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2010/02/18

消費者庁のiTunesに対する公開質問状

消費者庁ウェブサイトに、プレスリリースの紙のPDFファイルが掲載されていた。

公開質問状というと、たいていは力のない団体が大企業とか行政庁とかに、黙殺されたりすることのないように、わざと公開して出すというのが定番であった。

日本の中央省庁が公開質問状を出すというのは異例な気がするが、私が知らないだけだろうか?

それとも、今をときめくネット企業に対しては、極東島国の新興官庁として、黙殺されたりしたら困るからということでこういう方法に出たのであろうか?

それはともかく、

(4) 本人によるiTunes Storeの利用事実がないことが確認された場合、利用料金の請求を中止するなどの措置が講じられる余地はあるか。
これはこれまでの対応からしてノーだと思われるが、法的には、相変わらず、他人の名前を騙って売買契約の申込みをしたとしても、その名義使用を本人が許諾していたか、あるいは過失により使用を可能としていた場合でなければ、本人に契約の効力は及ばないであろう。 規約上、ID取得時になりすまされた場合でも契約責任を負うと規定してあったとしても、これは公序良俗に反して無効か、または消費者契約法10条により無効な条項となり得よう。

問題は、準拠法だ。
準拠法の指定は当然ながらカリフォルニア州法が指定されているものと思われる*が、消費者契約の場合、消費者の常居所地法(日本の利用者なら日本)の強行規定に反する条項は無効となりうる。
なりすましの場合でもなりすまされた人が契約責任を負うというのが公序良俗違反だとすれば、そのような条項によっても日本の消費者に責任を課すことはできない。
しかしその条項の使用差止を団体訴訟で求めることもできない。

逆に公序良俗には反しないが任意規定には反するという場合、準拠法をカリフォルニア州法と指定する規約に合意している以上は、その無効を主張することはできなさそうだ。
しかし、消費者契約法10条に反するので無効という時の消費者契約法10条自体は、強行規定ではないのだろうか?
民法の先生に是非教えてもらいたいところである。

また、iTunes Store社に日本の適格消費者団体が特定の条項の日本法違反を理由として差し止め請求することは、日本に裁判管轄があるであろうか? これも謎である。
こちらは国際私法の先生に是非。

*追記:iTunesには「iTunes Storeでの販売のすべては、日本法が適用されます。」と記載されていた。
 また、iTunesの販売ルールにも同旨のことが書かれ、東京地裁が専属的合意管轄とされていた。
 ちなみに、アイチューンズ株式会社という新宿の会社が売り主なので、そもそもが渉外取引ですらなかった。
 責任を負わない条項は次の通り。
「お客様には、ご自身のアカウントにおいて、またはそれを通して行なわれるすべての行為に対し一切の責任を負っていただくものとし、かつお客様は、アイチューンズに対し、お客様のアカウントの不正使用またはその他のセキュリティ違反を直ちに通知いただくことに同意されたものとします。アイチューンズは、お客様のアカウントの不正使用により生じるいかなる損失について、一切責任を負わないものとします。」
 このように同意されたものとされても、日本法の下では個別の売買契約の効力が消費者には及ばず、せいぜい表見代理の適用または類推適用が問題となりうるが、それも消費者側に過失がなければならない。なりすまされた消費者に、パスワードを推測しやすいものにしていたという事情がなければ、法的に利用料金を請求するのは難しいであろう。
 あとは、カード会社の対応が問題となる。

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