inlaw:ネットと消費者保護の課題(3)
情報ネットワーク法学会シンポの問題提起を紹介するシリーズの続きである。
ネット上の問題商法としては、イリュージョン商法とでもいうべき類型がある。
これは電子商取引に特有なものではないが、ネットを介することで、より一層現実感を失わせる環境を作りだし、欲望をふくらませて刺激する商法である。
代表的な例として、不当請求につながるワンクリック詐欺まがいと、出会い系サイトとが挙げられる。
ネットを使った不当請求・架空請求は、もともと詐欺まがいというよりは詐欺そのものといっても過言ではない。無害そうな勧誘に載ってアクセスしただけで一方的に契約締結を宣言し、金銭を要求するというパターンは、全く法的な根拠がないのにあるかのように装って金銭を騙し取ろうというものであって、詐欺そのものだ。
やや微妙なのは、エロサイトなどで巧みにクリックさせて申込みがあったと主張するケースであり、例えばサンプル画像というのでクリックしてみたら契約成立を宣言されてしまったという例がよくある。サンプルとはいえ、見ようとしたことは事実なので、利用者に多少の後ろめたさがあるのをフル活用して金銭を取ろうというわけだが、これは全くの詐欺というより恐喝的な性格が加わっている。恐喝犯というのは、全く何の落ち度もない人を対象にするよりは、何らかの因縁を付けるネタにつけこむのである。
追記:CNET Japanの記事によれば、最近多いのがYou Tubeから誘導されるワンクリック詐欺だそうである。
ワンクリック不正請求をする新規サイトが増えていることと、そういったサイトへ利用者を誘導する手口が巧妙になっていることが挙げられるという。実際の例として、YouTubeで動画を見ていて、投稿者のコメント欄にあるURLリンクをクリックしたらアダルトサイトに行き着き、動画を見ていくうちにいつのまにか利用登録されて5万円の料金を請求されたケースなどがあったという。YouTube から誘導されたトラブルは20件弱あったとのことだ。
IPAの元記事も興味深い。
これらをイリュージョンというのは、もちろんエロなどの興味好奇心につけ込むことに基づいている。いかにもお宝らしきものが手にはいると見せかけて誘い込むわけである。
もう一つの出会い系サイトは、利用者が出会いを求めてポイントを購入し、気がつくと多額のポイント購入に至っていたという事態が最近目立っている。
出会い系規制法では未成年保護に終始しており、それはそれで有用なことだが、被害者は未成年に限ったものではない。むしろクレジットカードを保有する大人こそ、サクラしかいない出会い系に騙されて多額のクレジット請求を受けるという被害に遭いやすい。
この問題は、ネット環境のみならず現実社会の恋愛がらみ商法に共通しているが、現実社会よりも騙されやすい環境がネットである。例えば現実社会で水商売の女性に惚れ込んで通い詰めてしまうのと出会い系につぎ込むのとは似ているわけだが、少なくとも水商売の店では本物の女性が相手をしてくれるのに対し、出会い系サイトのサクラはその限りですらないのだ。
さて、ネット環境の特徴といえば低コスト、大量性、コンピュータウィルスなどの存在である。
これに関連する消費者被害の代表格は未承諾広告メール(いわゆるSpamメール)だが、これに対する規制はオプトイン規制導入により一定程度進んだ。しかし現在蔓延するSpamメールは、いわゆるゾンビPCないしボットネットを利用した大量送信であり、表示義務やオプトインなどの規制をそもそも守る気がないものである。
こうした大量送信技術には、法的な対応も困難で行き詰まっている。
この関連で、個人情報の収集に対する利用者の保護の課題もまた重要な者となっている。特にいわゆるライフログや閲覧履歴の利用を認めるかどうか、その利用を情報主体の許諾にかからせるかどうか、その漏えいや無断利用に対する保護は十分かどうかなどが問われる。
同様に最近のネットワーク技術の使い方に起因する問題として、データストレージやデータホスティングサービスにおける安全性も重要な問題となってきている。例えばクラウド・コンピューティングのサービスでは、利用者が自らデータをバックアップすることは考えられなくなるが、データ消失の責任は利用者が負うとされていてよいかどうかが問われる。
この問題は消費者にとっても重要だが、事業者にとってはもっと重要であろう。消費者問題を離れて、クラウドサービスにおけるセキュリティ標準の確立が必要だとされる所以である。
(以下、(4)に続く)
シンポジウム参加希望の方は、本日早いうちに情報ネットワーク法学会のウェブページから参加登録をしてほしい。それ以後は会場(大阪大学)へ直接来場となる。
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