステムではなかったか?
 例えば電子認証を必要とし、それが住基ネットカードに結びつけられているとか。あるいは県警の庁内の端末しかアクセスできないとか(本件のケースではそんなことはなさそうだが)。はたまた高価で余計なカード読み取り機などを追加購入しなければならないとか。
 セキュリティは、なくてよいとは言わないが、それを優先させる余り、誰も使えない、使う気になれないシステムにしてしまえば、そもそも無意味である。

・電子申請と並行して紙を要求してしなかったか?
 佐賀県警のシステムがそうだったかどうかは知らないが、世の中には、オンラインでできますと称しておきながら印鑑をついた書類を要求する「電子申請システム」が存在するのである。データを受け取る側はすこぶる便利になるが、利用者のことはこれっぽっちも考えないやり方だ。

・ちゃんと広報したのか?
 「県警のホームページや警察署窓口でのビラの配布など、利用促進の広報はしてきた。」といっているそうだが、この程度で電子申請しようという気になるのは、ごくわずかであるし、そもそも県警のホームページが人々の目に触れているという前提をおくことがおこがましい。

・電子申請にメリットを付けたのか?
 従来のやり方を人々に変えさせるには、それに見合うメリットがなければならない。例えば申請費用が紙より10分の1くらいになるとか、逆に紙媒体申請は従来の3倍くらいの申請費用に設定するとか。

 このようにちゃんと広報をし、電子申請のメリットを創設するのは、金もかかるし、従前のやり方をしている人に不利益を課すことになるので、反対が強い。しかし電子申請を普及させようと本気で考えるのなら、それくらいはしなければならない。そしてそれをしないで、ただ開発導入したというのであれば、それはやはり無駄遣いを運命づけられていたといわざるを得ず、朝日の批判も正当といえる。
 そこまで考えないで、ただ出費が無駄になるという批判なら、それは単にいちゃもんにすぎないのである。

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