JAL:国営会社がつける価格の公正さはどう決める?
航空運賃は、格安航空会社が参入し、日本でもスカイマークやエアドゥが登場して、自由化の恩恵もあってかなり競争の激しい分野となってきた。
ところが、国の巨額の資金援助を受けた航空会社がその価格競争に参入するという場面では、他の航空会社と同じ程度のダンピングはできない。
普通の企業であれば、損して得取れということが行動としてあり得て、特定の取引では赤字覚悟でも長期的には元を取るということも十分合理的だ。それが可能となるには体力があることが前提にもなる。
今のJALは、巨額の公的資金をつぎ込んで、その体力を持たせている状態であり、その公的資金力をバックに体力勝負に挑んでくるとなると、他の自前資金で体力勝負をやっている競争相手とは明らかに不公正である。
ただでさえ、会社更生や民事再生で資金繰りの苦労から一時的に解放されている状態なのだから、他の通常の資金繰りに負われている企業よりも有利だということはいえる。JALの場合は、その上さらに税金まで投入されて、普通ならあり得ない取引債権まで全額保護という恩恵にまで預かっている。
そういうわけで、
asahi.com:日航に「安すぎはダメ」 国交省が異例の自粛要請
日航は先月の企業再生支援機構による支援決定以降に値引き商品を発表するなど価格競争に挑む姿勢をみせており、「公的支援を受けている日航がいたずらに運賃を引き下げれば市場の競争関係をゆがめる恐れがある」としている。
このこと自体は正当だ。また全日空もJALが公的資金をバックに価格競争を仕掛けることに牽制する申し入れを国交省にしている。
しかし、では「安すぎ」でない価格とは何か?
もはや航空運賃定価が適正価格のデフォルトだという時代は昔のことになり、今は多数の安売り切符が航空会社自身から出されている。
そんな中、かつてやっていたバースデー割引を復活させるというのは、「安すぎ」なのか、それとも正当な価格設定なのか?
前売り割引は半額以下とか3分の1くらいの価格もありうるところだが、他社が設定している割引率までは「安すぎ」と言えないのであろうか?
いつかJALかANAかがやっていた50人に一人タダになるとかいうキャンペーンは、「安すぎ」か?
こんなことは考えるだけ無駄で、市場の中での交渉と競争、そして原価と体力に応じて適正範囲が決まり、適正水準が決まるものである。つまりはアプリオリにこれくらいが適正というのがないのが、通常の競争環境というものである。
従って、国交省が圧力をかけ、日航が「いたずらな運賃の引き下げは真の再生を果たすための方策とは考えていない」と言っているとしても、じゃあどうしろというのか、というのが本音であろう。
それこそ、割引制度の一つ一つについてお上にお伺いを立てて、「大丈夫でしょうか? 市場を歪めたりしないでしょうか?」と確かめる以外にはなさそうである。
似たようなジレンマは、郵政会社にもいえる。競争に打ち勝つような積極的な経営をすれば、原資が税金でできているくせに民業圧迫だということになるし、さりとて競争に背を向ければ、いわゆる官製商売で非効率な存在となり、赤字垂れ流しとなってしまうかもしれない。
ともかく、公的資金を大量投入された民間会社という矛盾に満ちた存在になってしまったのであるから、JALの行く末は難儀なものだが、頑張って再建してもらわないと投入した税金が無駄になってしまう。それは納税者としても我慢がならないのである。
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コメント
国が経営に旗ふって介入したら,文字通りナショナルフラッグキャリアになってしまう。いっそ国営航空にして民業圧迫のギャグもありかも。郵政と一緒でw
投稿: キメイラ | 2010/02/07 12:52
もし国営航空になるなら、亀井社長の下で赤字垂れ流しで茨城空港とか神戸空港とか静岡空港とかほとんど利用者がいないところを中心とするネットワークを構築するとよいでしょう。
でもその分の税金は、払いたい人が払うということで。
投稿: 町村 | 2010/02/07 15:15
いっそ国営日本航空としたあと,路線ごとに細かく入札かけて,LCCやJAL内MBOに外注下請やPFIさせたりw
投稿: キメイラ | 2010/02/07 19:45