Copyright:証拠保全
BSAのプレスリリースによれば、「東京地裁、東京都所在の旅行会社を著作権侵害の疑いで証拠保全」とのことである。
ここでいう証拠保全とは、民訴法234条の次の条文を根拠として行われる。
「裁判所は、あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情があると認めるときは、申立てにより、この章の規定に従い、証拠調べをすることができる。」
この条文、普通は死にかけた証人に証人尋問をするとか、消えかけた文字についての証拠調べをするなどが典型例とされているが、医療事故訴訟におけるカルテ等の医療記録について実施されることで名高い。
あの、白い巨塔においても、財前教授の医療過誤に対して原告側弁護士が証拠保全を実施し、しかし財前教授側は不利な記載を一斉に書き換えてしまうと言う攻防が描かれている。
改ざんのおそれがあるという理由で証拠を保全するわけだが、うまくやらないと改ざんの機会を与えることにもなりかねないというわけである。
今回の証拠保全は、アドビ、マイクロソフト、ファイルメーカーの申立てにより実施されたもので、情報提供と回答がなかったことを根拠として行われたらしいが、具体的に何をどうするのかということは明らかにされていない。しかしソフトウェアの違法コピーの証拠を保全するというのであるから、不正なコピーの存在やその使用を保全するのであろう。すると検証の対象は、コンピュータということになりそうである。
コンピュータの記憶装置を対象として証拠保全する場合、データであればプリントアウトするなりモニターに表示させてビデオに撮るなどの方法が考えられる。ビデオを使った証拠保全の試みについては、かなり昔に裁判官が判例タイムズ誌に試行報告を掲載していた。
これに対してコンピュータソフトウェアの場合はどうか? プロパティを表示させたり、正規のライセンス表示画面が出ない、あるいは違法にコピーしたため多数のパソコンで同一のシリアル番号が表示されるとか、要するにモニターを視認して確認することはできる場合があろう。
そうでなければ、よりきちんと実施するには、フォレンジックツールを用いて、社内パソコンのディスクを正確にコピーし、その状況を保全するという方法が考えられる。このようなやり方は、アメリカにおけるeディスカバリに近づいた運用である。
正確なところが分からないので想像するしかないが、日本の法廷も進歩していると思われる。
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コメント
実際のところ、「プロパティを表示させたり、正規のライセンス表示画面が出ない、あるいは違法にコピーしたため多数のパソコンで同一のシリアル番号が表示されるとか、要するにモニターを視認して確認する」というのが基本でしょうなぁ。
「フォレンジックツールを用いて、社内パソコンのディスクを正確にコピーし、その状況を保全するという方法」は、保全の目的と関係のないデータまで根こそぎ取って来て申立人に開示することになりますから(証拠保全の証拠調べ調書は申立人が謄写できますので)、なかなか踏み切りづらいかと。
投稿: えだ | 2009/10/28 22:58
Copyleftの証拠保全はどうでしょう?(。_・☆\ ベキバキ
投稿: キメイラ | 2009/10/30 01:22