NHKのダメダメ裁判報道に思うメディアの将来
厚生労働省の元局長、村木厚子被告(54)は、障害者のための郵便の割引制度を悪用しようとしていた団体のために、うその証明書を作った罪などに問われ、無罪を主張しています。4日の裁判には、民主党の石井一参議院議員が弁護側の証人として出廷しました。検察は、石井議員が団体から依頼を受けて、村木元局長の当時の上司に証明書の発行を要請したと主張していますが、これについて石井議員は「そういう事実はまったくありません」と述べました。また、これまでの裁判で団体の元会長は「平成16年2月25日に議員会館で、石井議員に口添えを依頼した」と証言しましたが、石井議員は「その日は、同僚の議員らと千葉のゴルフ場に行っており、議員会館には行っていない」と述べました。これに対し、検察官は、その日の国会の議事録を示して「同僚の議員が委員会に出席しているとの記載がある」と指摘し、石井議員は「ゴルフをいっしょにしたという自分の記憶にまちがいない」と反論しました。
この引用の最後の部分は、石井議員が国会開会中にゴルフに行っていたなどとアリバイを主張したのに対し、検察官が議事録という客観的な証拠を出してアリバイを崩した、これには「自分の記憶に間違いはない」と根拠のない固執をしただけと、そう言うニュアンスが感じられる。
実際、テレビに映る石井議員の風貌とかドスの利いた声とかとも相まって、「あ、こいつ、悪者、信用できない、悪あがきしている」と思っても不思議はない。
しかし前記の江川twitterによれば、全然違うやりとりがあった。
検察官は石井議員の証言を崩そうと必死。一緒にゴルフに行った議員が、当日、国会の委員会に出ていたという議事録を突然出してきた。ところが石井議員、「いい所に目をつけられましたが、議事録には出席してもしなくても、メンバー全員の名前を載せるんです。なので、そこに載っているからと言って、私と一緒にゴルフをやっていなかったということにならないんです。よくお調べください」
なんだこれは。全然違うではないか。もし石井氏の言うのが本当なら、とんだ悲喜劇だ。
被告人のことを考えると、喜劇とは言い難いが、ペリーメイスンみたいな話ではないか。
実際、トニー四角の穴を掘って叫ブログの「郵政不正事件裁判で大阪地検が大阪らしい大ボケをかます」というエントリでは、
被告である厚生労働省元局長村木厚子氏には気の毒だが、もはや舞台は地裁からなんば花月に移した方がしっくりくると思う。
と書かれている。
大阪地検は自らの主張にこだわることなく、もう一度反対側の立場から事件を今すぐ検証してみて、すべてが虚構の上に立件したものなのかどうか、再調査すべきではないか。
無罪判決が出てから検証するとか、一旦有罪となって上訴審や再審で無罪となってから検証するというのが最近多いが、それでは遅い。検察は一方当事者であると同時に公益の代表者であることを忘れるべきではない。
ちなみにマスコミが無視する石井議員の証言には、江川twitterによれば以下の部分もあったとのこと。
裁判の最後に石井議員は「この裁判は検察の倫理、検察の存在(意義)を問うている。検察は善であり公正無私であるとの面目を果たしていただきたい」と述べ、検察が自発的に何らかの責任を取るよう求めました
上記と同旨である。
加えて、やはり江川twitterによれば、以下も注目。
公判後、記者会見した石井議員は「私のことも(マスコミは)ほとんど犯人扱いだった」「皆さん方は事実に基づかない報道を続けてこられた責任をどうとるのか」「皆さん方の情報のあつめかたはどうだったのか。(検察の)リークでしょ?」など、マスメディアの報道について猛省を促しました
どこぞの市長と違って、マスコミに対してもきちんとモノをいっているわけだが、これに対する報道が最上記のNHKの記事である。
時間の制約がある中で、情報の取捨選択をするのは当然だが、最も肝心な所を切り取ってしまって検察ストーリーから外れない記事に仕立て上げるのはなぜなのか。やはり巷間伝えられているように、検察庁やら警察やらに出入り禁止にされて情報をもらえなくなると困るから、警察検察の失態は彼ら自身がそれを認めるまで報道しないということなのか?
ここには、マスメディアが警察検察の発表ジャーナリズムに堕しているという問題と、それがインターネットの情報洪水の中で徐々に見えてきたということが明確になっている。
そしてこのことはマスメディアが決して取り上げようとしないことであろう。
マスメディアは情報の伝達屋であり卸売り兼小売業であるから、商品の卸売り・小売り業者がネット産直の普及で衰退するように、あるいはレコード会社がネット音楽配信の普及で打撃を被るように、事件の現場から素人が情報を発信してメディア抜きで一般に伝わるという現象には本能的に抵抗する。
原口大臣が津波情報をtwitterに流したことに読売新聞が批判的であったことにも、そんな本能の動きが現れている。
しかし、圧倒的な取材力と世論喚起力を有するマスメディアが、社会のある動きから目を背け続けるということ、あるいはネガティブなバイアスをもってしか見られないでいることは、世の中の情報のあり方として不幸なことである。
時代はイヤでも移り変わるのだが、悪い方向へ流れることのないようにすべきだ。現実から目を背けている存在に、それは止められない。
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コメント
検察とマスメディアの横暴と恣意性と低劣化は許せない。
此の国が段々おかしくなって行く。
偏向した一介の公務員である検察とリ-ク情報の運び屋のマスメディアのトリック。
投稿: 佐々木 充 | 2010/03/05 17:07
最近、マスコミや検察が信用出来なくなった私ですが、
議事録に出席者の名が書かれていないなんてあるのか?
仮に単なる会議のメンバー欄だったとしても、
出席の有無は書くと思うのだが。
一体、真実はどうなっているのか?
なんだか、フリーのジャーナリストも信用ならん。
投稿: 疑問 一杯 | 2010/03/05 20:17
被害者には失礼ながら、事実は小説よりも奇なりだ。
さすがに、植草氏の仰る地検(痴犬?)とはこのことか。
強面の石井議員に似合わず、几帳面な手帳で迫られては検察も、青菜に塩・・でしょうね。
かなり見くびってた模様ですので・・・。
やがて狙われそうな御仁は日頃から記録を執りましょう。
投稿: 多難の石井 | 2010/03/06 15:12