« univ:恐るべし、教授会で銃乱射 | トップページ | internet-radio開始へ »

2010/02/13

jugement:談合の損害額算定に民訴248条が使われた事例

名古屋地判平成21年12月11日PDF判決全文

名古屋猪子石のごみ焼却施設などを建設する公共工事について、談合が行われたため、その損害賠償を求めた事例である。

損害の発生について争点となったが、裁判所は損害について以下のように認めた。

・入札参加者間の談合が,一般に,公正な価格競争が行われることにより落札価格が低額になることを防止する目的で行われるものであること
・本件対象期間におけるストーカ炉の建設工事の平均落札率と本件対象期間後におけるそれに有意な差が生じていること
この二点から、

すべての入札参加者間で公正な価格競争を排除する受注調整が図られたことが認められる場合には,仮に公正な価格競争が行われても,現実の落札価格ないし契約金額を下回る価格で入札をする業者がなかったことをうかがわせる特段の事情がない限り,想定落札価格(談合行為がなく公正・自由な価格競争が行われた場合に形成されたであろう落札価格)を上回る契約金額で請負契約が締結され,発注者にその差額分の損害が生じたものと推認するのが相当である。

談合の場合、公正な競争を歪めたことは事実として認められるとしても、その結果注文主に損害が発生したのかどうかはハッキリしないことが多い。要するに談合によって高値での落札がなされたわけだが、それが談合なしの場合より「高い」こと、従ってその差額について損害を生じさせたことがハッキリと立証できない。
これを、上記のような要件がある場合には損害が発生したものと推認するとしたのである。

談合は高値での受注を可能にするためにやっているわけだから、このことは当然でもある。

他方、具体的な損害額については、民訴248条に基づいて、相当の額を認定した。

「損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。」

各種資料では、談合がなかった場合の落札価格が平均で10%から16%程度高くなることを示しているが、この判決では控えめな認定によるとして落札価格の5%を損害額と認定した。

ずいぶん甘い認定であり、特に「本件各工事の受注により得た利益を具体的に明らかにしうる資料を提出していない」といった事案解明義務を尽くしたとは言えない対応をしていることを勘案すれば、上記の各種資料の最大値を基準として、これよりも損害額が少ないことは被告の反証にまつということもありえたであろう。

なお、この判決では、原告が談合行為の主体、日時、場所、内容などの詳細を明らかにしていない事についても、参加企業の基本合意の存在と、それに基づいた落札者決定の事実を認定しており、これに談合対象工事を特定し、事前に落札者が決定していたことを主張すれば、請求の特定も要件事実も十分だとしている。
そして、以下のように判示している。

原告が個別の工事に関する談合の日時・場所等を具体的に特定して主張することは著しく困難であるし,仮に上記特定がなかったとしても,被告らは,個別の工事に関する諸々の状況を把握し,資料も保有しているのであって,被告らにおいて,個別の工事に関する談合がなかったことを示す間接事実などを主張立証することによって防御することが可能であるから,被告らに不相当な不利益を強いるものとはいえない。

 このように、談合の存在についての具体的な主張立証責任は緩和され、見方によっては転換されていると評価することもできる。

 極めて妥当な判断枠組みである。

|

« univ:恐るべし、教授会で銃乱射 | トップページ | internet-radio開始へ »

法律・裁判」カテゴリの記事

コメント

はじめまして。
ご存知かも知れませんが、民訴法248条を適用して、談合の損害賠償額の認定をした事例は、
奈良地判H11.10.20(判タ1041号182頁)を皮切りに、相当数の事例が積み上げられております。
少し古いですが、伊藤憲二「入札談合に係る損害賠償請求の現状」『公正取引』652号20頁-(2005)等をご参照ください。

投稿: houmubu | 2010/02/14 10:48

貴重な情報をありがとうございます。

この談合により正当な価格形成が損なわれた事例に民訴248条が適用されるというのは、同条の立法時の議論を思い起こすと興味深いものがあります。
というのも、同条は「損害」の存在が認定された場合に、「損害額」の認定を相当価格として認定してよいという規定なのですが、談合とかカルテルとかにより価格が釣り上げられたという違法行為の場合は、不当に釣り上げた価格が損害でもあり損害額でもあって、両者は区別できないから、民訴248条は適用されないという説が、根強く主張されていました。

今の判例理論は、これを完全に粉砕しているということになります。

そこで、エントリに書いたような「推認」を損害について認め、損害額について248条を適用した論理構造に興味がわくわけです。

投稿: 町村 | 2010/02/14 11:07

西武鉄道がらみの有価証券報告書等の虚偽記載においても民訴248条を使いだしています。

鶴岡灯油事件にも民訴248条が適用されるのかどうかはもう一度検討の必要がありそうですよね...

侵害(行為)と損害(事実)と損害額の関係は
難しいですよね
民法学者は百花繚乱だし...

投稿: 故元助手A.T. | 2010/02/16 18:25

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/31412/47559843

この記事へのトラックバック一覧です: jugement:談合の損害額算定に民訴248条が使われた事例:

« univ:恐るべし、教授会で銃乱射 | トップページ | internet-radio開始へ »