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2010/02/01

Bar-exam:2009年採点実感

法務省サイトで、2009年度の新司法試験採点実感が公表されていた。
例年、似たような感想が並ぶのだが、今年も特に変わったことはない。

つまり、基本的な概念の理解と問題文の事案に即した応用能力が重要だという、その一言に尽きる。

私の専門に関係するところで注目されるのは、以下の諸点。
商法「民事保全の手続による救済等のように,基本的であり,かつ,実務的にも非常に重要な制度に関する理解ができていない傾向が見られる。これは,法科大学院における商法教育の重点の置き方にも,問題が存在する可能性があるのではなかろうか。」

 #商法の授業でも民事保全手続による救済は当然必要となるとのことである。

民訴「基礎的な概念について正確に理解することが必要となる。もとより,基礎的な概念や内容そのものを不必要に長々と論じることは求められていない」

 #受験生答案の1つの型として、問われている論点に関係する定義や趣旨をまず書く、というのがあるようだが、これに溺れて、10数行にわたって弁論主義とか訴訟物とか既判力とかの定義と教科書的な説明を列挙する答案が時々出てくる。そんなことやっていたら問題に答える時間もスペースもなくなってしまうので、問題解決に必要なキーポイントに絞って簡潔明瞭に説明することが必要だ。
 採点実感によれば、「採点に当たっては,基本的な概念の理解が正確であれば一定の評価を与えるようにした」ということなので、あくまで関係するポイントを簡潔明瞭に、ではあるが、分かっているのだか分かっていないのだか分からないような答案は点がもらえない。

「既判力の問題と二重起訴の問題とを混同している」

 #これは学部でもローでも特に取り上げて注意したことがあるが、やはり新司法試験答案にも出てくるか。前訴が確定して後訴が同じようなテーマについて提起されたときに、すぐ二重起訴とやってしまうのは、条文を眺めて関係あると飛びついてしまうのであろうか?

「問題の所在を注意深く検討することなく,既知の論点についての論述から結論を導き出しているもの」

 #論点ごとに解答パターン・論証バターンを覚えるという勉強方法をやっていると、陥りがちな欠点である。事案に即して、事実関係のポイントをふまえて、規範を当てはめる必要がある。

「論理的な一貫性も考慮したが,小問ごとに望ましいと考えられる結論を追求する余り,論理的な一貫性を欠く答案も散見された。」

 #これもまた、時々ある答案だ。しかし、判例もカズイスティックな解決の集積だけに、相互に論理的な一貫性を欠いているのではないかという場合もあり、受験生としてはつらいところではある。

「裁判長又は弁護士と司法修習生との会話の中で解答するに当たり前提とすべき事項,検討する必要がない事項が明示され,その会話を踏まえて,設問に答えるよう指示されている。しかしながら,答案の中には,設問2の弁護士と修習生との会話において,第1訴訟と第2訴訟の訴訟物が同一であるとされているにもかかわらず,その訴訟物が異なることを前提に解答しているものもあった 。」

 #これこれ。2008年度の採点実感でも、「裁判官と修習生の会話の存在を無視して,どのような観点から検討するかという誘導に従っていない答案」があるというのだが、せっかく問題が論点を絞って明確にしてくれているのだから、これを無視するのは得策ではない。

法科大学院教育に求められる点は、今年の採点実感では「基本的な概念を正確に理解することの重要性が改めて認識されるべき」と指摘されている。この点は昨年度の方が詳しい。昨年度は、以下の四点が法科大学院教育に求められるものとして指摘されていた。
「基本的な概念の理解をきちんとすることの重要性」
「条文を慎重に読む習慣」
「事例を読む場合には,時系列表を作って時間の流れを意識しなければならない」
「判例は,無批判に受け入れ,要旨部分を覚えればよいものと考えている受験生がいるのではないかとも疑われ,法科大学院での判例の学び方にも問題がある」

まあ、言うは易く行うは難しというものだし、民訴だけでなく8科目もあり、それらで理解すべきとされている基本的な概念を集めれば膨大なものとなるので大変なのだが、法科大学院合格から最初の新司法試験までの3年4ヶ月〜7ヶ月を有効に使ってほしい。

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コメント

 実務家になったものの,なかなかに耳がいたい話です。

 昨年度の指摘・四点は特に気になるところで,しばしば相手の書面を見て上記四点に気付くことがあります(最高裁判例の原典にすらあたらない書面もよくあります。。。)。私の書面も,できるだけ気をつけているつもりですが,同じような誤謬があるやもしれません。
 恐ろしいことは,そのような誤謬を犯しているのは,ベテランの先生も同じであり,勉強をしないでいると錆び付くことを再確認しています。

 結論としては,試験で問われることは,実務上は最低限のことであり,どうせ実務家になっても常に勉強することですから,もっともっとしっかり勉強しておけばよかったと思うということです。
 今,実務にあってはゆっくりと基本書を紐解く暇がありません。読まないのは論外とはいえ,休みの日に少しずつ読み進めていくのは,なかなかに辛いです。

投稿: <う> | 2010/02/01 12:42

是非、実務家教員になって、その「試験で問われることは,実務上は最低限のことであり,どうせ実務家になっても常に勉強することですから,もっともっとしっかり勉強しておけ」という部分を学生たちに伝えて下さい。

投稿: 町村 | 2010/02/01 15:21

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