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2009/12/09

arret:尊厳死/安楽死を意図して殺人罪

最決平成21年12月9日PDF決定全文

医師が、患者家族の話し合った結果として気道確保のため挿管されていたチューブを抜くよう依頼され、その通りにしたところ、予期に反して患者が苦しんだので筋弛緩剤を与えて死に至らしめたという事案で、殺人罪により有罪判決が下された。ただし、懲役1年6月、執行猶予3年である。

最高裁が有罪とした理由で重視しているポイントは以下の通り。
・余命等調査に必要な脳波の検査はしていない
・発症から未だ2週間程度
・従って回復可能性や余命について的確な判断を下せる状況にはなかった
・チューブの抜管を要請した家族の判断も、被害者の病状等について適切な情報が伝えられた上でされたものではない
・患者の推定的意思も不明で、その意思に基づいているともいえない

以上の理由から、このチューブを抜く行為が法律上許容される正当な行為とはいえないとした。

この事案、過剰な延命措置をしないという尊厳死と死期を早めて苦痛を避ける安楽死との境界線、というか両者が混在してしまったケースといえる。いずれにしても、リビングウィルもはっきりしないという時点で、尊厳死協会的には認められないケースだろう。
しかし、この事件経過で被告人となった医師だけが刑事責任を問われるのは、不公平なのではないか。この医師は独断でこっそりやったのではなく、また同僚医師の助言を求めるなどして、最後の筋弛緩剤投与に至っている。そしてなによりも、家族の意向に応じ、また家族が最期を看取る態勢になったことを確認してチューブの抜管をしている。
家族の刑事責任や同僚の刑事責任を問うべきだと言うつもりはないのだが、この医師だけが殺人罪に問われるのは不公平感を拭えない。

医師としては、最高裁が言うように、回復可能性をもっと慎重に検査して見極め、その情報を家族に伝えた上で判断を求めることが必要だったと思うが、それを怠った罪に「殺人罪」という罪名を着せることへの感情的な抵抗というところかもしれない。

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コメント

 予期に反して患者が苦痛の反応を示したなら,錯誤論を論じて業務上過失致死にも言及する?
 そもそも酸素吸入の停止は不作為的だが,抜管は外形的作為行為なんで,作為か不作為かを論じて……。
 遺族の同意と被害者本人の推定的同意又は遺族の代諾的同意の可否。
 最終手段として筋弛緩剤の投与は,尊厳死目的で想定外の安楽死を行った錯誤を論じて……。
 脳波検査もやらず倫理委員会にも諮らず同僚医師の助言だけで違法性が阻却されるか?
 こんな論点テンコ盛りの問題を刑法総論学年末試験に出されたら、お手上げではないでしょうか。ウン十年前にカンサスシティー企画とカレン事件の準備しかしなくても単位がもらえた時代に卒業できて……。

投稿: キメイラ | 2009/12/10 01:11

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