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2010/03/13

LSの選別を進める

法科大学院の選別を文科省が行って定員削減をすることを官製談合と評したら、「談合」ではないとの反発があったので、他に分かりやすい用語がないか考え中である。護送船団というと、まるで文科省が法科大学院を守ってくれるかのようだが、そういう意味は含まれていない。

さて本第
asahi.com:司法試験成績で補助金に差、法科大学院を底上げ 中教審

新司法試験の合格者をろくろく出せない程度の教育能力しかない法科大学院は退場させるべきだということ、それ自体にはあまり異論はないと思われる。
設立時にも、設置認可は緩やかに、成果が上がらないところは競争原理に従って退場してもらうという当時の基本方針に従っていたのだから、ここに来て振るわないロースクールの退場は予定調和の結果でもある。
しかし上記記事では、そのような競争原理の結果を待ちきれない意志に動かされて、人為的に選別を進めようという方向が明確になっている。

そしてこの記事の目新しいのは、次の点だ。

各校には法務省と最高裁から検察官と裁判官が実務家教員として派遣されているが、報告はこれについても「早急に見直しを検討することが期待される」とし、成績不振校から派遣を引き揚げることを事実上提言した。

補助金削減だけなら、学校法人の体力により耐えられるところもありそうだが、裁判官と検察官の実務家教員を引き上げられては、事実上必須の実務基礎科目が開設できないこととなり、撤退に直結するであろう。
ただし、この方法が採れるかどうかは疑問なところもある。1つには、法務省・最高裁の教員派遣に関わるので、中教審=文科省が管轄する範囲を超えている点だ。
もう一つは、設置認可が維持されている以上、早稲田慶應であれ地方弱小私大であれ同等なはずであって、あるところに教員を派遣するのに他のところには派遣しないということがどうして許されるのか、憲法14条に反するのではないかという点だ。

このように考えると、設置認可を維持しておきながら、事実上撤退を強制するような手段を、他の機関に行わせるというのはすこぶる姑息な手段に思える。

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学問・資格」カテゴリの記事

コメント

 そこまで行くと立場上慎重な発言をしないといけないと思いますが、なにか、そのままに出来ない気がいたしました。
 町村先生とちがって?、結果が出ない法科大学院にも見所があると私は思っており、他方、司法試験予備校講師としては、そもそも今の法科大学院制度になぜ誰もが雪崩をうってはせ参じたのかわからないという気分もあります。もちろんロースクール教授としては逃げですが。

 そもそも文科省の介入は私は学問の自由、大学の自治を侵すものだと教授会で言ったのですが、それを言っても始まらない。
 今回の法務省・最高裁の人員引き上げなんて、まず、法の下の平等違反であり、そもそも、大学の自治という制度的保障に真っ向から背くものであり、結局、生徒の学ぶ学問の自由を侵害するので、思いっきり、憲法訴訟が出来る(手続き論クリアで、たぶん、実体法的にも、違憲)。

 私の頭の枠組みが、いつも、憲法的にどうなん?ってできてるんですが、これは、おかしいと思うのです。

投稿: 徳岡宏一朗 | 2010/03/14 02:25

なかなか難しい議論になりますが、国家試験突破を前提にした職業訓練学校ですから、自ずから自由・自治には限界があります。

もちろんだからといってすべてを文科省がコントロールするというのがいいといっているわけではありませんが。

投稿: 町村 | 2010/03/14 06:24

抽象的に「受験指導まかりならん」という恫喝文言を投げかけて,萎縮効果で腰をひかせておいて,あとから「合格率がどうこう」というのは,信義則違反という感じがします。

私らの仕事って,「限られた時間と情報の中で,そこそこ外さない成果物を仕上げる」能力が要求されるわけで,その意味では即日起案的トレーニングは実務家養成のために非難される筋合いはないと思うんですが。基礎力育成という観点からも有用だと思うし。

でも,やると「トーレンまかりならん」って言われるんですよねぇ。で,やらないと「書ける能力育成が足りない」と言われるし。

この話になると,あちらさん(誰?)は試験型のトレーニングが全部悪いと言っているわけではなく,単に受験技術を伝授するようなのがダメなのだと言いますが,その「受験技術を伝授するだけの起案トレーニング」って,いったいどんなものなんでしょうか。

そういう分水嶺がはっきりしないまま,認証評価の結果で「受験指導的」ということだけが喧伝されて皆が萎縮していき,学生を鍛えるのが妨げられているように感じるのですがね。

