news:可視化が必要な事例、また1つ
今度は検察庁の名誉を守るためである。
例の、週刊朝日に掲載された上杉氏の「子供"人質"に女性秘書『恫喝10時間』」という記事に対し、東京地検の次席検事が抗議書を送ったという件である。
記事の転載と思われる文書はこちらのサイト。
また抗議書のコピーはこちら(gif)
上記記事転載によれば、鈴木宗男氏のブログに以下の記述があるとのこと。
「さらに昨日は、石川事務所の女性秘書を午後1時から10時半まで事情聴取している。小さな子供がいるから早く帰してやってくれ、と言っても、検察は帰さなかった。まさに拷問的取り調べだ、と、弁護士は怒っていた」
これについて「関係者」の話だとして記事では、民野健治検事が石川議員の女性秘書を1時45分から10時45分まで連続して取り調べ、その間外部との連絡をなかなか認めず、子供の保育園へのお迎えも認めないという対応だったというのだ。
その検事さんの言動として、転載記事には次のような言葉が並べられている。
「いいんだよ、何でもいいから認めればいいんだよ」
「早く帰りたいなら、早く認めて楽になれよ」
「何で自分を守ろうとしないの。石川をかばってどうするの」
「あんた、何も言わないのは愚の骨頂だよ」
「何言っちゃってんの?そんなに人生、甘くないでしょ?」
「せめて主人に電話をさせてほしい」「ダメだ」というやり取りの繰り返し
何百回とこうしたやりとりを続けてようやく「じゃあ、旦那にだけは電話していい」といったので、夫に電話をすることができ、その時に弁護士にも電話できて、弁護士の介入でようやく帰ることができたというのである。
これに対する東京地検次席検事の抗議書は、「真実」として次のように書かれている。
・当該検事は、供述人に対し、「何点か確認したいことがある」旨を告げて来庁を依頼した。
・夕刻、供述人から、子供の迎えもあるので帰りたい旨申出があったので、当該検事が、「家族の誰かに代わりに迎えに行ってもらうことはできませんか」と尋ねたところ、供述人が夫に電話をかけ、その結果、子供の迎えの都合が付いたことから事情聴取が続けられたものであり、その際、供述人が子供の迎えだけは行かせてほしいと発言したり、取り乱したことはない。
・事情聴取中、供述人から、家族や事務所に連絡したい旨の申出が何度かあったが、当該検事がこれを拒絶したことはなく、供述人は、その都度連絡を取った。当該検事は、本件事情聴取中、終始、冷静かつ丁寧に対応しており、「恫喝」、「監禁」、「拷問的」などと評されるような言動は一切とっていない。
・さらに事情聴取の内容に関する記載も全くの虚偽であり、(以下略)
さて、取調室での模様は密室なので、部外者には取調官の言い分が正しいのか、供述人の言い分が正しいのか、全く分からない。
ケンサツハウソツカナイ、トリシラベヲウケルモノハウソツキダと素朴に信じている面々は、検察官がこう言っているとか、検察官が書いた書面だというだけで信じてしまうかもしれないが、率直に言って一般市民がそのように初めから思い込んでいるとは期待しないほうが良い。
上記の見解の対立を前にしていずれが正しいのか判断するには、従って客観的な証拠が必要だ。
例えば女性秘書の携帯電話の通話記録を検証すれば、少なくとも外部への連絡が許されていたのかいなかったのか、立ちどころに明らかになるだろう。少なくとも、何度か外部に連絡していたではないかという抗議書の言い分の真偽ははっきりする。
しかしそれ以外は藪の中だ。
このままでは検察庁の信用は失墜し、保育園に子供を預けている親の反感を一身に背負うこととなろう。それでは治安維持の責任すら果たせなくなってしまう。
ということで、取り調べ過程が適正かどうかは、取り調べる側がきっちりと証拠を残して証明できるようにしておくべきなのだ。そのためには、都合のいいところだけ切り取って録画するというのではなく、ちゃんと編集していないことが明らかになるような形を整えて、全過程の録画をしておくしかない。
もう、明日からでもやってはどうか?
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コメント
抗議書で弁護士に連絡したいと言ったのにさせなかった件について何も反論していないということは、この点については事実に間違いないと暗に認めているということでしょうか?
投稿: でかいの | 2010/02/06 21:02
「事情聴取中、供述人から、家族や事務所に連絡したい旨の申出が何度かあったが、当該検事がこれを拒絶したことはなく、供述人は、その都度連絡を取った。」
という中に、弁護士へ連絡を取りたいというのも入れたつもりかもしれませんね。
投稿: 町村 | 2010/02/06 21:10
いや、週刊朝日の記事によれば当日弁護士には連絡していないことになってます。通話記録を調べればこの証明/反証は容易なので、すぐばれる嘘を記事にするとも思えません。
女性秘書が弁護士に当日連絡していないのが事実だと仮定すると(かなり蓋然性は高い)、抗議書で「弁護士に連絡したいと言ったのにさせなかった」という記述に触れないのは非常に不自然だと感じます。
抗議するとしたら
・「弁護士に連絡したいとの申し出があったので、弁護士に電話させた」
これは弁護士に連絡がなかったという事実に反するので、すぐにばれてしまいます。
・「弁護士に連絡したいとの申し出がなかったから、弁護士に電話していない」
だからといってこのような抗弁もしない。
言った、言わないの水掛け論にすらしようともしない。非常に不自然です。
投稿: でかいの | 2010/02/07 00:01