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2009/11/16

jugement:定額報酬分担金条項差止請求認容

適格消費者団体による差止請求訴訟について、判決文が裁判所から公開された。

京都地判平成21年9月30日(PDF判決全文・HTML変換)

本体の差し止め請求については、認容された。差し止められたのは以下のような条項である。

定額補修分担金条項 1 消費者は,目的建物退去後の賃貸借開始時の新装状態への回復費用の一部負担金として,定額補修分担金を被告に対し支払う。 2 当該消費者は,被告に対し,定額補修分担金の返還を,入居期間の長短にかかわらず,請求できない。 3 被告は,当該消費者に対し,定額補修分担金以外に目的建物の修理・回復費用の負担を求めることはできない。ただし,当該消費者の故意又は重過失による同建物の損傷及び改造については除く

この条項に基づき、実際に分担金として支払われていたのは月額賃料の2〜4か月分程度であるから、かなりの額になるだろう。
補修費用によっては、分担金を超える額の支払いが必要となるところを分担金の限度で足りることになるので、消費者に一方的に不利とはいえないというのが賃貸人側の主張だが、実際にそのようなことがあったことはうかがわれないのであって単なる可能性にとどまる。あらゆる場合に、補修費用を超える額の分担金を借り主の側が支払わされるというわけである。

さて、この判決では不当行為の「停止若しくは予防に必要な措置」として原告が求めた「被告は,その従業員らに対し,被告が1項記載の意思表示を行うための事務を行わないこと・・・を指示せよ。」という部分について、不適法却下している。
理由は、抽象的差し止めであって給付義務の内容が一義的に明らかでないからという。

「被告の従業員らに対し,被告が請求の趣旨1項記載の意思表示を行うための事務を行わないことを指示することの請求は,被告のすべき指示が,事業者の労働者に対して有する労働義務遂行に際しての指揮命令権に基づく業務上の指示を意味することは分かるものの,書面によることの要否,その方法,程度等,事業者の義務の内容が一義的に明らかではなく,請求の特定を欠くといわざるを得ず,不適法である。」

しかしながら、作為を求める請求権においても、その作為請求権の目的を達成する方法がいくつかあれば、そのいずれでもよいから実行せよということはあり得るはずである。
例えば、所有権に基づく妨害排除請求権で、所有物の上に妨害物がある場合にその除去を求める権利があったとしても、具体的な除去方法がどのような機械によるべきか、どのメーカーの機械を利用すべきか、除去の方法としてクレーンでつり上げて搬出すべきか、ブルドーザーで押し出すべきか、その義務の内容が一義的に明らかでなくとも、特段問題はない。要は、妨害物が除去されればよいのである。もちろんその際に義務者が他人の財産を毀損するなどの損害を与えることは許されないが、それは別の話である。
これと対比してみれば、業務上の指示が書面によるべきかどうか、方法や程度を事細かく指定して一義的に明らかにしなければならないというのは不当な要求である。むしろ、例えば書面によるべきかどうかを原告の側で指定できる根拠は何かということも問題となる。法は「書面指示」を権利として要求できると規定しているわけではないし、書面でなければ「予防に必要な措置」といえないかというと、それも疑問だからである。

このように、抽象的差し止めだから請求が特定されておらず不適法だというのは、かなりイチャモンに近い要求なのだが、なぜか実務家は恣意的にこの差し止めの具体的中身を特定せよと言い出すことが多い。

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