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2009/10/07

SNSとソーシャル・アプリの陥穽

SNSと総称される会員制コミュニティサイトは、最近様々なツールが導入され、新たな発展を遂げているようである。
その中で、特に最近注目され、アクセス促進に結びついているものにソーシャル・アプリがある。

しかし、ソーシャル・アプリにはかなり大きなリスクがありそうだ。

ソーシャル・アプリとは、要するにミクシィなどのSNSの上で動くソフトウェアであり、SNSの運営者以外の者でも作成することができ、SNSの会員情報を利用した機能を組み込むことができる。

 例えば、今、大人気を博して急速に参加者を増やしているソフトに市民農園のバーチャル版がある。これは野菜や動物を育てて、収穫量によってポイントを上げる育成ゲームだが、これをSNSに組み込むと、SNSの他の会員と相互に相手の農場に水やりや虫取りなどの手を入れたり、逆に害虫を持ち込んでトラブルを起こしたり、収穫物をもらったりすることができるようになる。
  SNSの会員情報を活用することで、同じグループに属している会員をソフト利用に勧誘したり、会員同士のポイント獲得状況を競い合ったり、さらにはコミュニティ機能を組み込んで情報交換をしたりすることができる。
 また別のソーシャル・アプリでは、SNSの会員が参加すると、その会員の属しているグループや直接の知り合いの情報を利用し、知り合いの知り合いリストを作成したり、知り合いの興味関心の方向を調査したり、会員が知り合い向けに公開した写真等のデータを集計したりすることも可能になる。
 もともとSNSはコミュニティ機能を中心とする媒体なので、ソーシャル・アプリの利用者同士が意見交換するコミュニティもでき、ソフトのバグや運営の当否について議論が起きたり、利用者同士のマナーをめぐる意見交換があったりする。またもともとは知り合いでなかった会員同士が、ゲームに参加してお互い助け合うために、知り合いのグループに入ったりもする。

 これによってSNSとしては、会員相互のコミュニティが活性化され、またアクセス数やアクセス時間も大きく伸びるので、アクセス時間を元に計算される広告収入も大きく伸びることであろう。

 こうして利用者も楽しみが増えるし、SNS運営側もメリットが大きく、良いことづくめのようだ。

 しかしながら、ソーシャル・アプリの提供者は、SNS運営者の審査によって認められた上でSNSの利用者情報を利用するのだが、アプリ提供時の状況がその後も変わらないという保証はない。公開されたアプリにバグがあれば修復していくし、思わぬ不都合があれば大幅に手直しすることもあるだろう。提供者の会社が買収されることもあるだろうし、あるいは提供者自身のポリシーが変わることもありうる。
 仮に、ソーシャル・アプリの提供者に悪しき意図があったら、あるいは悪しき者に支配権が移ったら、提供された情報が悪用されないとも限らないのである。

 もともと、SNSに対しては会員も気を許してプライバシーその他の秘密情報を開示することがよくある。SNSの他の会員に対して無防備に秘密情報をさらけだすことは少なくても、SNS運営者に開示するプライバシーは結構なものである。会員同士のつながりを示す情報もまた、使いようによっては極めて貴重な、あるいは危ない情報となりかねない。

 以前、このブログでも取り上げたように、SNSの運営会社が暴力団関係者になっていたという事件があり、そのSNSに蓄積された個人情報や人間関係の情報が悪用される可能性が現実的なおそれに思えたことがあった。
 ソーシャル・アプリの提供者に同じことが起こらないとは限らない。

 ソーシャル・アプリがSNSのコントロールの及ばないところで運用されることからくる懸念はもう一つ、コミュニティサイトが危険な出会い系サイトに変わってしまうおそれや、SNS運営サイドとしては許容範囲外のアダルト情報などがソーシャル・アプリ上で密かに提供されるおそれ、それもソーシャル・アプリの提供者ではなく利用者のイニシアティブで提供されるおそれがあることだ。

 理論的には、インターネット上で収集可能なあらゆる情報を利用したアプリも可能なのだから、そうしたおそれを完全予防することはできないし、するべきとも思わない。しかしそのような有害情報が入ってくる可能性は、SNSの評価やフィルタリングの運用にも関係して来るであろう。

 最後に、消費者としてはほとんどのソーシャル・アプリが無料で楽しめる現状に油断してはまってしまうと、いつか突然有料化という事態に直面するかもしれない。そうなった場合に、簡単には離れられないような利用の仕方をしていると困ったことになるだろうなと思う。

 ともかくも、それだけ魅力と可能性がソーシャル・アプリにはあるということである。

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