それとも,起案トレーニングなど14回の授業の中で1~2回やればすべてを悟って合格できるような能力の持ち主だけが法科大学院に入学すべきだということなのでしょうか。

投稿: h | 2010/03/14 10:37

「受験指導まかりならん」と今回の合格率の低いロースクールは使命を果たしていないという非難とは完全に矛盾していますね。

しかし論証パターンみたいなのを覚えて、例えば既判力とか弁論主義とかの問題には信義則を持ち出すという条件付けをされた学生は、肝心の既判力の相対効とか理由中の判断の非拘束性といった基本を重要なものと理解しておらず、その結果相対効を前提にした共同訴訟人独立の原則がよく理解できなかったり、理由に不満でも上訴の利益がないことが理解できなかったりします。
これは勉強が進んでいない証拠だから、もっと勉強すればよいとも思えるのですが、そうではないかもしれません。
試験に出るといわれている典型論点について、どう書けばいいかという答案構成だけをなぞって覚えているから、その前提となっている基本的な理解が欠けていて、従って基本原則の応用的な課題となると途端にお手上げとなるのではないかと思います。

これが、h先生のいう「受験技術を伝授するだけの起案トレーニング」の弊害じゃないでしょうか?
そういう表面的な勉強方法では、よほど典型的な論点がそのままの形で示されない限り、事実関係を丁寧に拾い上げて問題事例に適した解決策を考え出すことが求められる新司法試験には、対応できないでしょう。

逆に、問題を出して答案を作成するというやり方自体は、むしろ必須のはずです。抽象的法文や法原理も具体的事例に適用して解決策を導き出して初めて意味があるわけですから。

それなのに、答案練習という形で原理原則からその応用までも鍛えるというやり方自体を問題視するような評価姿勢では、結局、まともな教育すらするなということになってしまうように思います。

投稿: 町村 | 2010/03/14 12:31

いつも拝見し勉強させていただいております。
さて、法科大学院も統廃合が現実化していますが、これを歓迎すべきか、先生のご見解をお聞かせください。
合格率の低い法科大学院について、①かかる大学院でも広く国民に法学・実務を学ぶ機会を提供しているのだから存在を肯定すべきと考えるか、②本来設立されるべきでない存在で、新司法試験の競争を激化させ、あるべきLS教育をゆがめた元凶だから早く退場すべきと考えるか。また、後者についてはさらに③高学歴ワーキングプアしか「養成」していないのだから「害悪」そのものととらえるべきか。
率直な感想としては②か③でしょう。ましてや、司法試験合格者を増やさない法曹界は「既得権益だ」と叫びながら、予備試験枠を「不当に」狭めようとロビー活動をするLSなんかは、白い目で見られても仕方ないでしょう。

投稿: 鈴木 | 2010/03/16 22:06

ご自分で結論を出しているのだから、私の意見はどうでもよさそうですけど。

統廃合については、ほっておけば地域格差が進むことになるので、人為的な操作も必要ではないかと思います。

投稿: 町村 | 2010/03/16 22:50

ご返信ありがとうございます。最後にもう一つ、予備試験につきまして、一言。
以下は先生の3月6日のご意見です。
「ともかくも…法的知識や応用能力を身につけた受験生は、誰でも合格できることが望ましいし、…司法試験は…資格試験であって…のだから、合格者人数がまずあるというのはナンセンスなのである。
だとすれば、新司法試験が法曹の最低限必要な知識とスキルを身につけた受験生をきっちり選抜できる仕組みとなっているかどうかが問われることはあっても、合格者数の目安のために…長々と検討するなどというのは、…無駄であろう。
そんな暇があったら、…抜本的な見直し検討会議を作って検討を始める方がよい。」

以下、このお考えを予備試験に応用してみます

「ともかくもきちんと勉強して法科大学院修了生と同等の法的知識や応用能力を身につけた受験生は、誰でも予備試験に合格できることが望ましいし、・・・予備試験は本来的に新司法試験受験のための資格試験であって、有能な人材を弾く試験ではないのだから、法科大学院の経営がまずあるというのはナンセンスなのである。
だとすれば、予備試験が法科大学院修了者の最低レベルの知識とスキルを身につけた受験生をきっちり選抜できる仕組みとなっているかどうかが問われることはあっても、法科大学院経営のためにロビー活動とかを行って、合格者枠を狭めようというのは、はっきり言って不当であろう。
そんな暇があったら、法科大学院教育の充実や厳格な単位認定を行って、司法試験においても、実務家になった後における評価においても、予備試験組を凌駕する修了生を輩出した方がよい。」
となるはずですが、法科大学院の先生方はこの見解に賛成されないのでしょうか?

投稿: 鈴木 | 2010/03/16 23:24

鈴木さん、これは応用ではなくもじりとかパロディの類でしょう。

でも、予備試験だって人数枠を決めるというのはナンセンスだとは思います。

投稿: 町村 | 2010/03/16 23:36

>もう一つは、設置認可が維持されている以上、早稲田慶應であれ地方弱小私大であれ同等なはずであって、あるところに教員を派遣するのに他のところには派遣しないということがどうして許されるのか、憲法14条に反するのではないかという点だ。

私の通っているLSでは検察官はおろか裁判官の派遣すらありません…

投稿: takayuki | 2010/03/18 04:07

民主党政権になったんたんだから
あたりまえじゃないか
だって「派遣の原則、全面禁止」
じゃないか

投稿: たろう | 2010/03/19 00:53

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