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2010/03/21

jury:可視化で判明、否認被告人の「反省してます」は誤訳

asahi.com:裁判員裁判で通訳ミス多数 専門家鑑定 長文は6割以上

裁判員裁判に限ったことではないが、審理過程をすべて録画したのは裁判員裁判だからで、そのおかげで通訳の正確性を検証できるようになったのであろう。

それにしても驚嘆すべきである。

主語と述語がそろった文を二つ以上含む被告の発言の65%(61件中40件)で、意味を取り違える「誤訳」や、訳の一部が欠落する「訳し漏れ」があったとした。

鑑定によると、たとえば、被告人質問で弁護人から「結果として覚せい剤を持ち込んでしまったことへの思い」を問われた際、被告は「I felt very bad」と答えたが、男性通訳人は「非常に深く反省しています」と訳した。水野教授は「心や気力が砕かれた状態をいう表現で、反省の弁ではない」と指摘する。

 また、覚せい剤が入っていたスーツケースに知人女性が白い結晶入りの袋を詰めるのを見たと話していた被告が、検察官の質問に「nothing done with the suitcase」と述べた部分を、女性通訳人が「スーツケースには何の細工もされていなかった」とせずに、「スーツケースは空だった」と訳したのも文脈からすれば誤り、としている。

仮に我々が海外で突然捕まり、身に覚えのない覚醒剤密輸の罪で訴追され、必死に見に覚えがないと述べても、通訳が勝手に「悪いことをしてすみません」とか訳されて、そう言ったことにされたらどうか?
戦慄を覚える事態である。

この場合、DVDで録画されているため、言った言わないの水掛け論に陥らずにすむというところが最大のポイントだ。

そしてやはり、取り調べ過程においても、いくら無実を訴えても、その発言は調書に記載されず、取調官が想定するストーリーに沿った部分だけは自分が言ったかのような表現で調書に記載され、言った言わないの争いになれば複数の味方がいる取調官側に有利になる環境である。そのすべてを改ざん不可能なように録画して、言った言わないの争いを抑止することがいかに重要かが分かろうというものである。

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法律・裁判」カテゴリの記事

コメント

 言った、言わない議論は、裁判に不毛な争いをもたらすだけなので、先生がおっしゃるように、早急に改善すべきだと思います。
 さて、前も、刑事にはあまり関っていないと記載しましたが、仕事の関係で裁判を傍聴することがあります、民事で。その証拠調べ(証人尋問)では、速記者速記しながら、録音もしています。が、後日、その尋問記録を見ると、誤字・脱字、勘違いが見られることがあります。ま、通常は、たいしたことではないので(正式には、訂正を口頭弁論で申し立てるべきなのでしょうが)スルーしてます。録音すらしている尋問記録でさえ、この有様ですから、検察は、早く何か手を打たないと大変な事になりかねないと感じます。DVDなら、被告人の表情等も残りますので、完全ではなくても、心証形成に、大いに役立つと思います。

投稿: はる | 2010/03/22 12:38

やり直し(取消差戻し)になるのかな?私はならないと思う。結論的には,少なくともこの事件では誤訳は誤判と因果関係がなく,誤訳を問題視する典型事例としては不適切ではないか。誤訳が多々あったことと,誤判につながったこととは区別しなければならない。

事の本質は誤訳ではなく,1審の弁護人の弁護過誤。誤訳があれば供述に(他の供述や他の証拠と)辻褄が合わないところが多々出てくるはずで,弁護人はそれを十分主張しなければならない(したはず)。その上で判決が出た。

弁護人の弁護活動が著しく不十分だったと証明できれば差戻しだが,それは証明不可能だろうし,裁判官より裁判員の方が誤訳により不適切な判断をする,という推論は経験則に反する。

控訴審の弁護士が,1審の弁護士の責任を不問にしたまま通訳の能力を問題にするようでは,法廷通訳から,法曹の身びいき,との不信を招くように思う。

評議の内容は分からないが,誤訳の可能性も話題になったかもしれない。

以上,twitterへの記事への補足を兼ねて。

投稿: january6th2010 | 2010/03/22 13:25

january6th2010さん、twitterでは確認できなかったのですが、この事件がどうだったのかは、上記の記事の限りでしか知り得ない以上、誤訳が誤判につながったのかどうかを判断することはできないと思います。

投稿: 町村 | 2010/03/23 00:54

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