Gallicaのフランス民法典
フランス国立図書館のデジタル化事業Gallicaでは、ナポレオン法典編纂時のフランス民法典資料を集めている。以下、Gallicaのブログ記事参照。
民法典初版があるのは当然として、Fenetの準備資料などもデジタルで見ることが出来る。
かつて、修士課程に入り、北大図書館の書庫で、誰も触ったことのない、つまりまだ仮綴状態にある立法準備資料を借り出して、ペーパーナイフで頁を開きながら読んだのを思い出す。現代の院生にとって、そんな苦労はかなり減少することだろう。
いわゆる公式の立法準備資料だけではない。
今の日本でも民法典改正となれば様々な意見がでてくるように、政府の外で民法典改正を唱えた法律家もあり、その例としてGabriel Jean de Dieu d'Olivier, Nouveau code civil proposé à la nation française et soumis à l'Assemblée nationale, 1789が提供されている。
さらには、Locréの作品のような、多数の注釈書も提供されているという。
まだある。フランス民法典に影響を受けた他国の民法典として、ポルトガル、スイス、ドイツ、サルデーニャ王国が掲載されている。
それなら日本民法典はないのかと思い、検索してみると、リヨン大学における梅謙次郎のテーズが最初に出てきた。
さて、民法典があるなら民訴法典もあるに違いないと思って検索してみると、少なくとも表題にCode de la procédure civileという語が含まれているものは、1820年以前のものでは2冊しかなかった。以下のうち、不動産執行に関するものとLocréのものである。
Révision du Code de procédure civile (10 juillet 1883.)
Code de procédure civile, avec une table alphabétique et raisonnée, des commentaires en notes, des sommaires... auquel on a joint la procédure au Conseil d'Etat. (Signé : A. Rageot,...)1918
これらは、19世紀後半と20世紀初めに民訴の見直しを行ったものである。
Procédure en saisie immobilière, folle-enchère et surenchère, d'après le Code de procédure civile... par J.-F.-D. Dézévaux...
これはブザンソンの元弁護士さんが書いたフランス不動産執行手続で、ナポレオン法典制定後、比較的早期に書かれたものである。
Code de procédure civile pour l'empire d'Allemagne : (30 janvier 1877) / traduit et annoté par E. Glasson, E. Lederlin, F.-R. Dareste,
これは1877年のドイツ民訴法をフランス語に訳して注釈をつけたものである。
Locré, Esprit du Code de procédure civile, ou Conférence du Code de procédure avec les discussions du Conseil, les observations du Tribunat, les exposés de motifs, les discours des orateurs du Tribunat.1816
上記フランス民法典についても同じ著者が類書を出していたが、その民訴版で、立法準備段階での議論から注釈をつけたものである。
ということで、民訴については民法よりも明らかに研究の蓄積が少なく、文献も乏しいのだが、いずれにしても研究者にとっては宝の山である。
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