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2009/12/01

inlaw:ネットと消費者保護の課題(1)

今週末(12/5)に大阪大学で開かれる情報ネットワーク法学会研究大会では、「情報ネットワークと消費者保護」と題するシンポジウムを行う。

どういう問題を取り扱おうとしているか、このブログで紹介しておこう。ただし、以下は私個人の問題意識にかなり偏っていて、他のシンポパネリストの問題意識を加えると、もう少し広がりがある。

なお、参加希望の方は、情報ネットワーク法学会のウェブページから参加登録をしてほしい。

最初に取り上げるのは、いわゆるC2C取引の存在、消費者相互間の取引がネット上で増えてきている点である。

 かなり以前にWeb2.0時代という言葉が流行した。この言葉自体あっという間に死語と化したようだが、そこで語られていた内容が廃れたわけではない。
 売りたい人と買いたい人とがインターネットと検索技術で簡単につながるようになり、中小企業の販路が理論上は無限大に広がったのと同時に、消費者相互間の取引も行われるようになった。
 オンラインオークションはその典型的なケースであり、C2C取引の代表的な地位を占めている。また資本も技術も持たない消費者が売り主側にたつ方法として、いわゆるドロップシッピングがある。さらには、広告に介在するものとして、いわゆるアフィリエイトがある。
 このうちオンラインオークションは、当初、多くの詐欺または詐欺まがいの取引が横行し、オークションサイトが責任回避的な姿勢にこだわったため、利用者のトラブルは拡大した。そしてオークションサイト運営者であるYahoo!に対して詐欺被害者が集団で損害賠償を求めたが、裁判所はYahoo!が取引の安全な環境と注意喚起をすべき義務を認めつつ、当該事案では義務違反とは言えないとして請求を棄却したところである。
 またドロップシッピングについては、一般消費者である利用者が売り主としての立場につくこと自体の不安定さも問題のあるところだが、それ以前にドロップシッピングが簡単に儲かるとの宣伝勧誘により高額の利用契約を締結させるという、古典的な消費者被害が生じている。
 これらの取引では、購入者側が事業者から買う場合以上に不安定な地位におかれるとともに、販売者側に立つ消費者にとっても様々な問題が生じる。そもそも現在の消費者の概念は、物やサービスを買うことを中核としており、売る側に立つ人を想定していない。従って消費者保護立法も、販売者側の人をカバーするものではない。

 消費者保護の対象を画する形式的なメルクマールは、個人であることと事業性のないことだが、実質的な理由は素人で情報も経験もないこと、生活のために取引していること、選択の余地が事実上奪われているか、またはいくつかしかないこと、リスク分散の機会がなく、リスクテイクの比較考量をする余地もほとんどないことなどである。これらの要素は、個人がオンラインオークションやドロップシッピングによって販売者側にたった場合でも、かわらず付きまとう。特にドロップシッピングの販売者は、在庫管理もリスク管理も要せずしてお店が持てるという、いわば素人でも大丈夫といって誘い込まれるわけであるから、形式的には販売者側に立つからといって「消費者性」が失われるわけではないのである。
 逆にオンラインオークションの売り主となる消費者は、事業者と事実上区別できない。実務上のメルクマールが経産省から示されているが、購入者側から見れば、そのメルクマールはほとんど意味を持たない。購入者側からすれば、販売者が消費者であれ事業者であれ、最低限必要な情報が正しく開示されていなければならず、商品の水準も最低限必要なレベルが。他方、消費者が販売者になるということは、事業をすること、あるいはプロになるということを意味するわけではない。販売者となった消費者は、購入者との関係ではプロの販売者と同様の情報や水準を求められるとしても、オンラインオークション運営者やドロップシッピング運営者との関係では依然として消費者性を失わない。
 このように見てくると、単純に、消費者性があるとかないとかの二分法を入り口で判定し、消費者保護法の対象とすべきかどうかを一律に決めてしまうというやり方自体に問題がある。
 消費者保護法の中でも、消費者かどうかに関わらず適用されるべきものがある。例えば情報提供義務や不実告知に基づく取消権などはその例である。他方、消費者保護のために設けられる特別の制度もある。例えば無条件解約権留保であるクーリングオフは、契約の締結と拘束力の発生について一定の例外を認めるだけに、その根拠は消費者保護ということになるのであれば、その行使主体が消費者であることを適用根拠としている。その際、形式的な消費者性メルクマールによるのではなく、上記の消費者保護を必要とする実質的な理由を勘案して、当該事案にクーリングオフが認められるべきかどうかを判断する、そのようなアドホックな判断が求められる。

 以上要するに、C2C取引では購入者として現れる消費者に焦点を当てて、販売者となる消費者との関係でいかに安心安全な取引環境を実現するかという課題がある一方、購入者あるいは販売者になる消費者とC2C取引を仲介する事業者との関係において、購入者あるいは販売者になる消費者にとって安心安全な環境を実現していくという課題もある。その場合にさらに仲介者となる存在にはアクセスやコンテンツのプロバイダに加えてサプライヤーや企画会社、決済会社など、様々な法主体が複雑に絡み合って登場するので、きちんとした実態をふまえた理論的構造解明が必要である。そしてこの解明は、日進月歩のネット取引において、極めて困難な課題となっている。
(以下、(2)に続く)

シンポジウム参加希望の方は、情報ネットワーク法学会のウェブページから参加登録をしてほしい。

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