jugement:クリキン不正競争事件
東京地判平成22年3月26日(PDF判決全文)
新聞報道された、クリスタルキング元ボーカルと現クリスタルキング商標権者との争いである。
懐メロを元歌の歌手自身が歌うという企画の中で、
「大都会/田中雅之(クリスタルキング)1979」及び「田中雅之(クリスタルキング)」
と表記したことが商標権侵害となるかが争われたが、これは出所識別機能、すなわちクリスタルキングというグループに属している人が歌うような誤解を生じないとして、商標権侵害が否定された。
かなり微妙な判断に思えるが、今後上記の表記の使用が許されるということまで意味するものではない。
また、クリスタルキングのメンバーであると名乗ったという点を不正競争防止法に定める「営業上の信用を害する」行為に当たるかという主張は否定された。
そして最後にクリスタルキング解散との虚偽発言については、週刊FMでの記載で「解散したクリスタルキング」という部分があったことに、メンバーの脱退状況から見て解散と表現しても不思議はないと判断したが、テレビ番組での以下のような田中雅之発言には、虚偽の事実の流布に当たると認定している。
「クリスタルキングはもう残念ながら解散したんですが,残党もかなり残って,クロスロードというバンドでやってますので,絶対頑張りますので,ひとつよろしくお願いします。」
テレビ番組の録画テープが証拠として提出され、採用されている。
#ここでは余談だが、テレビ番組の録画テープを証拠とすることには従来根強い批判がテレビ局から向けられていたが、本件は問題ないのであろうか? 報道ニュースでなければよいのか?
いずれにしても、10年以上も前の話であって、不法行為の短期消滅時効(3年)が満了しているとして請求棄却となった。
以上の判断を総合するに、請求権は認められたが時効で棄却されたと聞くと、実質的な田中側敗訴に見えるが、全面的な原告敗訴と評価できよう。
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