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2010/02/11

DV、ストーカー、そして殺人

asahi.com:「別れ切り出すたびダンベルで殴られた」宮城3人殺傷

宮城で起きた殺人事件は、DVの先に何が起こるかを象徴するような事件となった。

このケース、警察の発表によっても、被害者側から12回もの相談があったという。どこかで止められなかったかという思いに駆られるが、被害者が被害届を出すことに躊躇し、警察に相談はするが警察に加害者を突き出す気にはなれないという複雑な状況にあった。

DV被害者が加害者を刑事的に訴えられない、警察に保護を求めても告訴・告発という行動はできないということは、日本に限らず、よく見られることである。
その原因は、DV加害者とはいえ家族であること、子供がいる場合はその親であること、経済的生活的な依存関係があること、DVもいつも暴力的なだけでなく周期的に愛情が前面に出るなどのサイクルがあり、被害者が期待を抱くこと、等々がある。

他方、基本的にはプライベートな空間である家庭内のトラブルには、外部から被害者の意思を無視して手を突っ込んでも、問題解決につながらない場合があるということも無視できない。家庭内に限らず、暴行や軽度の傷害では被害者が立件を望まない限り警察が介入することは差し控えられる。
かなり異質な要素が入り込んでいるみたいだが、朝青龍暴行事件が立件されないのも、被害者が望まないことに由来するであろう。
それは被害者が望まない立件をしたとしても、公判維持が望めないということもあるだろうし、技術的な問題だけでなく実質的にも被害者と加害者の人間関係回復に刑事責任追及が不適当な場合もあり得るだろうからだ。

今回の経緯で、被害者を警察が救済していれば、という思いに駆られるとしても、それはやはり結果論なのかもしれない。

DVについては、DV防止法という存在もあり、被害者は保護命令を申し立てて裁判所から接近禁止命令などを出してもらうことができる。この命令に従わなければ、それ自体が犯罪となる。
被害者自身だけでなく、子供についても、また親族等についても、加害者に対する接近禁止命令を発令することができるので、まさに今回のような実家に逃げているケース、子供を実家に置いていて、加害者がその子供を連れ出そうとしているケースを念頭においている。その意味では保護命令の出番でもあった。
しかし、保護命令も、結局は被害者のイニシアティブによるのであるから、被害者が法的手段を使ってでも自分の身を守ることに積極的にならなければならない。

今回の事案で、被害者は警察に12回も相談に行ったということだが、弁護士には相談したのであろうか?
もしDV事案の取り扱いに慣れた弁護士に相談していれば、事態は変わったかもしれない。もちろん被害者のイニシアティブが必要であることは変わらないが、弁護士は被害者=依頼者の代理人してその利益を最大限はかるべき立場にある。一応は中立性を求められる警察(=行政)とは異なる。被害者の利益のため、様々な法的手段を提案し、説得し、家族も含めて安全確保のための手段を講じるように動いた可能性がある。
弁護士のみならず、DV被害者のための支援団体、あるいは配偶者暴力相談支援センター(配暴センターまたはDVセンターとよばれる)も、同様であろう。

そうした頼れる存在は警察以外にもあるし、警察からは少なくともDVセンターに連絡がいったのではないか、被害者にDVセンターへの相談を勧めるくらいのことはしたのではないかとも思われる。

このようなDV被害者支援のための装置は、21世紀になってずいぶん整ってきた。にもかかわらず、DV被害が減少しているという統計はまだない。被害者がこれらの支援・保護の仕組みにアクセスするルートを、もっと積極誘導するような形に発展させることが必要だ。

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コメント

 事前に警察に相談していた、というと桶川ストーカー殺人や栃木リンチ殺人の印象が強いので、また警察が何か隠蔽してるんじゃないか、本当は告訴の意志があったんじゃないかという疑念が頭をよぎってしまいます。なんらやましいことはしていない警察署までこんな風に疑われてしまうわけですから、ああいう事件への処分はもっと厳しくしてほしかった。
 あと弁護士というと30分5000円の相談料がいるわけですから、それくらいの決意があるなら刑事告訴してると思います。無料相談も同じ。昔新聞拡張員に嫌がらせを受けた際、警察に相談したら「そんなのが次に来たらすぐ呼んで下さい」と言われて頼もしかった。少なくとも自分にとって弁護士は、警察よりずーっと遠いところにいる存在です。

投稿: tarusaki | 2010/02/11 14:47

弁護士さんへのアクセスが一般市民にとって十分でないということは、弁護士サイドではなかなか実感を持って分からないことのようですね。
もちろん弁護士さんはタダじゃありませんので、その面での障壁はあるわけですが、法律扶助の飛躍的拡充と法テラスや公設事務所の拡充を公費を持って進めていくことが必要なのでしょう。
全国各地のDVセンターに、必ず一名ないし数名のスタッフ弁護士を常駐させてもよいように思います。弁護士であれば誰でもよいというわけでもありませんけど。

投稿: 町村 | 2010/02/11 16:02

常駐の弁護士というのは、良いかもしれませんね。
いずれにしても、
どういう専門家や社会的資源があって、そのどれをどのように使うのかを考える専門家(ソーシャルワーク)が必要ですよね。

弁護士に関して言うと、被害者がそのままのテンションで相談すると、なかなか話がうまく進まなかったこともあります。

投稿: さしみのつま | 2010/02/11 16:08

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