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2010/01/08

JAL:最後の調整に不公正なやり方は禍根を残す

毎日jp:日本航空:法的整理でも上場維持 再生支援機構が方針

法的整理を行うのは何のためかといえば、公正かつ透明な手続を保障し、責任を負うべき者がきちんと責任を負って、しかしその企業それ自体はちゃんと再建させるためなのである。

しかるに、7000憶円もの債務超過に陥っていて、事実上紙切れでしかない(今は紙すらない)株式が無価値にならなくて済むというのは、不当な利益供与に他ならないということが理解出来ないのだろうか?

東証は03年、法的整理に移行した場合でも、有効な再生計画を立案していたり、保有株が紙くずとなる100%減資をしないことを条件に、上場を維持できるよう上場の規定を見直した。法的整理と同時に再生計画を立案しているケースは異例で、適用例はないが、機構はプレパッケージ型の法的整理は上場維持の条件を満たすと見ている。

ここでいう規則とは、このことであろう。
有価証券上場規程pdf
第601条

本則市場の上場内国株券等が次の各号のいずれかに該当する場合には、その上場を廃止するものとする。
(7) 破産手続、再生手続又は更生手続
上場会社が法律の規定に基づく会社の破産手続、再生手続若しくは更生手続を必要とするに至った場合又はこれに準ずる状態になった場合。この場合において、施行規則で定める再建計画の開示を行った場合には、当該再建計画を開示した日の翌日から起算して1か月間の時価総額が10億円以上とならないとき。

施行規則pdf第601条第6項には次のように規定されている。

(3) 規程第601条第1項第7号後段に規定する施行規則で定める再建計画とは次のaからcまでに該当するものをいう。

a 次の(a)又は(b)に定める場合に従い、当該(a)又は(b)に定める事項に該当すること。

(a) 上場会社が法律の規定に基づく再生手続又は更生手続を必要とするに至った場合
当該再建計画が、再生計画又は更生計画として裁判所の認可を得られる見込みがあるものであること。

(b) 上場会社が前号cに規定する合意を行った場合
当該再建計画が、前号cに規定する債権者又は第三者の合意を得ているものであること。

b 当該再建計画に次の(a)及び(b)に掲げる事項が記載されていること。

(a) 当該上場有価証券の全部を消却するものでないこと。

(b) 前aの(a)に規定する見込みがある旨及びその理由又は同(b)に規定する合意がなされていること及びそれを証する内容

c 当該再建計画に上場廃止の原因となる事項が記載されているなど公益又は投資者保護の観点から適当でないと認められるものでないこと。

100パーセント減資をしなくとも不当でないのは、債務超過に陥いる前の段階の企業を再建させる場合であり、その場合なら株主にも更生計画に対する議決権がある。

会社更生法第196条第5項

更生計画案を可決するには、第一項に規定する種類の権利ごとに、当該権利についての次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める者の同意がなければならない。
 三  株式 議決権を行使することができる株主の議決権の総数の過半数に当たる議決権を有する者

この同意を得られなかった場合には、権利保護条項をつけることで更生計画が認可できるが、株主についての権利保護条項というのは以下のように規定されている。

会社更生法第200条1項2号

株主については清算の場合に残余財産の分配により得ることが見込まれる利益の額を支払うこと。

つまり、会社更生法はあくまで多数決による同意を要件とするのだが、残余財産がない=債務超過の会社については、株主になんらの権利もなく、従って100%減資の更生計画を立てても当然で、株主がそれに反対しても聞いてはもらえないのである。

それが嫌だと考える株主は、債務超過に陥る前に更生手続開始の申立てを働きかけるなど、再建努力をすべきであったのであって、そのような再建努力をせずに今日の事態を招いたことが、まさしく株主責任というものである。

日ごろ自己責任と自由の価値をことあるごとに叫ぶ連中が、なぜこの件については何も言わないか、不思議でならない。その理由を突き詰めれば、「自分が株主だから」ということなのではなかろうか?

なお、プリパッケージ型であろうがなかろうが、裁判所が更生計画案を「更生計画の内容が公正かつ衡平であること」に該当しないと認めた場合は認可されない。そうなれば破産だ。そのリスクは、たとえ更生裁判所が不公正と判断しなかったとしても、株主ではない債権者が債権削減に不満を持つ場合に、更生計画認可に即時抗告するということでも顕在化する。

そのような泥沼の事態を避けるためにも、潔く、銀行は今ある担保権だけで我慢すべきだし、再生支援機構も不公正なまでの優遇策を講じるべきではない。

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コメント

一応、株式が残余権であるという理解は解体・清算時だけなので
再生手続きにおいては
必ずしも債務超過会社の株式がゼロでないということを
研究会で報告したのですが、
おそらく少数説(下手したら単独説)なので置いておきまして

ここまで報道されているにもかかわらず
法定倒産手続や上場廃止を回避することで
維持できる顧客吸引力=ブランド効果って本当にあるんでしょうかね?
まさか株主優待によるお得意様がいなくなってしまうことなんでしょうか?

投稿: 故元助手A.T. | 2010/01/08 11:53

まあ、世の中理屈通りではないし、人の気分というのはとかく思いこみで動くもんですからねぇ。
Twitterでは、福岡出張にJALを使うという弁護士さんから「落ち目の航空会社の飛行機が本当に落ちないことを望む」とかつぶやかれているし。

投稿: 町村 | 2010/01/08 12:08

あまりややこしく考えるまでもなく、「日航再生の目的は何なのだ?」が分からないですよ。

国策会社もどきとして、赤字路線を飛んでいたことも確かで、日航再生の目的が「従来路線を変更せず」であるのならば今後も赤字体質だということになって、再生ではなくて(赤字のまま)存続となってしまいます。

それこそ「仕分け」を最初にやるべきでしょう。

投稿: 酔うぞ | 2010/01/08 13:55

負債を株式化した上で99%減資ならそれほど問題はないのでは?まぁ、無理してまで上場を維持する意味はないと思いますが。

投稿: Ikegami | 2010/01/09 15:44

>法定倒産手続や上場廃止を回避すること

 素人には,旧経営陣(現在の経営陣)への責任追及を回避する便法と,裁判官や管財人弁護士の介入を嫌う経営者感覚(債権者感覚)なんじゃないかと見えますが。

投稿: キメイラ | 2010/01/09 16:49

>それが嫌だと考える株主は、債務超過に陥る前に更生手続開始の申立てを働きかけるなど

まず、債務超過に陥っていない場合は、一般的に株主は、更正手続きを働きかける理由が存在しないと思うのが普通だと思いますが?

それに、債務超過に陥った場合でも、一般的には、債務超過に陥った=返済不能では「ない」企業が殆どですから、債務の状況を刻一刻と知ることの出来る経営陣と違って、基本的には年一回総会で確認する程度で具体的にどの程度の債権がいつ発生するか分からない株主が債務超過前に再建努力を働きかけろ、というのは中小閉鎖会社ならともかく、JALのような公開大会社では無理ではありませんか?

普通、返済不能となる前に、スポンサーを探して、うまく行けば、破綻せずに再建できるわけですから、債務超過前に、株主が積極的に破綻を前提とした行動に出るというのは、株主が経営者やっているような場合を除いては、殆ど考えられないと思うのですが。

それとも、先生は、債務超過前でも株主が、破綻を前提に積極的に倒産を働きかけることが出来るという何がしかの基準なり状況なりが存在するとお考えなのでしょうか?

投稿: こう | 2010/01/10 02:45

ここでいう株主というのは、会社更生法上の関係人集会で更生計画を否決できる株主で、法はそういう株主なら債務超過前になんとかするべし、それをしないまま債務超過=会社の清算価値マイナスに至ったのだから100%減資も文句言うな、てことです。

JALのような大会社にも大株主はいますから、全く非現実的ということでもありません。

で、シェアがごくわずかな株主の立場が倒産という現象の中で無視されてしまうのは、これはこれで当然というものでしょう。もともとあるリスクが顕在化しただけなんですから。

投稿: 町村 | 2010/01/10 07:39

すごい悪あがきをしているんですね。
大株主でもある、みずほなどメガバンク救済が目的だと思われます。株主とは一般株主ではなく三大銀行でしょう。日航にまつわるほかのことはすべて隠れ蓑、いいわけでしょう。
町村先生の言われるように、自己責任を貫いてもらうしかないはず。

投稿: 徳岡宏一朗 | 2010/01/12 20:56

一見、大衆の保護に見えて、その実は大口の債権者が最も利益を得るという現象は、多々ありますね。それが公費投入の真の目的なのかもしれませんが。

JALへの公的資金投入は、当面の資金繰りに必要な限度に押さえ、大口債権者等の隠れた救済にならないようにしてもらいたいものです。

投稿: 町村 | 2010/01/13 10:46

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